ロザリオと一撃男   作:海神アグル
<< 前の話 次の話 >>

21 / 26

他のssサイトでは「」の前に名前がついて台詞のみが書かれたもの…いわゆる台本形式がよくあるのですが、それもちゃんとした小説として見られてるみたいなんですよね。

ここまで来ると「結局、台本形式は何をもって台本形式なの?」っていう哲学的な事にぶち当たっちゃうんですよね……。

まぁこれは作者自身が純粋に疑問を感じた事なので、スルーしてくれても構いませんし、真剣に答えてくれても構いません。

ではどうぞ。



二十一撃目

時刻は夜。

 

人気の無い陽海学園の壁に、陽海学園の新聞部が発行した新聞を貼り付け、スプレーで何かを書いている人物がいた。

 

「ふ………中々いいね。今度の“新聞”は……」

 

そう言って、その人物はニヤリと笑った。

 

これから起こる出来事に心を踊らせて。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

翌日の陽海学園。

 

今日も学園は生徒の活気で溢れ、覆いに賑わっていた。

 

そして学園の中庭に設置されたテーブルには、萌香達が集まっていた。

 

尚、竜司は現在トイレに行っている。

 

「ふ~ふふ~ん♪」

 

何故か萌香はこれ以上無いくらい上機嫌だった。

 

それが気になった胡夢が訊く。

 

「ん?どうしたの?今日はずいぶん浮かれてるね。萌香」

 

「え……?」

 

キョトンとした萌香の肌を見て、紫が言う。

 

「本当ですぅ~!今日の萌香さん、顔色がよくてお肌ツヤツヤですぅ」

 

「そ……そうかな?////」

 

紫の言うとおり、普段から白く綺麗な肌をしている萌香だが、今日は一段とハリがあり、ツヤツヤと白さを増していた。

 

それが照れた時の頬の朱をより際立たせる。

 

(それってもしかして………久しぶりに竜司の血を吸わせてもらったから……?)

 

………萌香の美容には竜司の血液が犠牲になっていた。

 

そこへ慌てた様子のギンが、久しぶりに萌香達の前に姿を現した。

 

「大変やッ!自分ら見たかコレッ!? 大変やで!」

 

そう言ったギンは新聞の束をテーブルに叩きつける。

 

しかし胡夢と紫は新聞よりも久しぶりにギンを見たことに関心を見せていた。

 

「あ……ギン先輩久しぶりに登場!」

 

「生きてたんですか部長~~」

 

「勝手に殺すなボケェ!! ええからこの新聞読んでみ?」

 

紫は首を傾げる。

 

「新聞?」

 

そして最初に手に取ったみぞれが口に出して読む。

 

「…『学園祭に血の雨を……我々は10月29日の学園祭に断固反対し、これを阻止する。学園がすぐに開催を中止しなければ29日には多くの血が流されるだろう』……ひどい記事だな。テロでもやらかす気か?」

 

それに胡夢がツッコム。

 

「何で私に言うのよ!? うちの新聞じゃないのに」

 

「…でも『陽海新聞』って書いてあるぞ?ほら……」

 

「え……?ウソォォォ!?」

 

みぞれが見せてきた新聞には、確かに陽海新聞と書かれていて、それに胡夢はショックを受ける。

 

これではいくら自分達じゃないと言い張っても無駄である。

 

そんな胡夢達にギンが種明かしする。

 

「ニセモンや。こいつが今日大量にバラまかれとったんや。校舎裏に悪質なラクガキと一緒にな」

 

その言葉に胡夢は驚き、萌香が訊く。

 

「ニセモノっ!?」

 

「そんな……一体誰が何のために……!?」

 

「反学園組織……内容から見ておそらく奴らの仕業やろ」

 

前々からその存在を知っていたのか、ギンは苦渋に満ちた顔で説明する。

 

「通称:アンチテーゼ《反学派》。その正体や構成員の数は謎に包まれ、平和的な学園方針を否定し妖本来の暴力性を取り戻そうとする……早い話“学園の敵”や。せやからこないな新聞が出回ってもうたら、うちらまで学園に目ぇつけられてまうで。とっ捕まって停学ってことも………」

 

ギンの最悪な考えに、萌香達は体を強張らせる。

 

同時に、萌香はここにはいない竜司の事を心配する。

 

(竜司………大丈夫かな~?)

