過去記事

「生活保護利用者が、休日に急病になるということ」

が、未だに数多くの方に読まれているようすです。

同記事は、

「生活保護利用者の医療利用には問題が多い」

とする多数のコメントを頂戴しています。

本記事では、この問題について、念頭におくべき論点を整理してみます。

「生活保護利用者」で括ることはできるのか?

生活保護利用の唯一の条件は、「資産がほとんどなく、収入が少ない」です。

東京都内の単身者の場合、「預貯金4万円以下・収入13万円以下」が条件となります。

この条件に該当すれば、生活保護を利用することができます。

会社員だったけれども失業して再就職に成功しなかった大学卒業者の方もいれば、派遣労働の連続でネットカフェ難民状態を維持してきたものの不可能になり、いったんホームレス状態を経験して生活保護を利用している高校中退の方もいます。

現在ただいまホームレス状態にあり、病気で急迫保護を受けており、氏名や背景が全く分からない場合もあります。

生育環境がどのようなものであったのか、バランスのとれた食事・歯磨き・身体の清潔維持などの生活習慣を充分に身に着けてくることができたかどうか、一人ひとりの背景が全く異なります。

まず、「生活保護利用者の」「生活保護利用者は」「生活保護利用者だから」は、あまりにも「ざっくり」すぎる見方、と言うべきでしょう。

「生活保護利用者だから」という傾向が生まれるとすれば?

指摘される個々の問題、たとえば

「虫歯だらけなのに歯を磨かない、生活保護だから無料で治してもらえると思って」

「ちゃんとした話し方や態度ができず、説明や指示をちゃんと聞かない、生活保護のくせに」

といった類の話は、実際にあるのでしょうし、そういう人もいるだろうと思います。

非難する際に「生活保護」を持ち出す必要は感じませんが、

「その医療機関を訪れる人々の中で、生活保護利用者に特にそういう傾向が見られる」

という状況は、場合によっては大いにありえます。

健保が利用できるということは、勤務先が加入しており、しかも正規雇用(または、健保加入が義務付けられるだけの長期・長時間雇用)されているということです。

国保が利用できるということは、少なくとも国民健康保険料の支払い能力はあるということです。

生活保護利用者は、いずれにも該当しないから生活保護の医療扶助を利用しているわけです。

「健保・国保の利用者にはない悪条件が重なっている方が多い」

ということも、それらの結果として

「生活保護の患者は、態度がなってなくて、生活習慣がメチャクチャで、治療効果が上がらない」

「自費負担がないから、費用対効果を全然考えていない」

ということも、程度や頻度がどの程度なのかは別として、当然ありうるだろうと思います。

(後記:それらは「問題」というよりは、医療機関によって、あるいは医療機関・福祉事務所・地域の保健センターとの協力によって、解決されるべき「課題」だと考えていますが、この「課題」の解決については本記事では触れません)

地域性の問題は? 医療機関側の問題は?

私の友人・知人には、数多くの医療従事者がいます。職種は、医師・看護師・社会福祉士・精神保健福祉士など多様です。

機会があると、その医療機関の生活保護利用者比率・傾向などを尋ねています。

まとめられるところまでは調べていませんが、

「地域によっても医療機関によっても、ぜんぜん違う」

という感じです。

精神科病院に勤務する友人の一人は

「うち、生活保護の患者さんが30%くらいだけど、問題ある患者さんが生活保護だったことはないなあ。むしろ生活保護の患者さんは、気の毒になるくらい低姿勢だったりすることが多いし」

と言いました。

とはいえ、「問題ある患者さんは生活保護であることが多い」という話は結構な頻度で聞きます。まったくの無根拠というわけでもないだろうと思います。

保護率0.5%の地域と10%の地域では、その地で生活保護を利用している方々の背景が全く異なっている可能性、生活保護利用者に対する地域社会の見方が異なる可能性も考える必要があるでしょう。

自然に考えられるのは

「地域に生活保護利用者が多く、したがって病院に来る生活保護利用者数が多く、比率も高く、それゆえに問題を起こす生活保護利用者が含まれている機会が増えている」

という状況です。そこに

「生活保護は、イヤ!」

というスタッフが一人いて、その気持ちを態度についつい現しているとすれば、

「生活保護利用の患者が起こす問題が多い」

ということになりかねません。

「イヤ!」という気持ちと態度は、仮定の話ではなく、患者側から若干、医療側からしばしば(ただし同僚の話として)聞きます。

結論:本人の「生活保護」と無関係に対応すればよいのでは?

では、医療業務の妨害が行われている場面、他の患者に対する何らかの具体的な迷惑が及ぼされている場面で、その患者の「生活保護」をどう考えればよいでしょうか?

私は「考える必要はない」と思います。

単なる迷惑患者の迷惑行動、単なるモンスターペイシェントの問題行動として対応すればよいのではないでしょうか。

医療機関である以上、その患者の人権だけではなく、そこにいるすべての患者をはじめ、すべての人々の人権を守る必要があります。

単なる迷惑行動や問題行動に対し、必要な対応を行うことは、その行動の主が生活保護利用者であろうがなかろうが、当然かつ必要なことであろうと思います。

もちろん相手あること、「生活保護差別!」と受け止められる可能性はあります。

その患者本人が「生活保護差別!」というとき、他の人々から「まさか」と受け止められるか「やっぱり」と受け止められるか。医療機関・職員を含め、その社会の日常が問われる場面でしょう。

いずれにしても、あまりにも度重なるようだったら、福祉事務所に相談すれば、本人にも事情をただした上で何らかの対応が得られるはずです。

福祉事務所には、生活保護利用者の受診に関する指導・指示を行う権限があります。必要ないのに頻回受診し、しかも問題を起こしているのであれば、福祉事務所マターです。

福祉事務所にとっては、支出する医療扶助を減らす方向の対応です。医療扶助を増やす方向の対応に比べて、何らかの具体的対応が得られる可能性は高いです。

福祉事務所も動く可能性があるということは、病院にとっては、生活保護ゆえの「利点」とも言えるかと思われます。健保や国保の問題患者には、生活保護利用者の福祉事務所にあたる存在はありません。

時折、公表されているデータ類を眺めて、どこにどういう問題がありうるのか明らかに出来ないかと考えてみます。

けれども、「患者側の問題をデータで明らかにするのは、まず無理なのではないか」という気がします。

問題のある医療機関の、たとえば「生活保護利用者の頻回入院が特定の医療機関に集中している」という問題なら、過去にもデータで明らかにされていますけれども。