国連女性差別撤廃委員会:「JNNC」とは何なのか?

国連女性の地位委員会(2016年3月)。多くの委員会に市民団体が参加します。(写真:ロイター/アフロ)

国連女性差別撤廃委員会に「JNNCという左翼団体」が現れたというレポートが、ネット空間に散見されます。

この「JNNC」とは、いったい何なのでしょうか? 

JNNCは単一の「団体」ではありません

JNNCの正式名称は'日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク (Japan NGO Network for CEDAW: JNNC)'です.

名称から分かるとおり、NGO(非政府組織)のネットワークです。

単一の団体というわけではありません。あくまで「組織のネットワーク」です。

JNNCは常設されているわけではありません

常時存在するわけではなく、国連女性差別撤廃条約が日本に対する審査を行う際に結成されます。役割が終われば解散するわけで、これまでは概ね、フォローアップ(審査後、総括所見が発表されてから概ね2年)終了後に解散しています。

過去、2002年~2006年、2008年~2013年、2013年~現在 の3回存在しています。

2002年以後、存在していなかった時期は2006年~2008年の2年間しかないわけですが、参加団体は各回さまざまです。

また、参加団体の参加のありようもさまざまです。

たとえば現在の第3次JNNCは、2013年以後活動しているわけですが、参加団体のすべてが2013年から参加しているわけではありません。

また、参加のありようもさまざまです。「上部団体」「下部団体」といった関係があるわけではなく、団体のネットワーク、非政府組織のネットワークなのですから、当然そうなります。

JNNCは、政府の敵でありつづけてきたわけではありません

今や「反政府的主張を繰り広げる日本の敵、JNNC!」というような見方も広まっているようですが、あくまでも目的は、1985年に日本政府が締結した女性差別撤廃条約を日本の法や制度として実現することです。これまで3回結成されたJNNCで、この点がブレたことはありません。

2003年の日本審査のときは、終了後、内閣府男女共同参画局主催で、政府代表団とNGOとの懇親会が開催され、JNNC参加者も懇親会に参加したようです。

2003年といえば、自民党・小泉純一郎政権下のことです。

政府ができないことを補い、法や制度の考え方を実現に移すことを助けるのがNGOの役割でもあります。そのことが、2003年には日本政府にも認識されていたようです。

ものごとは変わるものですね。

JNNCの共同レポートに見られる、多様な参加のありかた

今回、第3次JNNCは、国連に対して共同レポートを提出しているわけですが、参加団体の全部が共同レポートに参加しているわけではありません。参加団体ではあるけれどもレポートは別途提出した団体もあります。また、団体独自のレポートと共同レポートを両方提出した団体もあります。

非政府組織の「ネットワーキング」とは?

「特定の思想のもとに固く結集した」という認識は、JNNCには当てはまりません。

基本、「参加団体おのおのが、自分たちの譲れない課題を持ち寄っているだけ」です。

国連女性差別委員会が2016年3月7日に発表した総括所見(近日、JNNCによる日本語訳が発表される予定)を見ても、実に数多くの課題が挙げられています。JNNC参加団体は、これらの課題を全部カバーしているわけではなく、どれかに特化して活動し、レポートで意見を述べています。

もちろん、各課題は全くバラバラに存在するのではなく、女性差別撤廃条約と何らかの形で関連しています。

逆にいえば、それだけのつながりしかないわけです。

もちろん「他の参加団体の主張がどうにも許せない」ということがあったら、ネットワーキング自体が不可能になるので、参加団体のどこかと敵対する団体が参加することはありません。利害が若干ズレたり、優先順位付けが若干異なったりする程度のことなら結構ありますが、基本、そういうことがあっても、決定的な対立にならないように努力して落とし所が見つけられる大人の集まり……だと……思います……。

