広がる“海洋散骨” 透けて見えてきた背景とは…[2018/10/29 17:27]
遺骨を海でまくという「海洋散骨」が徐々に広がっている。なぜ、この方法を選んだのかご家族にお聞きしたところ、今の日本の社会情勢が透けて見えてきた。
続々と船に乗り込む人たち。目的はクルージングではない。故人を弔うため、遺骨を粉末状にして海にまくために集まったのだ。今、こうしたお墓を持たずに海洋散骨で供養する人が急増している。この日の散骨式を執り行った会社も設立から12年目、利用者が70倍近くになったという。お墓を維持できないという依頼者が多いという。こちらは母の散骨のため船に乗った青柳亜紀乃さん(46)と父・良郎さん(73)。母・加寿子さんは今年3月、がんのため71歳で亡くなった。一人娘の亜紀乃さんへの負担が一番少なそうだという理由で最終的に父親が選んだという。そして、いよいよその時がきた。母・加寿子さんのお骨を東京湾にまく。ある思いが亜紀乃さんの胸にこみ上げてきた。
青柳亜紀乃さん:「母は海外旅行に行ったことがない。ふと海に(遺骨を)まいている時に、これで自由にあちこち行けるんじゃないかと思ったら本当に海で良かった」
散骨は原則として自由に行えるが、法務省では「節度を持って行われる限り遺骨遺棄罪に違反しない」としている。この「節度」という部分が分かりづらいところで法整備が進んでいないため、日本海洋散骨協会では独自のルールを設けている。まず、海にまくお骨の大きさを定めていて「遺骨とは分からないパウダー状にすること」。また、散骨する場所について、人が立ち入れる陸地から1海里(1852メートル)以上離れた海の上でのみ行うこと。さらに、河川や滝、ダム、湖、防波堤などといった水源や人目に付く所ではお骨をまいてはならないとしている。ちなみに、散骨の場所は各自治体によって取り決めがある所もある。例えば海が観光資源となっている静岡県熱海市では「レジャー客が多い夏の時期には控える」などと定めている。また、散骨に関して「熱海」や「伊東」などといった文言を連想させる宣伝を禁止する自治体もある。続いて、散骨する際のマナーについて日本海洋散骨協会によると、喪服よりも普段着の方が望ましいということだ。これは、海で遊んでいる人たちを驚かせないようにするためだ。さらに、お骨や遺影などは袋に入れて持ち運ぶなど周りの人たちへの配慮も重要なことだといえる。