もしもシャルティア・ブラッドフォールンがポンコツでなかったら……【完結】   作:善太夫
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◆cap02 漆黒の剣

 翌日モモンとシャルの二人は冒険者組合にやってきた。しかしながら新米冒険者の銅プレートでは受けられる仕事は荷物運びぐらいしかなく、途方にくれるのだった。

 

「あのう、良かったら私たちの仕事を手伝いませんか?」

 

 そんな二人を見かねてか、声をかけてきた冒険者がいた。

 

「街道などに現れるモンスターを倒す仕事なんですが……この国では倒したモンスターに応じて賞金が貰えるんですよ」

 

「いわゆる懸賞金というやつであるな」

 

 シャルはモモンと顔を見合わせた。モモンは静かに頷く。

 

「……折角でありんすから、その話を詳しく聞かせてほしいでありんす」

 

 モモンとシャルは彼らと同じテーブルの席についた。彼らは冒険者チーム“漆黒の剣”のメンバーで、最初に声をかけてきたのがリーダーのペテル。そしてレンジャーのルクルット、術者(スペルキャスター)ニニャ、ドルイドのダインの四人だった。

 

 互いに自己紹介を終えると突然──

 

「シャルさん! 一目惚れです。僕と結婚してください!」

 

 ルクルットが立ちあがりシャルに手を差し出した。

 

「……ふーん。そうでありんすね。死んだら少しは考えてみんしょうが、まず無理でありんしょう」

 

 シャルは気の無さそうな物言いでルクルットの求婚を拒絶する。

 

「モモンさんと……シャルさんはモモンさんと……その……」

 

「──ふぅ。そうでありんすなら良いのでありんしょうが……モモンさんは私にとって星、でありんす」

 

「……星?」

 

 シャルはため息混じりに続ける。

 

「……夜空の星でありんす。近くに見えるけれど決して届かない、でありんす。──でも」

 

 シャルはハッとするほど妖艶な笑みをモモンに向けた。

 

「いつかは星に飛んでいける日が来るかもしれないでありんしょう」

 

 シャルの芝居かかった科白に漆黒の剣のメンバーは誰もが呑まれていた。暫しの沈黙──

 

「ハハハハハ……うちのルクルットが失礼しました。ではお二方、よろしくお願いします」

 

 リーダーのペテルが締めくくった。

 

 

 

 

 

 

 漆黒の剣とモモン達はエ・ランテル郊外に来た。このあたりではモンスターだけでなく野盗の類いも出没するという。

 

 一日かけてオーガ三体、ゴブリン十六体、それが収穫だった。漆黒の剣のメンバーは手際よく獲物の耳を切り取っていく。それを冒険者組合に提出すると賞金が貰えるのだそうだ。

 

 一行がエ・ランテルに戻ってくるとモモンとシャルが立ち止まった。

 

「……うん? 街外れの墓地にアンデッド反応が……随分多いな」

 

「どれも大した敵では無さそうでありんすが……」

 

 モモンは漆黒の剣に冒険者組合への報告に行かせ、城内の警備を厚くするように手配するとシャルと二人で墓地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 墓地に面した城門にモモン達が到着すると、丁度城門が破られようとしていたところだった。

 

「〈万雷の撃滅(コール・グレーター・サンダー)!〉」

 

 モモンが魔法を発動させると幾つもの雷撃が絶え間無くアンデッドたちを貫く。光が消えた後には何も残らなかった。ポカンとへたり込む兵士たちをモモンは叱咤する。

 

「モンスターは我々に任せろ! お前たちは街を守れ! わかったな?」

 

 城門から深紅のシャルと漆黒のモモンが飛び出していく。兵士たちはただ見送るだけであった。

 

 ズウウウンと腹の底に響く音を立てて巨大なアンデッドが倒れる。そこから小さな赤い影が飛び出し次々とモンスターをなぎ倒していく。

 