別に「仲がよい」というわけではない

私自身には

「あなたの主張には賛成、少なくとも反対ではないが、あなたと仲良くすることは無理」

ということが結構あります。

「私は障害者に理解ある人間だから、障害者のあなたと仲良くできるはず、気持ちを分かってあげられるはず」

という「善意」をもって近寄って来られる方は、私の最も苦手とするところです。

半径5メートル以内に近寄らないでほしいです。

しかし、相手が人として「半径5メートル以内に近寄らないでほしい」であっても、相手の主張に反対というわけではないし、相手の重ねてきた実績は認めるところだし。でも、その人はイヤ……という非常に間合いの取り方の難しい状態。

日本で障害者でいると、このような場面がしばしば発生します。障害者でなくても発生するとは思いますが、頻度と避けにくさが全く違います。

社会運動に関わっていると、この、極めて「やりにくい」状態が、しばしば起こります。基本的に「善意」の方々の集まりですから。「悪意」だったら「おととい来やがれ!」で済むんですけどね。

まことに疲れます。でも疲れるからといって邪険にもできないし、はっきりしたNoも言いにくいし。私、言っちゃいますけど(笑)

私だけがこういう思いをしているわけではなく、話してみると結構「あるある!」だったりします。

個人間だけではなく、団体間にも同じような「ややこしさ」があります。

団体の間に、必ずしも密接なつながりがあるとは限りません。

団体Aと団体Zはネットワークを介してつながってはいるけれども、直接のつながりはなく、遠いつながりであったりします。

すると、互いによく知らないところから「あの人達、別にいなくていいわよね」というようなこともあります。

今回のJNNCではありませんが、同様のネットワークで国連の委員会に参加していたとき、私がトイレの「個室」の中にいると、

「さっき団体Zさんにチラシ渡されたんだけど、私達には関係ないわよねえ」

「団体Zさんが参加したいっていうから参加してもらってるだけよねえ、いなくてもいいわよねえ」

というような日本語のおしゃべりが聞こえました。

彼女たちがトイレから出た後、私は「個室」を出ました。彼女たちが捨てたと思われる、団体Zの活動紹介チラシが床に落ちていました。日本語でした。日本語チラシは受け取るのも捨てるのも日本人でしょう。私は黙ってチラシを拾い、小さく潰して丸めてゴミ箱に捨て、手を洗い、ペーパータオルで拭き、そのペーパータオルで、丸めて捨てたチラシをカモフラージュしました。

「団体Zの方々が、チラシが捨てられているのを見たら、どれだけ傷つくだろうか」

と思ったからです。と同時に、けっこう小心者の私は

「私が捨てたと思われたらイヤだ」

とも考えました。もちろん私には「捨ててません、さっき頂いたチラシをちゃんと大事に持ってます!」という物的証拠はありましたが……。

人権問題にかかわる団体のネットワークの多くで、しばしば、こんなことは「時にはあるもの」として織り込み済みです。

共通の目的と課題を見失わず、互いに距離をおいたり近づいたりしながら「なんとか協力を続けられる」を続けているのが、この種のネットワークです。

人間が構成している以上、人間の自然な感情をあまりにも捻じ曲げる必要があったら、続きません。

なにもかもバラバラ、それでも共同行動

では、2016年2月、ジュネーブの国連本部で行われた国連女性差別撤廃委員会の日本審査のとき、現地に行ったJNNC参加団体の人々の旅費は、どこから出たのでしょうか?

