派遣法改正案にパブコメを!(2015年9月17日(今日)たぶん日付が変わるまで受け付け)

非正規雇用という立場に、出口はあるのでしょうか?(写真:アフロ)

安保法案群が大きく注目を浴びていた今日このごろのタイミングで、2015年9月15日、派遣法に関する基準改正案・政令案・政令案のパブコメ募集がひっそり開示されていたようです。

締切は本日、2015年9月17日。施行は同じく9月30日です。

弱い非正規雇用の立場をさらに弱く絶望的なものにする派遣法改正案。

「受け入れてもよい」「しかたない」と思えないならば、とりあえず「No」と声を上げるしかありません。

壊れている国のグランドデザイン、今回は「派遣法」という切り口から

家庭を持ち、子どもを産み育てたいと思っても、せいぜい1人。2人目は考えこんでしまう若い夫妻。

今のところは生活保護基準よりは少し上の収入を得て子どもを育てている共働き夫妻から

「子ども1人を食べさせていくだけでも大変なのに、子ども2人に充分な教育を与え社会に接続することは、自分たちの収入で出来るんだろうか?」

という声を聞くことは、珍しくありません。今の「生活保護より少し豊か」という状況を維持するだけで精一杯。いつまで続けられるのか見通しが立たないので、2人目を躊躇してしまうのです。もちろん「保育園が足りない」といった、子どもと親の生活そのものに関わる問題もあります。このような問題が放置されてきたため、深刻な少子高齢化が進行しています。

真面目に働いても生活保護より苦しい暮らししかできない「ワーキングプア」の問題もあります。「最低賃金<生活保護基準」となってしまう問題、いわゆる「逆転現象」には、「生活保護基準と最低賃金という違うものを比べていいのか?」という問題もあります。ともあれ現在、逆転現象は解消されたことになっていますが、実のところ解消していません。

参考:「最低賃金」と「生活保護基準」の「逆転現象」は解消されていない!-用いられる「生活保護基準」のウソ-(藤田孝典さん)

たとえ、単身者でなんとか「逆転現象」が解消できたとしても、子どものいる世帯に対してまで解消することは極めて困難です。

では、子どものいる世帯に対する生活保護基準を引き下げればよいのでしょうか? 2013年1月に決定され、2013年8月~2015年4月にかけて執行された生活扶助引き下げでは、「有子世帯、狙い撃ち?」というほど、子どものいる世帯に対して大幅に減額が行われました。母子加算・児童養育加算などの引き下げも、2013年以後、社保審・生活保護基準部会で話題に上がっています。「働いても、子どもたちを養うに充分な収入を得られない」という状況の人々に対して、生活保護との「逆転現象」を解消しようとするならば、生活保護基準の方を強引に引き下げる以外に方法はないのかもしれません(もちろん、それが良いとは全く考えていません。前述のとおり、生活保護基準と最低賃金を比較すること自体にも問題が含まれています)。

とにもかくにも「逆転現象」が解決したら、出産・育児はしやすくなるのでしょうか? そんなことはありません。生活保護基準が下がったからといって、最低賃金や、その人の賃金が上がるわけではないからです。

特に夫妻とも非正規雇用で子どもを養う状況では、賃金が低いため、労働時間が長くなります。すると、子どものケアにあてる時間・気力・体力が少なくなります。このことから生まれた悲劇として、川崎中1男子生徒殺人事件(Wikipedia)を挙げれば充分すぎるでしょう。犠牲者となった中1男子のお母さんはシングルマザーだったため、さらに条件が悪かったわけです。しかし、もしもお母さんの時給が3倍だったら、労働時間は1/3で済んだわけです。

これで「子どもを産みましょう、増やしましょう」といっても無理! というのが実情ではないでしょうか?

いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」を実現するには、個々人の時間当たり収入を高くするしかありません。

子どもの有無にかかわらず、就労している人々が充分な収入を得ていなければ、「ワーク・ライフ・バランス」は実現のしようもありません。出産・育児を中心に噴出している問題の数々は、「日本人の多くが充分な収入を得ていない」ということの現れです。

働ける人々、稼働年齢層の人々が充分な収入を得て、納税や年金保険料の支払いを行ってもなお「ワーク・ライフ・バランス」が実現できる状況でなければ、高齢者福祉も維持できず、子どもも増えないでしょう。

少ない労働時間で高付加価値という路線にシフトできなければは、日本企業にも「この先」はありません。1980年代前半ごろまでの日本の高度成長期とその名残を支えていた労働集約的な工業モデルは、「長時間労働で低~中付加価値、薄利多売」という状況を前提にしていました。多くの企業が、その路線に先はないと考え、状況を打開するために数多くの試みを行いました。半導体業界での「TRONプロジェクト」(Wikipedia)にも、その一面がありました。しかし根本的な体質の変換に成功した企業は数少なく、そのまま現在へと至っています。

もしも、「長時間労働で低~中付加価値、薄利多売」という労働集約型工業モデルを維持したいのであれば、賃金は低く低く、生活保護基準んも引きずって低く低く、ということにしかなりようがありません。

私はときどき、

「2000年代以後の日本で起こっているのは、『工業国の夢よもう一度』ではないのか?」

と思います。そう考えれば、生活保護制度をはじめとする一連の社会保障改革と雇用制度改革は、一筋のストーリーとして全部説明できてしまいます。

でも、無理だと思うんですけどね、「工業国の夢よもう一度」は。

職業キャリアの最初の15年を半導体業界の中にどっぷり浸かって、高度成長期の企業戦士だったオジサマたちの中で多くの場面では気持よく仕事させていただき、その後も書き手として半導体とゆるく関わっていた私は、日本も世界も市場も当時と今がどれだけ違うか、肌身に沁みてます。こんなに違うのに?

話がそれましたが、

「ほどほどの時間の労働で高付加価値、少量多品種、個々の製品は数としては大して売れないけれども(売れることもあるけれど)利益率が高く、給料への分配も大きい」

という方向を目指すには、どうすればよいのでしょうか?

経営者の立場では「成功したら分配できるけど、ない袖は振れない」としか言いようがないでしょう。

かくて現在の、

「儲かりにくく分配もしにくい」

という経営側の声と、

「ワーク・ライフ・バランスなど多くの被雇用者には夢のまた夢、子どもは欲しくても持てず、低収入ゆえ納税額も少なく、年金保険料も減額してほしいんですが……」

という被雇用者の声に奇妙な「バランス」が成り立ってしまっています。被雇用者の立場の方が、圧倒的に弱い「バランス」ではありますが。

もしかしたら、最低賃金を「いっそ2000円」ということにすれば、すべてがポジティブな方面に回るのかもしれません。

でも、その原資はどこにあるのでしょうか? 継続できるのでしょうか?

というわけで、壊れているのは国のグランドデザイン、というべきなのが現状です。

派遣法を含め、雇用に関連する個別の法案を一つ一つ問題にしていたのでは間に合わないのが現状です。

しかし現在、いわゆる「一般ピープル」が国のグランドデザインに対して具体的な疑問や異議を表明するとすれば、機会あるたびに、せっせとパブコメを書いて送付するくらいしか方法はありません。

