IBMによるRed Hat買収提案は、1世紀もの歴史を持つIBMにとって最大規模の買収であるのと同時に、クラウドコンピューティングにおいてメジャープレイヤーであろうとする、リスクの高い取り組みでもある。
取得に投じた340億ドルはRed Hatの株価に換算すると1株当たり190ドルで、ノースカロライナ州ローリーに本社を置くRed Hatの10月26日終値に63%のプレミアムが乗せられたことになる。同社の株価は29日、45%上昇した。
IBM再活性化への道はクラウド技術にあり、それが先週末のRed Hat買収劇を生み出すことになったのかもしれない。
「これは大きな賭けだが、どのみち大規模な買収を行って先に進む状況にあった」とWedbushのアナリスト、ダニエル・アイブズ氏は解説する。
クラウドコンピューティングはインターネットを介して遠隔地のコンピュータにサービスを提供する仕組み。IBMの総売上の中で4分の1近くを占める事業だが、インターネットベースのコンピューティングサービスをビジネス向けに販売するにあたり、Amazon、Microsoft、Googleといったクラウドの競合に脅かされてきた。
「これによってクラウドの世界をリセットする」とIBMの会長兼CEO、バージニア・ロメッティ氏はカンファレンスコールで宣言した。
企業がオンサイト、プライベート、サードパーティのパブリックサービスを混在させて利用するハイブリッドクラウドは1兆ドルの市場規模が見込まれ、IBMはそのための準備をしなければならないとロメッティCEOは述べた。
アイブズ氏によれば、金融、小売り、工業などの分野では業務のクラウド移行が進んでおり、成長の余地はまだ十分にある。
IBMによるRed Hat買収に先立ち、Microsoftは75億ドルでコンピュータコーディング集約サイトのGitHubを買収している。どちらの買収も、大企業がオープンソースソフトウェア開発者コミュニティにさらに広範囲に食い込もうとしている動きの現れだ。
Red Hatは1993年に創業され、オープンソースのLinux OSを使ったソフトウェアプラットフォームを構築。「エンタープライズ分野がクラウドに移行する場合に鍵となる企業の1つ」とアイブズ氏は評する。
この買収はRed Hat株主と米規制当局による承認が必要だ。2019年下半期中の完了を予定しているが、Stifelのブラッド・リバック氏は、Red Hatがデータセンター市場に強いため、対抗買収提案が行われる可能性を示唆した。
こうした思惑によりRed Hatの株価は52.88ドルから169.56ドルに上昇し、史上最高値近くを付けた。ニューヨーク州アーモンクに本社を置くIBMの株価は5%ダウンした。
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