【スポーツ】[フィギュア]宇野昌磨が逆転連覇 失敗したSPの悔しさぶつけた2018年10月29日 紙面から
◇GPシリーズ<第2戦>スケートカナダ▽27日▽ラバル▽男女フリー▽ペン 辛仁夏 男子はショートプログラム(SP)2位だった平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(20)=トヨタ自動車、中京大=が188・38点の1位となり、合計277・25点で大会連覇を飾った。GP通算4勝目。女子はGPデビュー戦でSP3位の山下真瑚(15)=愛知・中京大中京高=が136・76点で2位となり、合計203・06点で銀メダルを獲得した。エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)が優勝。平昌五輪銀メダルのエフゲニア・メドベージェワ(ロシア)は3位だった。 「最初から全力を出した」という4分間のフリー「月光」を滑り終えた直後。宇野は激しく肩で息をつき、両手を腰に置いて苦しそうな表情を見せた。「失敗したSPの悔しさをフリーにぶつけた演技だった。全てに100%の力を入れたからこそ、自信があった体力も最後は消えてしまったのかな」 冒頭に跳んだサルコー、フリップ、トーループの4回転3連発は圧巻だった。サルコーが回転不足と判定されたものの、他の2種類の大技は質の高い鮮やかなジャンプ。2本合計の出来栄え加点は6・76点もついた。フリー、合計とも自己ベストを更新する今季世界2位の高得点。終盤の3連続と2連続のジャンプではバランスを崩して両手をリンクについたが、大勢に影響はなかった。 ほとんど失敗しないという油断から、SPでは得意のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒。「情けなくて悔しかった」と振り返るなど意外な一面も見られた。いつもはひょうひょうとした感じだったが、今大会ではいつになく「熱い昌磨」が顔をのぞかせ、自身の思いを本音トークで語った。
「どんだけひん曲がって頭から落ちても、どんなジャンプになっても、トリプルアクセルは力で絶対に降りてやるぞという最後まで諦めない気持ちだった」。この心意気が功を奏し、計4本の4回転を成功に導いた。 SPの悔しさでやる気に火がつき、「フリーは失敗を恐れず、最後まで全力でやる」と決めていたという。今季初戦のGPで大会連覇を飾る幸先の良いスタートにも、「得点や結果は気にせず、僕自身がやりたいことをやって『良かったな~』と思える演技をしたい」。それができれば、望む結果は後からついてくるという確信があるようだ。 ◆山下、デビュー戦2位 最終滑走も強心臓本番に強く、緊張もしなかったという山下に最終滑走者の重圧はみじんもなかった。GPデビュー戦ながら、ほぼノーミス演技を披露。15歳らしく、はつらつとした初々しい「蝶々夫人」を堂々と演じ切った。 「とても気持ち良く滑れた。SPもフリーも自分ができることを精いっぱいできたので、この結果はとてもうれしい」。金メダルまで、わずか0・26点差。演技後はフィニッシュポーズから、両腕を胸の前に持ってくる控えめなガッツポーズで喜んだ。 今大会はSP、フリー、合計の全てで自己ベストを出す大健闘だった。GPデビュー戦での表彰台は2016年の三原舞依以来。過去、日本女子の最高位は3位だっただけに、銀メダルデビューは快挙だ。 世界女王経験者のトゥクタミシェワとメドベージェワの間に食い込んだ快挙にも、「表彰台に乗せてもらえるなんて思っていなかった。(両女王に挟まれてどうか?)意外と普通で、自分では何か気になったりはしなかった」と、あっけらかん。持ち前の強心臓で、11月16日からのロシア杯(モスクワ)では一気にGPファイナルの切符をつかみ取る。
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