「労働」から問うならば、現在もっとも象徴的かつホットな問題となっているのは、派遣法と残業代ゼロ法案です。

今回は派遣法に関する、政府の取り急ぎのパブコメ募集に際し、取り急ぎパブコメを送付するためのご案内です。

なお当方の送付したパブコメは、記事「労働者派遣事業の許可基準の改正案にパブコメを送ってみた」で全文を公開しています。

省令案・政令案に対しても、若干の編集を加えて短縮したものを送付しました。

パブコメ募集+送付先

派遣労働の基準緩和案について

目の前の最大の問題点は、派遣労働の基準緩和です。

こちらに関しては、厚労省Webサイト内に概要・パブコメ送付先が示されています。

労働者派遣事業の許可基準の改正案に関する意見募集要領について

送付先は、上記ページによれば

御意見は理由を付して、次のいずれかの方法により提出してください。

御電話での受付はできませんので御了承ください。

電子メールの場合

メールアドレス:haken-ukeoi@mhlw.go.jp

 厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

 派遣・請負雇用管理係あて

ファクシミリの場合

ファクシミリ番号:03(3502)0516

 厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

 派遣・請負雇用管理係あて

出典:http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p20150916-01.html

となっています(郵送も可能ですが、今からでは間に合わないので割愛しました)。

省令案・政令案について

今回の省令案・政令案については、内容・パブコメ送付フォームとも、電子政府の下記ページにあります。

パブリックコメント:意見募集中案件詳細労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令案等に係る意見募集について

パブコメの提出は、上記ページ下部「意見提出フォームへ」から行えます。

今回の派遣法改正の問題点

詳細について自ら執筆する余裕がないため、取り急ぎ「情報まとめ」としておきます。

  • Y!ニュース 佐々木亮さんご記事より

【派遣法改悪】今出されている派遣法案を通しちゃいけない5つの理由(2015年6月2日)

やばい!維新の党が徹底審議の方針を転換か? 派遣法改悪案が衆院通過の危機!!(2015年6月7日

【派遣法改悪】専門26業務で「雇い止め」続出が見えているのに成立を急ぐ必要はない(2015年6月9日)

与党が派遣法案の成立を急ぐ理由はこれだ!~違法派遣の合法化~(2015年6月11日)

ツイッターで虚偽の事実を振りまく自民党議員。そうまでして派遣法案を通したいのだろうか?(2015年6月18日)

派遣法案の施行日延期?~「労働契約申込みみなし制度」まで道連れに延期か(2015年7月18日)

【派遣法】繰り返される「『正社員化』を促進する」という安倍総理の無理な説明(2015年8月1日)

【派遣法】「御社は正社員を雇う必要はありません。当社が派遣社員を提供しますから。」が現実に?!(2015年8月5日)

派遣法案の施行日、到来!! まぁ、まだ成立してないんですけど。(2015年9月1日)

【マニアック】派遣法案附則9条問題の解説と迫る強行採決の危険!(2015年9月1日)

【派遣法】安倍総理がまたウソの説明(2015年9月4日)

「今からこれ全部は読めない」という方は、最後の3記事あるいは5記事をどうぞ。

「一記事ならなんとか」という方は、

【派遣法改悪】今出されている派遣法案を通しちゃいけない5つの理由(2015年6月2日)

をどうぞ。

「それも無理」という方は、上記記事に挙げられている「5つの理由」の内容

  1. 違法派遣は多くのトラブルや問題の源なので、違法とされてきたんです。合法化してはいけません。
  2. それで正社員化促進が進むという理由は何ですか? 口先三寸やウソでないのなら、まず正社員促進のための本当に機能する枠組みを作ってから、なおかつ必要なら派遣法改正のご検討をされるべきです。
  3. 正社員を減らして派遣社員を増やして、日本の人件費を低くするのが本当の目的なのではないですか? どういう小手先の対策を講じたところで、派遣で一生働き続けるしかない人が増えるのは目に見えています。今と今後5年-10年の年金その他の担い手が減るということですが、それでいいんですか?
  4. 派遣労働者の「キャリアアップ」とおっしゃいますが、派遣のままでキャリアアップできた例が過去にどれだけありますか? ICT系を中心に、高収入を誇る非正規雇用の方は若干いらっしゃいますが、「正社員より稼げるから」という理由で非正規雇用を選べる方は極めて少数です。そういう方は、ちょっとやそっとの職業教育で育成できるものではなく、才能と環境に恵まれれば生まれることもある、という存在です。派遣労働者の多くは「ふつうの人」「世間並みより条件の悪い人」です。そういう方が大きな困難なく、一生をつつがなく生き、暮らし、働けるようにすることこそ、厚生労働省および国に求められる責務です。
  5. 派遣労働は「働き方の選択肢を増やす」と喧伝されてきましたが、男女雇用均等法第一世代に近い私は、この法案と抱合せで成立した派遣法(1986年)と対象業務の原則自由化(1999年)で何が起こったかを、身近に知って知っています。「働き方の選択肢」は、バブルによる極度の人手不足でもない限り、増えません。増えたのは、雇用する側にとっての「働かせ方の選択肢」であり、「労働ダンピングの自由」ではなかったでしょうか?