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

結論から言うと竜司は大丈夫じゃなかった。

 

何故かトイレから出ると、竜司は五人の黒服を着てサングラスをかけた男達に囲まれていた。

 

かなりヤバイ雰囲気なのだが、竜司は相変わらず無気力顔だった。

 

「誰?勧誘の人?なら間に合ってますんで…」

 

「我々はセールスではない!!」

 

セールスマンではないと分かっていても、ついそう訊いてしまう。

 

結果否定されたが。

 

竜司の一番目の前にいる黒服が、偽物の陽海新聞を出しながら言う。

 

「天青竜司!この新聞を書いたのはお前だな?学園への反逆、そしてアンチテーゼ《反学派》のメンバーの疑いでお前を連行する」

 

竜司は内心「はぁ?」と思いつつも新聞を黒服から奪って内容を読む。

 

そして眉を釣り上げて言う。

 

「………おい……何だよこの新聞?俺はこんなの書いてない。大体アンチ何?残酷な天使の何かか?」

 

「いいから来い!話は後だ」

 

竜司の言い分など無視して黒服は竜司の腕を掴む。

 

それにイラッと来た竜司は、

 

ドゴンッ!!

 

「「「「…………なっ!!!?」」」」

 

自分の腕を掴んだ黒服を軽くアッパーして、天井にめり込ませた。

 

パラパラと小さな破片が落ちてきている。

 

その威力に残りの黒服四人はおろか、その場にいた生徒も口を開けて驚く。

 

陽海学園の天井は床からかなり離れてる。

 

そんな天井までめり込ませるほどのパンチの威力に驚くのは無理無い。

 

「……………はっ!? こいつ!!」

 

「大人しくしろ!!」

 

しばらく呆然としていた残りの黒服四人だが、なんとか我に返って竜司を拘束しようと掴みかかるが、

 

「よっ、ほっ、そそい」

 

「「「「ぐばァァァァァァァァァァ!!!?」」」」

 

四人とも殴られ、一人は床に、残りの三人は天井まで吹っ飛んだ。

 

何故一人だけ残したかと言うと、目的を訊く為だ。

 

竜司は床に寝てる黒服の襟を掴み、頬をペチペチ叩いて起こす。

 

「おい、起きろ~」

 

「ぐぅ……はっ!? き、貴様一体何なんだ!?」

 

黒服は竜司を見た途端震えていた。

 

そんなのは無視して、竜司は訊く。

 

「なんで俺を捕まえに来た?言え」

 

「り、理事長が私達にそう命じたんだ!!」

 

「理事長?ってことはこの学園で一番偉いやつか……」

 

竜司はしばらく思案すると、黒服に言う。

 

「じゃあその理事長の所まで連れてって?」

 

「………………………………えっ?」

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

この陽海学園にある部屋の中でも、一際大きく、また薄暗くも豪奢な雰囲気を漂わせる部屋に、この学園の理事長はいた。

 

彼のいる部屋がノックされる。

 

「し、失礼致します。天青竜司を連れて参りました」

 

その声の後、ドアが開くと竜司と黒服が現れ、2人は室内へ入る。

 

「よく来たね竜司くん。私がこの学園の理事長だ」

 

「あんたはあの時の……あんたがここの理事長なのか?」

 

竜司は少なからず驚いていた。

 

それもその筈、この学園の理事長は、竜司が御堂を倒した帰りに出会ったあの謎のエクソシストだったのだから。

 

理事長は竜司に訊く。

 