 やがてモモンとシャルはアンデッド召喚の儀式の中心にたどり着いた。

 

「どこの馬鹿者か? いったいこれだけのアンデッドの大軍の中をどうやって?」

 

 敵の首魁とおぼしき痩せた男が喚く。

 

「仕方ない。これをくらえ!」

 

 男が手にした宝珠を捧げると巨大なアンデッド──スケリトルドラゴンが姿を現す。更にもう一体。

 

「フハハハハ。愚か者め! この魔法に完全耐性があるスケリトルドラゴン相手には誰も勝てぬわ!」

 

 男の笑いは次の瞬間に凍りつく。

 

「〈暗黒孔(ブラックホール)〉」

 

 空中を漂う小さな黒い点がスケリトルドラゴンに触れた瞬間、スケリトルドラゴンの姿が歪み、消える。

 

「馬鹿な? スケリトルドラゴンだぞ? しかも二体を──」

 

 ──空気が揺らぐ。

 

「チイイイィィッ!」

 

 暗闇に紛れて隠れていたもう一人の敵がいきなりシャルに斬りかかる。いや、両手にしたスティレットを突き出す。シャルは手にしたスポイトランスを使わずクルリと身を返して避ける。

 

「あんたの相手は私だよ」

 

 ビキニアーマーを着た女が猫のようなしなやかな体さばきでシャルに突きかかる。

 

 左右に軽く身体を振りながら難なく避けるシャルに女は段々苛立ちを覚える。

 

 と、次の瞬間、シャルはスポイトランスを手放す。追撃する女。手にしたスティレットがシャルに突き刺さるかに見えた刹那──女は蹲る。女の腹部はシャルの手が貫いていた。

 

「こちらはお仕舞いでありんす。モモンさんはどうでありんしょう?」

 

 モモンはシャルに笑いかける。

 

「こちらも片がついたところだ」

 

 シャルは首をかしげる。

 

「いったいこの者らはなんでありんしょう? この女は武技を使いんすようでありんしたが……」

 

「うむ。まあ今回は冒険者としての名声を得るため、首謀者として冒険者組合に死体を引き渡すとしよう」

 

 シャルは少し残念そうにしていたが、すぐに気を取り直すと周囲を調べ始めた。

 

「この奥になにやら部屋がありんす」

 

 シャルの言葉にモモンは拾い上げた珠──男がかざしていた物──を投げ捨てて向かう。

 

 モモンが部屋の中を調べるとそこには半裸の少年がいた。彼はンフィーレアと名乗った。

 

 

 

 

 

 

 その日の事件の真相は極秘扱いとして深く秘されたが、兵士などの目撃談などから“深紅と漆黒”の二人は一躍英雄となった。冒険者のランクも一気にミスリル級になった。

 

「おめでとうございます。モモンさんにシャルさん」

 

 冒険者組合で漆黒のメンバーと再会したときに二人は祝福された。

 

「かぁー。こんなことならあのとき諦めなければ良かった!」

 

「申し訳ない。ルクルットには我々も困っているのである」

 

 ニニャがモモンに走り寄った。

 

「モモンさん、僕たちも頑張ります」

 

 

 

 

 

 

 シャルと二人きりになった時にモモンは呟いた。

 

「なんだか、少し羨ましいな……」

 

「あの者らでありんすか?」

 

 モモンは、いや、アインズは思い出していた。かつてのギルドメンバーと過ごした日々を。

 

「……もしかしたら、でありんすが──」

 

 シャルティアが微笑んだ。

 

「──ペロロンチーノ様ならこの世界に来ていそうな気がしんす。あの御方は……トラブルに好かれていんすから……」

 

 シャルティアの言葉にアインズは思わず破顔するのだった。

 

〈──アインズ様、宜しいでしょうか?〉

 

〈エントマか? 何があった?〉

 

〈デミウルゴス様が至急お会いしたいと……重大な話だとのことです〉








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