【ロンドン=中島裕介】英国のハモンド財務相は29日、2019年度の予算案について演説し、大手IT(情報技術)企業を対象とする新たなデジタル税制を20年4月から導入すると公表した。20カ国・地域(G20)や欧州連合(EU)などで議論は進んでいるが、実際に導入すれば先進国で初めてとなる可能性がある。
新税制ではIT企業が英国のユーザーから稼いだ収入に2%の税率を課す。世界の売上高が年間5億ポンド(約720億円)以上の事業部門が新税の対象になる見通し。新税導入により年4億ポンド(約570億円)の税収を確保する。
今回の新税ではグーグルやフェイスブックなど巨大IT企業を狙い撃つ姿勢を鮮明にしている。ハモンド財務相は演説で「オンラインでの買い物への新税ではなく、もうけのある企業に税を払ってもらう」と強調。英財務省関係者は「ベンチャーや起業家への投資を妨げる目的ではない。そのために対象企業の売上高に下限を設けた」と説明した。
今までの伝統的な税制では企業がサービスや商品を販売した拠点に課税するのが基本。ネットを通じて世界にサービスを提供する大手ITへの課税は国際的な課題だが、IT企業を多く抱える米国が慎重姿勢を示すなど足並みはそろっていない。デジタル課税に熱心なEUは来春の法案成立をメドに議論を進めていたが、英国が一歩先行した形となった。
予算案全体に関してハモンド財務相は、リーマン・ショック後の歳出拡大の修正のために続けてきた緊縮財政の時代は「終わりを迎えた」と強調。医療の充実や低所得者対策の強化を図る方針を示した。EU離脱の対策費では、これまで19年度向けに用意した15億ポンドにさらに5億ポンド積み上げる考えを表明した。