動物の「多頭飼育崩壊」予防には、何が必要なのか - 「バ飼い主!」と声を荒らげる前に
SNSにしばしば流れる「多頭飼育崩壊、里親さん急募!」情報。
積極的に見たいと思っていなくても、シェア・リツイートで流れてきます。
避妊・去勢をせずに動物を飼育して増えるに任せていたら収拾がつかなくなった「多頭飼育崩壊」は、何が問題なのでしょうか?
どうすれば予防できるのでしょうか?
ああ、またもや「多頭飼育崩壊」の典型
昨日、SNS等でシェアされた情報です。
葛飾区で60匹の小型犬と暮らしていた高齢者が交通事故に遭い、後遺症が残りそうなので犬の世話ができなくなったそうです。
捨て犬・保健所で殺処分を待つ犬を引き取って育てていたものの、避妊・去勢を行っていなかったため増えつづけて60匹に達したとのこと。
おばあさんのお宅に訪問してみると、そこは推定60匹の小型犬(授乳中の仔犬8匹含む)と数羽の小鳥が家の中で育てられている壮絶な現場が待ち受けていました。
おばあさんは元々捨てられてしまった犬や保健所に預けられた犬を引取り育てていたようですが、避妊去勢手術を行わない状態で育てていたため、交配で増え続けここまでの数になってしまったようです。
まずは、犬全員・小鳥全員がシェルター等で快適に保護され、いずれは新しい家族のもとで幸せに生涯を全うすることを願います。
多頭飼育崩壊の問題点(人間にとって)
たとえば近隣に、多頭飼育崩壊のお宅があると、以下のような問題が起こります。
- 鳴き声による騒音
- 始末しきれない排泄物による悪臭
- 場合によっては病原菌や害虫の繁殖
多頭飼育崩壊しているお宅は、以下のような問題を抱えることになります。
- エサ代・ペットシーツやトイレ砂などの資材費用が膨大になること
- 住まいが排泄物や抜け毛によって不潔になり、人間の健康が損なわれること
- 動物が病気になっても必要なケアを行うのは困難であること
私は過去27年にわたり、延べ4匹(同時には最大2匹)の猫と暮らしてきましたが、一人暮らしで生涯にわたって十分に面倒を見られる限界は、同時には2~3匹程度だろうと思います。
猫はそれほど手のかからない動物ですが、それでも、です。
多頭飼育崩壊の問題点(動物にとって)
もちろん多頭飼育崩壊は、動物にとっても大変な状況であることは間違いありません。
- 十分でないスペースで、テリトリーを確保できずに生活しなくてはならない
- 十分な食糧は得られないかもしれない(ときどきあるんです。食料不足から「共食い」となるケースが)
- 不潔な環境で暮らさなくてはならない
- 生活環境によって病気のリスクが高くなりやすい
という、動物と暮らしたことがない人にも想像されそうな問題に加えて
- 近親交配が繰り返されているので、先天性の健康リスクを抱えた動物が生まれやすい
という問題があります。
特に、近親交配が多重に繰り返された幼齢・若齢の動物ほど、先天性の健康リスクが高いということになります。
多頭飼育崩壊は、当初の「捨てられてかわいそう」「殺処分かわいそう」を解決したつもりで、新たな不幸と悲しみも生んでいます。このことを忘れてはならないと思います。
我が家にも、多頭飼育崩壊の猫がいます
我が家には現在、17歳(♀)・6歳(♂)の2匹の猫がいます。
6歳の猫は、5歳のときにアニマルシェルターから迎えました。多頭飼育崩壊のお宅にいた子猫だったときアニマルシェルターに保護され、そこで育ちました。
ご縁があって我が家にやってきてから1年半がすぎ、高齢の先住猫とも大変仲良くなり、当初かなりギクシャクしていた私との関係も円満になってきたところで、後肢に運動障害が現れて歩行が不自由になり、ジャンプはまったくできなくなりました。
現在、疑いのある疾患の検査を1つずつ行っているところですが、多頭飼育崩壊の猫を多数世話してきたシェルターの方によると
