「泣き寝入り」しないために: セクハラ被害は、何にも優先して証拠の確保を

セクシャル・ハラスメントは、まず、受けることで苦痛を味わいます。

しかも被害を告発すれば、「必ず」といってよいほど、セカンド・ハラスメントの被害を受けることになります。

被害を認められたとしても、傷は癒えません。

せめて「泣き寝入り」しないためには、どうすればよいでしょうか?

動かぬ証拠を、なんとしても確保しましょう。

肉体的被害を受けたら、身体を洗わずに「なる早」で警察へ電話を

相手の体液が自分の身体に付着するような性的被害を受けたとき、その汚らしく忌まわしい体液だけでも「早く自分の身体から落としてしまいたい」と思うものでしょう。口の中ならうがいと歯磨き、身体ならシャワーなど。

でも、これは「証拠の確保」という面から見ると、何よりもまずい対応です。気持ち悪い体液が、わずかなりとも身体のどこかに付着している状態のまま、警察に電話しましょう。

「身体を触られた」だけでも、証拠確保は可能なことがあります。相手が手で自分の身体に直接触れただけでも、相手の身体の一部であったはずのものが、自分の身体の表面に、わずかなりとも残っているかもしれません。

警察は、電話を受けて、証拠確保を行うことの可能な医療機関等を紹介してくれるはずです。

そこに行き、被害内容を訴え、証拠を確保してもらいましょう。

場合によっては体内から証拠を確保するという苦痛を味わうことにはなりますが、相手のDNAを含む何かを確保できれば、その後はずっとラクになれます。

「デートDV」など、合意があったとみなされる可能性があっても同様。

それでも、警察あるいや裁判所に、最終的には「自分の意思で」「合意して」とみなされる可能性はあります。

特に女性が男性から被害を受けた場合、「警察や裁判所は基本的には男の味方」と考えておくくらいの用心深さが必要です。理不尽ではありますが。

その「基本的には男の味方」である機関を女性がが動かすためにも、証拠がなければ話になりません。

どんなに辛くても、泣きながらでかまいません。まず警察に電話を。

何もなくても、せめて記録を

うっかり身体を洗ってしまった、あるいは、「辛くて警察など第三者に連絡するなど無理すぎる」という場合には、せめて記録を残しておきましょう。

公開する必要はありません。というより、うかつに公開すると、あなたが名誉毀損を犯したことになりかねません。そこは慎重に。

記録を残す場は自分のパソコンやスマホでもよいのですが、記録した時刻や記録履歴が残る手段、できれば時刻の修正が不可能な手段が望ましいです。

「Google Drive」「Office365(Web版)」などのWeb上のドキュメントシステムは、この目的のために最適です。

「どうしても自分のパソコンで」ならば、PC-UNIXを使用するか、Macにしましょう。これらのOSでタイムスタンプ(ファイルの最終更新作成時刻)をごまかすことは不可能です。マシンタイムは常にインターネットと同期しておき、そのログも消さないようにしましょう。ここまでやれば「時刻をごまかしていない」と解釈してもらえる可能性の高い記録ができます。

もっとも、一般的な警察官や裁判官にそういう知識を求めることもまた不可能なので、「本人の記録である」という理由によって疑いの目を向けられて不快な思いをすることくらいは、覚悟しておく必要があります。

証拠なしでの半端な記録は、かえって危険

私には、証拠を残さず記録だけがあったため、窮地に追い込まれた経験があります。

2008年、訪問医療の医師の指示に基づいて、訪問鍼灸治療を受けていました。鍼灸師はSNSで知り合った人物でした。

この鍼灸師(男性)は、初回から私にしつこく性的関心を示すので困っていたのですが、訪問医療の医師の反応(私に対して非常に攻撃的でした)が怖くて誰にも相談できずにいました。そして約4ヶ月後、私はこの鍼灸師についに性的被害を受けるに至りました。

毎回、「ヤリたい」という意志を、暴力的な態度と口調とともに執拗に示す鍼灸師に、私はつくづく閉口していました。

そこで鍼灸師とのSNSでのやりとりでは、

「少なくともウチでは性行為はやめてほしい、ラブホで」

というようなことを書いていました。もちろん、ラブホに行く気など最初からありませんし、実際に行ったらフロントで大騒ぎして逃げ出すつもりでした。

しかしこの性的被害の直後、私は身体を洗って仕事の打ち合わせに行きました。予定されていたからです。出版社に対して立場の弱いライター、直前に予定をドタキャンするなんて、考えられませんでした。