「ところで……何故彼は頬が腫れているのかな?」

 

理事長は黒服の方を見る。

 

黒服の頬は竜司に殴られた為に大きく腫れていた。

 

「そりゃ俺が殴ったから」

 

「………そうか。まぁそれはどうでもいい」

 

おおよその検討がついたのか、あえて理事長は追求しなかった。

 

その代わりにトンデモ発言を落とした。

 

「退学だ」

 

「…………は?」

 

いきなりのことに間抜け顔を晒した竜司。

 

当たり前だ。

 

自分は何も悪いことをしてないのに一方的に退学なんて言われたら誰だってこうなる。

 

理事長は言う。

 

「君をここに呼んだ理由だよ竜司くん。君には今日付けでこの学園をやめてもらう」

 

「おい、退学っていきなりなんだよ?言っとくがこの新聞を作ったのは俺じゃないからな?」

 

念の為に竜司は潔白を主張するが、理事長はあっさりとそれを否定した。

 

「そんなことは問題ではない。実は少し前からアンチテーゼの連中がうるさくてね……」

 

「?」

 

またもや出てきたアンチテーゼという言葉に首を捻る竜司。

 

そんな竜司に、理事長は最近アンチテーゼの一員にやられた学園の被害を竜司に話す。

 

「特に最近は学園批判をいたる所にスプレーで書きまくる“ラクガキ魔”に手を焼いているのだ」

 

「ラクガキ魔……」

 

「そう、こいつが逃げ足の速い奴で中々捕まえられん。我々としてもこのままじゃ生徒に示しがつかんだろう?そこで君をこの際厳しィィく退学にしちゃおうというわけだな。とは言え、そんな事を言っても君は納得しないだろう?」

 

「当たり前だろ」

 

少しイライラしながら竜司は即答する。

 

理事長は竜司がそう答えるのを予想出来てたのか、ニヤリと笑った。

 

「だからある条件を飲んでくれれば退学は無しにする。どうだい?」

 

「条件?条件ってなんだ?」

 

竜司にとってここを追い出されたら行くところは無い。

 

母親が音ノ木の理事長である幼馴染みのことりに話せば、便宜を計ってもらって編入できることも無くも無いが、音ノ木は女子高。

 

そんなのは竜司にとって肩身が狭くて嫌である。

 

いや、竜司でなくとも男子であれば嫌だろう。

 

なので、竜司は不本意だがこれにすがるしかなかった。

 

この条件に食い付いた竜司に満足そうな息を漏らした理事長は、条件の内容を竜司に告げる。

 

「犯人であるラクガキ魔を今日中に捕まえて、私に引き渡す。君なら楽だろう?」

 

理事長のその条件を聞いた瞬間、

 

 

 

「任せろ。一時間で終わらせる」

 

 

 

 

竜司はキリッとした顔でサムズアップし、素早く理事長室を出ていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

あれから竜司は砂埃を巻き起こす程の全力疾走で学園中を駆け回っていた。

 

ラクガキ魔がいそうなトイレ、廃校舎、物陰。

 

ありとあらゆる所を駆け回ったが、一向に見付からず、ついに竜司は屋上で膝に手をつき息切れしていた。

 

(ヤバイ!全然見つからねぇ!! このままだと理不尽な理由で退学にされちまう!!)

 

焦った竜司は挙動不審な様子で辺りを見回す。

 

「あわわわわわわわっ…!ど、どうしよう……!?」

 

そんな時だ。

 

 

 

「どうした?ずいぶん慌ててんじゃねぇか。天青竜司」

 

 

 

 

今までは居なかったのに、何故かキャップ帽を被って私服を着た青年が今は屋上の隅にいた。

 

青年は屋上の床にスプレーで何かをラクガキしていた。

 

「ひょっとして……俺達の作った新聞のせいで学園のお偉い方にでもしぼられちゃったか?」

 

「お前……まさか!?」

 

