安倍首相が「国難」と位置づけ、日本政府の最優先課題の一つとなっている少子高齢化問題。中国でもその弊害が徐々に顕在化している。
2016年1月1日、中国で30年以上続いた「一人っ子政策」に終止符が打たれ、「二人っ子政策(二胎政策)」が全面的に実施された。しかし、出生数は初年度の16年でこそ大幅に増加したものの、17年は前年を下回った。中国国家統計局によると、16年の出生数は前年比131万人増の1786万人だったが、17年は前年より63万人少ない1723万人であった。
その背景にあるのが、出産コストの高さだ。中国では都市部を中心に生活・教育費用が高騰を続けており、出産に慎重な家庭が増えている。北京に住む私の周囲でも、経済的な理由により出産を断念する声を耳にするようになった。
1979年から始まった「一人っ子政策」は、当時危惧されていた人口の爆発的な増加を抑えることには成功した。しかし、長期に渡る人口抑制策が招いた人口構造のゆがみは、中国経済に暗い影を落とし始めている。
経済成長、不動産市場に負の影響
経済活動の中核を担う生産年齢人口の減少は経済成長に影響を及ぼす。
供給サイドからみると、経済成長の原動力は「労働力供給の増加」、「資本ストックの増大」、「全要素生産性(技術水準)の向上」の3つの要素に分解できる。中国の生産年齢人口は11年をピークに減少し始め、「労働力供給の増加」が経済成長に対する寄与度はマイナスとなり、潜在成長率の低下要因となっている。
一方で、人口構造問題は不動産価格にも影響を及ぼすと考えられる。モノの価格は基本的に需要と供給によって決定される。供給(住宅数)を一定と仮定すると、需要(購買者数)が減少に転じれば、当然価格に下方圧力がかかる。
中国では一般的に、結婚前に男性側の方で住宅を準備する慣習があるため、住宅購入年齢は必然的に若くなる傾向にある。中国不動産大手の万科の調査によると、深センにおける17年の平均住宅購入年齢は33.6歳であった。また、北京市の住宅購入年齢は27歳という報道もある。正確な統計データは存在しないが、以上から中国全体の平均住宅購入年齢は20代後半から30歳前半と推測できる。
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