どうでもいいつまらない話なんですが、時間とお金をつかったので記録だけしておきます。
(マス)メディアとジェンダーというテーマは、ジェンダー論やらフェミニズムやらの中心的なテーマの一つなわけですが、「実証的な調査はどういうものがあるのか」ってんで、私自身「そういや標準的にはどういうふうに信じられたり教えられたりしてるんだろうな」みたいな疑問をもってしまいました。
まあふつうはメディアに出てくる女性像やら男性像やらが、現実の女性やら男性やらの服装やらふるまいやらに影響を与えているので、メディアは注意深く見ないとなりません、みたいになっていて、実際私も今年度の前期のゼミでメディアリテラシーのまねごとしながら考えてたんですわ。
ところが、標準的なジェンダー論とかのテキストなんかだと、その問題は指摘されてるけど、さほど実証的な裏付けには言及されないんですよね。
いろいろ見たんだけど、いちばんはっきりわかりやすかったのは、加藤秀一先生たちの『図解雑学ジェンダー』。これは優秀入門書、というか入門の入門。まあ「図解」を1ページまるごと引用させてもらえば、こんな感じ。まあ典型的な「ジェンダー論」って感じですよね。
ここの左のページには加藤先生自身が簡単な文章を書いているんですが、参照文献が諸橋泰樹先生の『ジェンダーの語られ方、メディアのつくられ方』だったのです。
実は10年ぐらい前にこの先生の本を読んでちょっといやなのを発見したりしているので、図書館で調べてみました。(昔私がリクエストして入れてもらった本だと思う。)
と、この『語られ方』の本は2002年出版ということもあって、相当古い情報にもとづいたものでした。
「能力、性別、らしさ、様ざまな特性はは生まれもったものではない、社会的・文化的に構築される」p.19
「男は人の話を聞かなくてよい」p.19
「女性/男性」という性別二分法自体が、もう人間の観念的な枠組み」p.20
「オオカミに育てられた子どもはずっとオオカミのまま……第二次性徴をはじめとするセクシュアリティも開花しない」「ことばがないとセクシュアリティが顕現せず」p.20
「虹の色はリベリアのバサ語では二色」、「ニューギニア高地人のチャンブリ族という部族」では「男性の性格は嫉妬深く、猜疑心が強く、噂話が大好きでショッピングが大好き、……お祭が大好きで、そのときはオスコンテストをする」p.23、
生物学的な性別といわゆる性別役割分業の間に、直接の関係はありませんp.24
とか、まあここでは議論できませんが、古すぎますね。肝心のメディアが我々のジェンダーにどういう影響を与えるか、という実証的な議論は特に見つかりませんでした(どっかにあるかもしれないけど)。
もう1冊、『メディアリテラシーとジェンダー』という本もあったのでそっちも見たのですよ。こっちも実証的な議論は特になかったのですが、
次の概念が、メディアリテラシーの内容を説明します。すなわち、(1)メディアは全て構成されたものである、(2) メディアは「現実」を構成する、(3)オーディエンスがメディアを解釈し、意味をつくり出す、(4) メディアは商売と密接な関係にある、(5)メディアはイデオロギーや価値観を伝えている、(6) メディアは社会的・政治的な意味をもつ、(7)メディアは独自の様式、芸術性、約束ごとをもつ、(8)クリティカルにメディアを読むことは、創造性を高め、多様な形態でコミュニケーションを作り出すことにつながる。(pp. 21-22)
「メディアは「現実」を構成する」とか、いかにも社会構成主義とかそういう難しい立場のけっこう極端な立場のような気がするので、なにかしっかりした根拠があるのかと思ったのです。んで、参考文献としてあげられているカダナ・オンタリオ州教育省編『メディア・リテラシー』っていう本を入手してみたのです。
この本はメディアリテラシーの教育実践の本としては非常に優れてるのですが、上のような主張はリテラシー教育の上での作業上の仮説のようなもので、それの正当化とかなにもしてませんわ。まあ予想はしてたんですが。
まあこんなもん。まあこれくらいの意味なら「メディアは現実を構成する」って言われてもまあそうですね、ぐらいですね。こういうの参考文献にあげられても困ってしまう。まあ剽窃ではない、ということなんだろうと思うけど、この本入手できない人がみたら、「メディアは社会を構成する」ということになんか難しい根拠づけかなんかがされていると思いこむかもしれませんね。それに諸橋先生はなんで「「現実」」ってわざわざカッコに入れたんですかね。まあどうでもいいです。
他にも諸橋先生の本は「女性週刊誌は女性を思考停止させる」(大意)みたいな書き方で、なんか女性をバカにしている感じがして印象が悪かったです。
まあこういうのはどうでもいいんですが、入門レベルとはいえ、これくらいのちゃんの根拠づけとかできないままにメディアとジェンダーの関係とかそんな簡単には議論できないなあ、みたいな印象はもちました。
もちろんメディアが我々の生活に大きな影響を与えているのはそうだと思うので、実際にどのように影響を与えているのか知りたいですね。そしてそういう研究はちゃんとあると思う。
ジェンダー (図解雑学)
- 著者加藤 秀一,海老原 暁子,石田 仁
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- ISBN-104816339027
- ISBN-139784816339028
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↑にいちゃもんつけたけど、基本的に良書なので買ってあげてください。
ジェンダーの語られ方、メディアのつくられ方
- 著者諸橋 泰樹
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- 出版日2002/12
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- ISBN-104768468454
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メディアリテラシーとジェンダー―構成された情報とつくられる性のイメージ
- 著者諸橋 泰樹
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- 出版日2009/06/01
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- ISBN-10476845609X
- ISBN-139784768456095
- 出版社現代書館