デモに参加したら、人生は「詰む」のか?

(提供:アフロ)

「デモに行くだけで、確実に人生詰みますよ」というツイートが物議をかもしています。

このツイートが事実であるかどうか? という問いへの答えは、Yesであり、Noでもあります。

デモ参加が、就職・結婚などその後の人生に影響する可能性は確かにあります。

本記事では、70年安保でゲバ棒を振り回していた東大生(当時)を上司に持っていた経験から、どういう問題がありうるかを考えてみたいと思います。

学生運動で就職が不利になった事例は、確かにあります

「学生運動への参加によって、就職が不利になった」という団塊世代は、私の直接知る範囲にも何人かいました。

理系大学院生であった学生運動家たちはしばしば、大学に就職できず、企業にも就職できず、予備校講師の道を選びました。有名なところでは、科学史家の山本義隆さんがいらっしゃいます。

就職できなかった理由が確かに学生運動だったのか、本人が最初から諦めただけなのかはともかく、「日本の有名大手企業に就職する」という道を事実上断念した元学生運動家が多数いた、という事実はあります。

親類の人生まで妨害する結果になることも、あるかもしれません

本人の就職だけなら「自己責任、自己選択」と言えなくもありませんが、親類の就職や結婚に支障が発生することも、ありえなくはありません。

興信所を使った身辺調査によって、

「親類の◯さんは、2015年に国会前デモに参加したことがあり」

と知られ、あるいは当時の写真から参加の事実が明らかになり、といったことがあれば、まとまりかけていた縁談がぶち壊しになる可能性は確かにあります。

ただし「相手が知れば」+「相手が気にすれば」の話

就職や結婚に、学生運動歴が影響することはなきにしもあらずなのですが、相手が知らなければ、あるいは知っても気にしなれば、問題になりようがありません。

知る手段として代表的なものは、興信所の利用です。

1980年代前半までの大手企業では、採用にあたって興信所を利用し、本人や家族についての情報収集を行うことが一般的であったようです。1980年に短大卒で電機大手に就職した女性から、「実家に興信所が来た」という話も聞いています。

ただし、どういう情報を収集し、どのように判断しているのかは、採用された人の話を聞いても全く分かりません。どのような前歴・どのような家族の存在が不採用につながるのかは、当時の人事担当者しか知りようのないことです。

採用する側は、いかようにも「本人が問題で」「本人に期待できず」「本人と弊社のマッチングの問題で」というような逃げ道を用意できます。実際に学生運動歴によって採用されなかった場合にも、その事実を知ることは不可能に近いです。

結婚においては、何が問題で断られるのか知らされる可能性が、若干は高いかもしれません。

しかしながら、結婚に至ったカップルでも1/3は離婚するのが現在の日本です。

「そんなことで壊れるご縁なら、どうせトラブルと消耗の末に壊れるんだから、結婚しなくてよかったんじゃないか」

という見方もできます。

逆に、評価される場合も

逆に、就職にあたって、学生運動歴が評価される場合もあります。

「学生運動するくらい気骨のある元気な人を採用したい」

と考える営利企業も、若干はあります。

「仕事の出来る人なら、気にしない」

と考える営利企業は、中小企業を中心に、数多くあります。私の直接知る範囲の中小企業経営者の何人かは、「デモに行くだけで、確実に人生詰みますよ」というツイートに爆笑しています。

「学生運動のせいで卒業できなかった」

では困りますが、

「学生運動を運営し参加しながら、学業もおろそかにせず頑張った」

なら、学生運動も学業も評価される可能性が大いにあります。

こういう評価のされ方も

しかしながら、ねじくれた評価・ねじくれた利用もありうるのが、大人の世界というものです。

熱心な学生運動家による、学生運動に対する強烈な批判と新自由主義礼賛が採用面接で評価される可能性もあります。入社後も評価され、出世や収入アップに結びつくかもしれません。私が会社員だった時期の上司は、東大の学生だった時代に70年安保でゲバ棒を振り回していましたが、学生運動や共産主義を「かつてのシンパとして強烈に批判する」という行動パターンによって会社の信頼を受け、評価され、まあまあの成功とともに会社員生活を全うしました。

場合によっては、学生運動の前歴を持つ人々が「スパイ」として重宝されることもあります。重宝できる場面は、かなり限定的ですが。

学生運動だけではなく、労働運動・環境運動などの前歴は、企業内ではしばしば、学生には想像のつかないような利用のしかたをされます。

社内イジメのターゲットとか。

他の社員の忠誠心を試すための人間型「踏み絵」とか。

泳がせておいて、好ましくない思想信条を持つ他の社員を洗い出すのに使うとか。

「社内で好ましくない思想を持つとされている」という表看板で給料だけは与えておき、さまざまな汚れ作業の実働要員に使うとか。

きったないぞー。きったないぞー。オトナはきったないんだぞー。

大いに気をつけましょう。

入り口はよくても、後で問題になる場合も

今は比較的「好景気」と言える時期なので、

「学力まあまあ、人物もまあまあ、学生運動歴が気にはなるけど、まあいいか」

と採用される可能性は、それほど低くないでしょう。

でも現在の「バブル?」的景気は、そのうち下降に向かいます。人員削減の嵐が吹き荒れることにもなりかねません。

その時、採用時に人事が気にしていた学生運動歴という分かりやすい「ケチ」が、人員削減対象者を選択する際の基準に使われる可能性は、なきにしもあらずです。日本的長期雇用を前提にした採用なら、なおさら、ありうるでしょう。

そういうことまで考えると、「デモに行くだけで、確実に人生詰みますよ」は、あながち100%のウソやデタラメやデマとも言い切れないのです。

結論:デモに行って、なおかつ詰まない人生を

デモに参加したら人生が「詰む」とは言い切れませんが、デモ参加が人生の「詰み」をもたらすパターンは確かにあります。

しかしながら、そのリスクを認識した上で、デモではなくリスクを避け、あるいはリスクがあっても困らない選択を積み重ねていくことができれば、人生そのものは詰みません(もちろん、リスクを認識してデモを避けるのも一つの選択のあり方ですが)。

私自身は人混みが大嫌いなので、デモには行きません。

しかし、デモに行きたい人は、あるいは「行くべきだ」と思う人は、行ってほしいと思います。

酷暑をはじめとする数多くのリスクを認識し、対策しながらデモに参加するのと同じように、今後の人生へのリスクを認識し、対策すればよいのではないでしょうか。

本日も明日も、厳しい暑さとなりそうです。

デモに参加される皆さん、くれぐれも熱中症にはお気をつけて。