そして悩みに悩んだ末、数日後に警察に申し出をしました。

しかし物証がなく、私が「ラブホでなら」と恋愛関係とも取れるSNSでのメッセージのやりとりを行っていたことから、警察は

「当初は恋愛関係にあったが、心変わりして性被害として警察に届け出た」

というストーリーと理解したようです。私は極めて苦痛なセカンド・ハラスメントを受けました。

また、この鍼灸師に指示を与えた訪問医療の医療機関(居住している自治体の当時の担当ケースワーカーの紹介による)からも、私は極めて苦痛な扱いを受けることになりました。先方としては「迷惑をかけやがって」という当然の反応かと思われます(なお、「担当ケースワーカー」は、生活保護利用者でなくても、障害者など福祉事務所にお世話になる人には必ずいます)。

後にこの鍼灸師に対しては、民事で実質勝利といってよい結果となりましたが、それまでの半年間の煮えくり返るような思いは、生涯忘れられそうにありません。

「証拠」の確かさに自信がなかったら、警察より前に弁護士に相談を

さまざまな理由で、はっきりした「動かぬ証拠」を残すことが不可能な場面は、多々あります。

また、自分自身が記録を残しておくこと自体が自分自身へのリスクへとなりうることも、セクシャル・ハラスメント被害の場合には多々あります。

このような場合、特に被害を受けてから日数が経過している場合には、警察に連絡する前に弁護士に相談しましょう。

事件としては一般的すぎるので、「法テラス」などの一般的な無料・低額法律相談で大丈夫です。

微妙なケースでは、警察に被害届を提出するだけでも大変です。一人で行ったら、まず受け付けてもらえない可能性が高いです。

しかし、「弁護士付き添いのもとで被害届を提出する」などの方法もあります。

すぐに弁護士相談の予約を取ることは不可能かもしれません。

でも、被害から日数が経っているのであれば、一週間や十日先送りしても、確保できる証拠の総量は大差ありません。

予約して、なるべく落ち着いて、その日を待ってください。

不安と煮えくり返る思いでいっぱいだったら、精神科へ

精神的に被害の記憶や被害そのものに耐えられないのであれば、ためらわずに精神科を受診して下さい。

「本人はこう言っている」と、その時に精神科医から見て「可能性あり」と考えられる症状が、診療録に記録されます。

それだけの事実が第三者によって記録されるだけでも、証拠として有効となる場合があります。

もちろん精神症状に対する治療も受けられます。必要ならば、受けてください。

言葉は記録または録音、でも「ハブり」は?

肉体的な性被害でもこれだけ大変なのです。

言葉によるハラスメント、「ハブり(孤立させる)」など態度によるハラスメントの厄介さといったらありません。

言葉によるハラスメントは、もし可能なら録音すれば証拠となりますが、たいてい、ハラスメントとなりうる言葉は「耳元に、本人にだけ聞こえるようにだけ、一瞬」という形でかけられるものです。

証拠を残すことは難しく、

「今、●●と言いましたよね? どういう意味ですか?」

と大きな声で言うなどの方法で周囲に知らしめ、「やらせない」方向に持っていく方が確実かもしれません。

もちろん、記録することくらいは可能です。その場でメモを残すことは出来なくても、たとえば職場での出来事なら、帰宅途中にでも。しかしながら、本人による記録には「真実性の証明」という厄介事がつきまといます。「ないよりマシ」かどうかを素人が判断するのは危険です。

「ハブり」となると、さらに証明が困難ですが、あまりにも長期かつ強く続いている場合には、何らかの証拠を確保できる可能性が高いです。せめて、記録は残しましょう。

いずれにしても、状況が今以上に悪化する前に、弁護士に相談しましょう。

たいてい、泣き寝入りの必要はありません

セクシャル・ハラスメント被害に「泣き寝入り」しないことは、それだけで辛く大変なことです。

でも、最終的に本当に「泣き寝入り」を強いられる場面は、それほど多くはありません。

大抵の場合に、出来る手段を駆使して、頼れる人や機関を頼り、せめて「泣き寝入りだけはしない」「なかったことにだけはさせない」を獲得する方法はあります。

「泣き寝入りさせられなくて済むかもしれない」という希望を持って、できることはして、その最低な相手や最悪な出来事から少しでも自由になり、前進しましょう。

後記:なぜUNIX系OSならタイムスタンプの信用度が上がるのか

UNIX系OSでも、タイムスタンプの変更そのものは、touchコマンドで行えます。

しかしログ等に、コマンドの実行履歴が残ります。

もちろん、設定によってコマンド実行履歴を残さないことは可能です。また、ログそのものを消去してしまうことにより、「touchコマンドを実行した」という事実そのものをなくすことも可能です。しかし通常、システムの信頼性を下げてしまう設定は、「わざわざ」行わなければできません。

特に2000年以後は、ジャーナリングファイルシステムが主流になっています。「ファイルの持つ情報は変更されたことがある」という記録そのものを完全に抹消することは、かなり困難です。