「もしかすると、近親交配を繰り返して生まれた猫によく見られる進行性の麻痺かもしれない」
ということです。
まあ、何があっても、既にかけがえない家族です。もし進行性の疾患で最終的には後肢が使えなくなるのだったら、私は3Dプリンターで車椅子を作ってやりますよ。私一人でのケアが困難になったら、一人でやらなくて済むように方法を考えればいいんです。きっと、なんとかなると思います。私に「なんとかする!」という意志が裏付けとともにあるかぎり。
それでも、ジャンプが大好きだった彼が高いところに跳び上がれなくなっているのを見ると、やはり涙が浮かんできます。
先天的に健康に問題を抱えた猫が「生まれてはいけない」とは思いません。
しかし、縁あって我が家に来て、かけがえない一員となった彼には、どういう形でも、少しでも幸せな猫生を遅らせてやりたいと望みます。
障害があって悪いとは思いませんが、「本猫の大好きなことを長く楽しめる身体であってほしかった」とは、やはり思います。
「ほしかった」と過去形で語るのは時期尚早で、もしかすると治せるものなのかもしれませんけれども。
早期の避妊・去勢手術以外の対策はないのですが
多頭飼育崩壊を発生させないためには、まずは予防です。
具体的には、大きな無理なくケアできる数であるうちに、避妊・去勢手術を受けさせることです。
でも多くの場合、「必要だよなあ、そのうちに」と考え、やや手遅れになって「タイミングを逃してしまったかも」と思っているうちに、あれよあれよと増えてしまったのでしょうね。最初から「自然に任せる」と放置し、共食いが発生するまでの状況にしてしまっても平然としている人も、時々はいるようですが。
たぶん最も足りないのは、まだ2匹か3匹で
「避妊・去勢が必要だと思うんだけど、今ちょっと懐具合が」
というとき、あるいは
「ちょっとタイミング逃したかも」
という時に、費用のことも含めて相談できる獣医さんや動物愛護運動をしている誰かとの信頼関係でしょう。
社会的に孤立した飼い主が、結果として動物も自分も不幸にしてさらに社会的孤立を深めるという悪循環もあります。
「周辺の人間関係の面も含めて準備が出来てから動物を迎える」
あるいは
「動物を迎えてから早期にそういう準備をする」
を、世の中の常識にできればいいのに、と思います。一人暮らしの方は、特に。
個人的には「動物の飼育を免許制にすればよいのでは?」という思いもありますけれども。
「安易な解決は無理」という、ありきたりの結論
では、どうすればいいのでしょうか。
安易に相談窓口やシェルターの存在を公開すると、
「わがままを聞いてもらえる」
「安く避妊・去勢が受けられる」
「ウチで不要な動物を引き取ってもらえる」
と勘違いする方が必ず接触してくる、という問題が発生します。
悩ましいのは、そこのお宅にも配慮とケアの必要な動物がいるということです。
その動物は、殺処分されるところを辛うじて引き取られ、やっと新しい生活に慣れたところなのかもしれません。
なんとか、いわゆる「バ飼い主」とそこの動物の問題を分けて扱う方法はないものだろうかと、私はときどき考え込みます。
しかし結局は、分けて扱うことは無理だという結論に達してしまいます。
その動物は既に、人間の社会に組み込まれ、その一部をなしています。飼い主が「バ飼い主」であっても。
だから、分けずに周辺社会に働きかける方向こそが、本質的な解決に向かう道なのだと思うのです。
目先の問題を極めて不完全に解決しながらも、長期的には多頭飼育崩壊そのものが減るように社会教育を行い、多少とも問題ある飼い主を含む社会全体に働きかけていくしかないのでしょう。
目先の解決できない問題や救われない命に対しては、黙って「申し訳ない」と頭を下げつつも。
この、極めて煮え切らない結論が、私なりの現在の解答です。