もしもシャルティア・ブラッドフォールンがポンコツでなかったら……【完結】   作:善太夫
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◆prologue ──ちなみにポンコツである

 DMMO‐RPG YGDRASIL

 

 一二年の歴史が正に終わろうとしていた。

 

 ギルド アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターであるモモンガは手を伸ばし、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掴む。このギルド武器を作り上げるために費やした日々の思い出がまるで昨日のことのように甦る。YGDRASIL最終日、訪ねてくれたギルドメンバーは三人。他の三七人は既に辞めていたため、もう訪れる者はいない。

 

 モモンガは指に嵌めたリングを発動させて第一階層に移動する。せめて最後くらいはこのナザリック地下大墳墓をくまなく自身の目に焼き付けておきたかったからだ。

 

 第二階層の死蝋玄室の前に少女が立っていた。モモンガは思わず微笑む。第一から第三階層の守護者という設定のNPC、シャルティア・ブラッドフォールンだ。彼女を産み出したペロロンチーノとモモンガは特に仲が良かった。ペロロンチーノがシャルティアを作り出した際には一番最初にモモンガに披露してくれたものである。しかし──

 

「──最後くらいはペロロンチーノさんに来てほしかったな……」

 

 モモンガは思わず呟いた。無理な望みだとわかってはいたが。

 

 YGDRASILにおいてプレイヤーが取得できるアカウントは一つだけである。ペロロンチーノに限らず辞めていったかつてのギルドメンバーは皆、装備やアイテムを全てモモンガに託して去っていった。中にはアバターを消去してしまった者も少なくはない。そんな彼らが今更ログインしてくるとは思えなかった。

 

 第四階層まで来たときに、モモンガはシャルティアがずっとついてきていることに気がついた。どうやらペロロンチーノが何やら仕掛けておいたようだ。おそらくモモンガがシャルティアとある一定の距離に近付いたときにプログラムが発動するようにしておいたらしい。これには本職がSEのヘロヘロも一枚かんでいそうだった。

 

 モモンガはシャルティアを従えてナザリック地下大墳墓を歩いた。

 

 

 

 

 

 

 ナザリック第十階層──玉座の間──

 

 贅沢の限りを尽くした装飾に包まれた広大な空間の真ん中の階段をモモンガは上っていく。後ろにしずしずと歩むシャルティアを従えながら。そして一人のNPC──守護者統括の役目を与えられた美女──の横の玉座に座る。シャルティアは玉座のモモンガの脇の守護者統括と対をなすように寄り添う。

 

 玉座に座る漆黒のオーバーロード(モモンガ)、左右には白い衣装の守護者統括(アルベド)、そして深紅と黒の衣装の戦乙女(シャルティア)

 

「……よし。間に合ったようだな」

 

 ユグドラシル終了まであと残り十分。仮にナザリック地下大墳墓を攻略しようとする酔狂な輩が来たら、ラスボスらしく悪のロールプレイを完遂するつもりだ。

 

「……ん。そういえば──」

 

 ふと気になったモモンガはシャルティアのステータスを表示する。以前、シャルティアの外装デザインが出来上がった際にペロロンチーノの要望に反して巨乳になった。ペロロンチーノはデータをリセットするとか息巻いていたのだが、ある日、ケロッとした様子で『ああ、モモンガさん。あれは解決しましたよ』と笑っていたことを思い出したのだ。

 

「……なるほど。…………ん?」

 

 シャルティアの設定には『巨乳は実はパッドを三枚重ねた虚乳で、実際には貧乳である』とあった。更に読み進めていたモモンガは思わず目を疑った。

 

「──ペロロンチーノ!」

 

 モモンガは思い出していた。そうだった。彼はそういう人間だった。エロゲーをこよなく愛するペロロンチーノは自らの欲望を具現化すべく、シャルティアに屍体愛好者(ネクロフィリア)同性愛(ビアン)といった要素を加えていたのだった。

 

 モモンガはシャルティアの設定の最後の一文を見ながら考え込む。

 

 ──ちなみにポンコツである。

 

 さすがにシャルティアが不憫になる。NPCはあくまでも拠点防衛時の備品のような存在だったため、今まで気にもしなかったのだが、このまま終わるのはあまりにも哀しすぎるのではないだろうか?

 

 モモンガはコンソールを操作してシャルティアの設定から最後の一文を消去する。そして新しく書き加える。

 

 ──極めて優秀である。

 

 一つのことを成し遂げた満足感と共に目を閉じる。

 

 23:59

 

 モモンガは玉座に凭れてユグドラシル最期の刻を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 ──おかしい。モモンガは焦った。サーバーダウンが延長したのだろう、最初はそう思った。しかし、事態はモモンガの想像を遥かに超えていることを重い知らされるのだった。

 

「どうしなしんす? わらわにできることがございんすならどうかご命令を頂きとうありんす」

 

 モモンガが初めて聞く声に振り返ると、妖艶な美少女(シャルティア)の顔がすぐそばにあった。








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