を、ご自分の言葉で(コピペしていただいてもかまいません)、ご自分の体験や意見を加えてパブコメとして送付されれば、問題が何であり、なぜ施行してはならないのか伝えることは可能と思います。

  • 茶平(@charrpei)さんのツイートより

茶平(@charrpei)さんが、ツイートとして、資料まとめへのインデックスを作っておられます。

派遣法 9/01~のいろいろ資料

派遣法 10.1施行 労働契約申込みみなし制度の資料

派遣法 8/30以前の資料(重複あり)

派遣法関連 2015/04/20塩崎厚労相の発言

私見:労働「自由化」、どうしてもやるんだったら

私自身は、「正社員」としての長期雇用モデル自体が、1980年代には実質的に破綻していたと考えています。

概ね20歳から、今後の高齢者福祉を考えれば概ね70歳までの約半世紀にわたって、一人の人間に充分に成果を挙げられる仕事を用意し、仕事をしていただき稼ぎを分配しつづけることは、どのような業界のどのような企業にとっても、既に無理なのではないかと思っています。

だから公務員? だから医師あるいは医療系? 私の友人知人には、公務員・医師・医療従事者がたくさんいますけれども、ほとんどが戦々恐々としてますよ。

「勉強を続け、腕を磨き、精進し続けたら生涯安泰だろう」

なんて、誰も思ってません。

「一人の人間を40~50年にわたって雇用し続ける」ということ自体に無理があるとすれば、業種職種と関係なく、みんな不安になるのが当たり前です。

今のところは派遣労働者など不安定就労をしている方が主対象ではありますが、正社員が安泰とも限りません。

私は「いっそ、先に正社員というものをなくしたら?」と思っています。

正社員という身分を現場のワーカーから経営陣まですべて無くし、さらに経営陣には、責任に見合うだけの具体的な「責任」を負っていただきましょう。1990年代に漏れ聞いた話ですが、半導体テスタで世界をリードしていた米国のとある企業では、部長クラスで報酬の20%、役員クラスで報酬の100%が自社株で支払われていたとか。

いわゆる「社畜」として意味のない「忠誠心」といったものを要請されることがなくなり、みなさん生き生きと仕事が出来るようになるのであれば、「正社員」をなくすことでパフォーマンスも上がるでしょう。人件費が固定費でなくなるわけですから、企業も利益を生みだしやすくなります。

そこから、しっかり税金を取って、社会保障を充実させましょう。

そうすれば、明日クビになっても

「社会保障を利用して心配なく食いつなぎながら、次のキャリア展開のために、さて何をしよっかな?」

ということになり、明るい失業者が増えるでしょう。

「包丁一本サラシに巻いて」というスタイルが、あらゆる職種に拡大すること自体は、そんなに悪いことでもないと思うのです。

そのためにも、まず安心できる社会保障の枠組みを整備。

ついで、「上」に行くほど責任を具体的に問われる形態を整備したうえで、「正社員」を撤廃。もちろん、財務省も厚労省も官公庁も、例外じゃありませんよ?

雇用の自由化をすすめるなら、本当はそれだけの準備と覚悟が必要なはずです。

というわけで、パブコメを!

というわけで

「何のために生まれて何をして生きるのか答えられない労働者の自分が生まれそうで、そんなのはイヤだ!」(「アンパンマンのマーチ」を一部使用させていただきました)

の一言でも、ぜひ、パブコメの送付を!