カスタム検索
表示順:
Relevance
Relevance
Date
ウェブ
 
 
 

IBMがRed Hatの買収を発表。ハイブリッドクラウド戦略を強化

2018年10月29日


米IBMは10月28日(現地時間)、Red Hatを買収すると発表しました。買収価格は約340億ドル(1ドル110円換算で3兆7400億円)で、ソフトウェア業界としては最大規模。買収は規制当局による認可を経て2019年下半期に完了する見通し(IBMの発表Red Hatのジム・ホワイトハースト氏の公開メッセージ)。

fig Red Hatの社長兼CEO ジム・ホワイトハースト氏(写真左)と、IBMのジニ・ロメロッティCEO(写真右)

Red HatはLinuxディストリビューションベンダの最大手であるだけでなく、DockerコンテナやKubernetesなどを用いたPaaS型クラウド基盤ソフトウェアのOpenShiftを提供し、CoreOSを買収するなどコンテナ技術へも積極的に投資。

さらにサーバやネットワークなどを自動的に構成するデータセンター自動化ソフトウェアのAnsibleを買収しており、コンテナやソフトウェアとしてのインフラ構築など最新のクラウド技術を揃えたベンダといえます。

一方のIBMは2013年にSoftLayerを買収し、本格的にパブリッククラウド市場への参入を図りました。しかしAWSやMicrosoft Azure、Googleなど先行する大手クラウドベンダを上回る市場シェアを獲得できているとはいえず、2016年にはSoftLayerブランドを終了しBluemix IaaSへ変更し、その翌年にはそのBluemixブランドも終了して「IBM Cloud」へ変更するなど迷走しているように見えます。

8月に米調査会社のガートナーが発表したパブリッククラウドの市場シェア調査では、中国のAlibabaのシェアを下回る結果となっていました

IBMによるRed Hat買収は、こうしたクラウド戦略におけるてこ入れ、特にハイブリッドクラウド戦略の強化にあるとしています。下記はプレスリリースから、ジム・ロメロッティCEOによる買収理由です。

The acquisition of Red Hat is a game-changer. It changes everything about the cloud market,

このRed Hatの買収はクラウドマーケットのすべてをひっくり返すようなゲームチェンジャーだ。

コンテナ技術が普及しようとしている現在、さまざまなワークロードはコンテナ技術によってクラウド間を自由に移動可能になると考えられています。そのクラウド基盤にはKubernetesを事実上の標準とするコンテナオーケストレーション技術が使われることでしょう。

こうした技術と経験を豊富に備えたRed Hatの買収によって、IBMはハイブリッドクラウド戦略を強化できると考えているとみられます。

IBMとRed Hatは引き続きオープンソースにコミットする

買収後もIBMとRed Hatは引き続きオープンソースにコミットすると、次のようにプレスリリースで発表しています。

With this acquisition, IBM will remain committed to Red Hat's open governance, open source contributions, participation in the open source community and development model, and fostering its widespread developer ecosystem. In addition, IBM and Red Hat will remain committed to the continued freedom of open source, via such efforts as Patent Promise, GPL Cooperation Commitment, the Open Invention Network and the LOT Network.

この買収後も、IBMはRed Hatのオープンソースコミュニティと開発におけるオープンガバナンス、オープンソースへのコントリビューションと参加、そして広範なデベロッパーエコシステムを育成にコミットし続ける。
さらにIBMとRed Hatは特許、GPL、オープンイノベーションネットワーク、LOTネットワークなどを通じて、オープンソースの自由について引き続きコミットする。

Red Hatはその企業の理念からしてオープンソースにコミットしている組織であり、もしIBMがそこに手を入れるようなことがあればその貴重な人材もエコシステムも失うことになるでしょう。IBMは歴史的にもLinuxやオープンソースを支援してきた豊富な経験と知識をもっているため、この約束について疑う余地はあまりないように思われます。

タイミング良く、2週間後の11月8日には東京で「Red Hat Forum Tokyo 2018」が開催され、Red Hatのジム・ホワイトハースト社長兼CEOが来日、ゼネラルセッションに登壇予定です。日本であらためて買収の意味と今後の展望についてホワイトハースト氏自身の口から語られるかもしれません。

follow us in feedly


≪前の記事
Javaはなぜ変わらなくてはならなかったのか。JavaOne改め「Oracle CodeOne」の基調講演で語られた理由。Oracle CodeOne 2018


カテゴリ



Blogger in Chief

photo of jniino Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
詳しいプロフィール

Publickeyの新着情報をチェックしませんか?
Twitterで : @Publickey
Facebookで : Publickeyのページ
RSSリーダーで : Feed

人気記事ランキング

  1. Amazonプライムデーのサーバ障害、AmazonがOracleからAurora DBに乗り換えたのが原因ではない。Amazon CTOがCNBCの報道を否定
  2. Javaはなぜ変わらなくてはならなかったのか。JavaOne改め「Oracle CodeOne」の基調講演で語られた理由。Oracle CodeOne 2018
  3. [速報]オラクル、2019年に東京と大阪にOracle Cloudの最新データセンターを開設へ。Oracle OpenWorld 2018
  4. Angular 7正式版リリース。バーチャルスクロール、ドラッグ&ドロップのサポートなど、6カ月ぶりのメジャーバージョンアップ
  5. TerraformやVaultなどHashiCorp主要製品のアップデートが相次ぎ発表。HashiConf'18
  6. オラクルの第二世代クラウドは「突破困難な防壁」と「自律型ロボット」の2つによって守られている。Oracle OpenWorld 2018
  7. Yahoo! JAPANが指紋認証などによるログイン実現。ID/パスワードを不要にするFIDO2対応が国内でついにスタート
  8. 「Windows Server 2019」正式版がついにリリース。ハイブリッドクラウドやコンテナ機能など強化
  9. Java 11正式版がリリース、本バージョンからOracle JDKのサポートは有償に。OpenJDKで無償の長期サポート提供は現時点で期待薄
  10. 日本では「ブロックチェーン」は過度な期待、「DevOps」は幻滅期、「ビッグデータ」は陳腐化へ。ガートナーが「日本におけるテクノロジのハイプサイクル」2018年版発表


新着記事 10本


PR - Books


fig

fig

fig