ラクガキ魔の言った言葉に竜司は目を見開く。

 

青年は“俺達の作った新聞”と言った。

 

それはつまり自分が犯人だと、彼自身から言ったようなもの。

 

それも当然の事。

 

この青年こそが新聞部を語ってラクガキしていた犯人なのだから。

 

青年…ラクガキ魔は笑う。

 

「クク……あの新聞はこのラクガキと同じさ。単純だけど情報を操作する力がある。これからもこの力でお前達全員を追いつめてやるよ」

 

そう犯行声明をしたラクガキ魔は脚を鋭いブレード状に変えた。

 

瞬間、ラクガキ魔の姿は消えた。

 

目に見えない程のスピードで竜司に迫っていたからだ。

 

鋭いブレード状に変えた脚でスケートのように滑って走り、近距離で刃にもなるこの脚で敵を切り裂く。

 

それがこのラクガキ魔の得意とする戦法で、実際ラクガキ魔も今回もこれで勝てると確信していた。

 

が、その確信は脆くも崩れた。

 

標的である竜司の姿が一瞬ブレたかと思えば、既にそこにはいなかったのだ。

 

「なっ!? あいつ何処に!?」

 

ラクガキ魔は驚き、慌てて周りを見回す。

 

(スピードで俺が負けるなんて……有り得ねぇ!!)

 

ラクガキ魔がそう思っていたその瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「罪を擦り付けた責任取れ」

 

「ぶがぁっ!!!?」

 

背後から脳天に拳骨を喰らい、ラクガキ魔はグ○コのポーズで屋上の床にめり込んだ。

 

竜司はふわりと降り立つと、ラクガキ魔を見下ろす。

 

そこに屋上の扉がバンッ!!と開き、息を切らした萌香がやって来た。

 

「竜司っ!!」

 

「萌香?なんでここに?」

 

「竜司がすごい勢いで学園内を走り回ってたから、何かあったのかなって………って、本当に何があったの?」

 

ラクガキ魔がグリ○のポーズでめり込んでる事に、目を細める萌香。

 

そこに新たな影が現れた。

 

「ご苦労だったね。竜司くん」

 

理事長だ。

 

理事長はスタスタとラクガキ魔に近づき、肩に担ぐ。

 

「約束通り、退学は無しだ」

 

「退学っ!? 竜司そんな事になってたの?」

 

「まぁな」

 

理事長の“退学”という言葉に驚いた萌香は竜司に確認するが、当の竜司はあっけらかんとしていた。

 

緊張感の“き”の字もない。

 

対して理事長は更に竜司に注文をした。

 

「それと追加注文だ。君には少々この学園のために働いてもらいたいのだが……やってくれるかね?竜司くん」

 

「えー……やだよめんどくさい」

 

「学園祭を控えて我々も何かと人手不足なのだよ。なぁに……悪い取引ではないはずだ。成功した暁には君の望む物を与えるよ?ただし断ったらまた退学だけどね?」

 

「あんた……意地が悪いな……」

 

竜司は理事長を睨む。

 

引き受ければ何でも欲しいものが手に入るが、断れば即退学。

 

どのみち竜司に拒否権はなかった。

 

「くくく……アンチテーゼって言うのは早い話が学園の敵。つまりヒーローである君にとってはまごうことなき倒す敵なのだよ。それでも君は断れるかな?」

 

更に逃げ道を絶つ理事長。

 

「ったく……やってやるよ」

 

結局、竜司はイエスを言うしかなかった。

 

「竜司………無理しないでね?」

 

「分かってるよ……」

 

心配そうに見上げてきた萌香の頭を撫でて、竜司は今日を締めくくった。

 

 

 

 




新たに高評価10を入れてくれた

ガオリさん、Kingkouさん、ゆとりエリートさん、fftghyさん、31122212さん、黒い猫さん

高評価9を入れてくれた

まりもさん、kurosuさん

誠にありがとうございます!!







感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。