少なくともJNNCは出していません(参加団体は若干の事務手数料的費用を、特にジュネーブ行きのためではなく通常の会議その他の活動のために支払っていますが、合計は1人分の旅費にも充たない金額です)。

旅費の資金調達を、団体単位で行ったところもありました。

また、一つの団体に、外部資金で参加した人と自腹で参加した人が混じっている場合もありました。

もしかしたら、旅行代理店にツアーを企画してもらったグループもあったかもしれません。個人手配によるさまざまな手間や心配を省き、質を保ちながらコストも抑制し、浮いたエネルギーを現地での活動に充てるのは、大いに合理的な選択だと思います。

旅程はさまざまですし、泊まったホテルの格もさまざまです。

私は、航空会社のマイレージが溜まっていたのを大放出してフライト費用を浮かせ、自腹で行きました。

ホテルも自分で手配。日本審査の期間中はDPI女性障害者ネットワークの方々と同じホテルに泊まっていました。レポート作成などの共同作業を考えると「別のホテルに」というわけにはいかなかったからです。しかし、その後はユースホステルに移動しました。そこには、国連関連の会議参加や情報収集のために宿泊している職業人もいました。「国際的な会議に参加するような人たちは、それなりのホテルに泊まって、お金をかけて」という発想、欧米ではあんまり見ません。欧米のホテルの宿泊費の相場が高い地域で国際学会が開催されると、その地域のユースホステルに、フツーに参加者が泊まってますよ。貧乏院生のこともありますが、大学教授だったり機関職員だったりすることも、ままあります。かつての日本でもそうでしたけど。話がそれました。

JNNCから参加した人々の服装は、さまざまでした。揃いのユニフォームとか、揃いのバッジとかは、JNNCとしては一切ありませんでした。ただ、民族衣装を着ているマイノリティの方々は、少数いらっしゃいました。なにしろマイノリティですから「たくさん」はいないわけです。またDPI女性障害者ネットワークの方々は、「Nothing with us without us(私たちのことを私たち抜きに決めるな)」という障害者の国際スローガンをプリントした揃いのTシャツとバッジを持参されていましたが、着方や付け方が統一されていたわけではないし、なにしろ冬にTシャツですから他に何も着ないわけにはいかないし、「ユニフォーム」的な統一感は、そんなにはなかったです。同じ紺色だから集まってると「紺色が集まってる感」がある程度、でした。服装が紺とグレーばっかり、その日も紺のテーラードジャケット着用、車椅子もブルーという私は、DPI女性障害者ネットワークの皆さんと、自然に馴染んだ感じに見えていたのではないかと思います。

民族衣装でも団体揃いの何かでもない服装の方々には、ビジネスっぽいスーツでキメた方もいれば、フェミニンなスーツでキメた方もいれば、ストリートファッションの方も。また、バッチリメイクもノーメイクも、という感じでした。

これは委員の方々もそうで、特に女性のファッションのバリエーションは豊かでした。

統一が必要ならドレスコードが定められるでしょう。でも、特にドレスコード的な何かが設けられていたわけではありません。

着流しも浴衣も(冬なので、さすがに浴衣はありえませんが)許される、服装については比較的寛容な場です。

とにかく、行ってみる方が増えてほしい

私は

「何がされているか知りたいから、そこに行ってみる」

という方が、とにかく増えてくれれば、と思っています。

「観光メイン、傍聴もするけど」

で十分だと思います。

傍聴するにあたっては、事前手続きが必要です。また、国連に登録されている市民団体に所属している必要もあります(登録時、その場で登録することもできるようですが、活動実態が求められるかもしれません)。

そもそも、スケジュールがなかなか決まらないのです。

「今回の委員会の期間は2月15日から3月7日まで」

は事前に決まっていますが、そのどこで、たとえば日本審査が行われるのか。早くて2ヶ月前、ヘタすると1ヶ月前あたりにならないと、確定しません。

いずれにしても、「思い立ったのでいきなり」というわけにはいきません。

でも、関心があれば、方法は見つかるでしょう。

日本国内にある国連広報センターに問い合わせてみるとか。

国連についても、委員会についても、参加者についても、

「嘘じゃないんだけど、それだけ伝えられたら実態が伝わらないよねえ」

というような情報が多すぎると感じています。

現地はどのような場所なのか、何が行われているのか、どういう日本人が行って、何をしているのか。

実のところを見て知る方に増えてほしいと、心から願います。

百聞は一見にしかず、です。