生活保護:障害でも病気でも「障害者」「傷病者」世帯でなく「その他の世帯」となる場合とその理由(改題)

昨日公開した記事「生活保護:「その他の世帯」は本当に増えているのか?」では、「その他の世帯」に障害者・傷病者が含まれている可能性について触れました。

実際のところはどうなのでしょうか? 

厚労省のご担当者に伺いました。

「障害者世帯」はどう定義されている?

厚労省の定義では、生活保護制度でいう「障害者世帯」「傷病者世帯」は、このように定義されています。

ウ 障害者世帯・傷病者世帯

世帯主が障害者加算を受けているか、障害、知的障害等の心身上の障害のため働けない者である世帯並びに世帯主が入院(介護老人保健施設入所を含む。)しているか、在宅患者加算を受けている世帯若しくは世帯主が傷病のため働けない者である世帯

出典:平成23年度福祉行政報告例「用語の定義」

「世帯主が障害者加算を受けているか、障害、知的障害等の心身上の障害のため働けない者である世帯」

という文言を読む限り、単に世帯主が障害者手帳を交付されているだけでは、「障害者」にはカウントされず、「障害によって働けない」が必要であるようです。

「障害者世帯」には、「障害者加算」または「障害のため働けない」が必要

日本の福祉の世界で公的に「障害者」と認められるのは、障害者手帳を持っている人だけです。だから、障害者世帯の世帯主だったら、必ず障害者手帳は保有していることになります。

生活保護では、障害者加算のつく級(身体障害で1・2級と3級(減額))ならば、「障害者なので、障害者」という当たり前の話になります。

障害加算のつかない軽度障害(身体障害の4~6級)では、「障害のため働けない」、つまり障害が就労阻害要因と認められる必要があります。

障害が就労阻害要因となっているかどうかに関する、全国一律の基準はありません。

「その人の障害の内容や状況・その地域の状況によるため」

ということです。

障害者は、働けたら障害者でなくなる?

意味不明な小見出しですが、実際の運用を聞いて私は「そういうこと?」と思いました。

まず、障害者加算のある等級の重度障害者であれば、就労しても「障害者加算がある」をもって障害者とされます。

障害者加算のつかない等級であれば、就労可能かどどうかで「障害者」「その他世帯」に区分されます。

「その障害なら能力的には働ける」といっても、その地域に、その障害に対応できる求人がない場合もあります。その場合は「障害者世帯」のままです。求人があるようならば「その他の世帯」となります。

作業所での就労でも行っていれば、就労できている実績あり、です。

その人が世帯主であれば「就労している」という事実をもって、「働けるけど生活保護」として、「障害者世帯」ではなく「その他世帯」に含められるということになるかもしれません。

ただ、厚労省によれば、世帯類型別統計では、「障害者加算」で人数がカウントされるので、福祉事務所が「その他世帯」に含めていても関係ないということです。

なんとも不可解な話ですが、「自立の助長」という観点から「働ける」「働けない」で線を引かなくちゃと頑張った結果、「障害者なのに障害者じゃない」という奇妙な事態も発生してしまうことになっているようです。

傷病者世帯の場合はどこが違う?

傷病者世帯の場合は、上記定義によれば

「世帯主が入院(介護老人保健施設入所を含む。)しているか、在宅患者加算を受けている世帯若しくは世帯主が傷病のため働けない者である世帯」

です。

「世帯主が入院中」「世帯主が在宅患者加算を受けている」「世帯主が傷病のために働けない」のどれかが必要、ということになります。

傷病があっても、働いたら傷病者ではなくなる?

傷病者の場合も「働けるなら傷病者世帯ではなく、その他の世帯」ということになります。

就労可能なのか、就労不可なのかは医師の判断によりますが、医師が「軽作業可」としても地域に求人がなければ「傷病者世帯」のままです。

就労の場があり、少しでも働いていれば、半就労として「その他世帯」に含められるということです。

「障害者世帯」「傷病者世帯」の就労者は世帯主とは限らない

厚労省が継続して行っている「被保護者調査には、

「就労の状況 就労人員数、世帯主―世帯員・世帯類型・雇用形態(呼称)別」

という表があります。この表を見ると、

「障害(傷病)のある世帯主が働いている」

「障害(傷病)のある世帯主は働いておらず、家族が働いている」

「障害(傷病)のある世帯主も家族も働いている」

の内訳がわかります。

世帯主・世帯員を区別した調査は平成24年(2012年)からです。

「データが実態を表しているかどうか?」から考えなくては

障害があっても、傷病があっても、「働ける」「働けない」で線引きを行い、

「働けるなら(働いているなら)『その他の世帯』へ」

でいいのかなあ? とは思います。

しかし少なくとも、世の中にあふれる

「働けるのに働かない生活保護世帯の『その他の世帯』」

というイメージは、

「『その他の世帯』には、働けるか働けないかが状況に大きく依存しやすく『微妙』な障害者や傷病者が、多数含まれている可能性がある」

ということが知られれば、少し変わるかもしれない。

そう思いつつ、本記事をまとめました。

厚労省のご担当者は、いつも丁寧に親切に、もしも厚労省にとって都合の悪いデータでも、必要な事情を知らせて正当な理由のもとに問い合わせれば、だいたいは教えてくださいます。

感謝申し上げます。