大ブームとなったALSアイスバケツチャレンジ、日本では5日間で400万円の寄付が集まったそうです。

国費では他の疾患との公平性の面から不足しがちな研究費を補い、現在は手弁当で頑張っているスタッフの人件費が確保できて有効かつ長期的な活動が可能となるように、前回のアイスバケツチャレンジ(笑)に引き続き、もう一頑張りしてみることにしました。

今回は「氷を使った焼酎カクテルのレシピを開発し、ミニバケツでカクテルをいただき、レシピをALSや難病の女性患者さんたちの状況とともに書いてみるテスト」です。

焼酎カクテル「スダチとミントのモヒート風」

材料(3杯分):スダチ1個、焼酎(20度・今回は「いいちこ」麦を使用)200cc、ミント5枝くらい(葉をハサミで切り離しておく)、黒砂糖大さじ1杯、氷適量、スパークリングウォーター300cc

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ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、随意筋の萎縮と筋力低下を症状とする疾患で、治療法は確立されていません。

しかし呼吸器装着など適切なケアを行えば、20~30年の長期にわたって生存できます。

最終的には「まばたきもできなくなる」と言われていますが、脳波その他を利用した意思表示装置の開発が、近年、目覚ましいスピードで進んでいます。

QOLを保ちながらの長期生存は、年々、可能かつ容易になりつつあります。技術面では。

作り方:

  1. スダチは半分に切り、汁を絞り、実と汁から種を除去しておく(モヒートにライムの種が入ってるの、あれ嫌いです)。
  2. スダチの実を粗く刻み、ミントの葉(数枚は飾り用に残しておく)・黒砂糖・スダチの汁とともに混ぜて潰す(私はスティックミキサーを使いましたが、なければスリコギや、力があればフォークでもなんとかなるかも)。
  3. グラス(またはミニバケツ)3つにそれぞれ、2.の1/6を入れ、ついで氷を入れ、焼酎約70ccとスパークリングウォーター100ccを注いで軽く混ぜる。
  4. 各グラス(またはミニバケツ)に2.の1/6とミントの葉を適宜トッピングして、出来上がり。
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現在、ALS患者さんの生存にあたって最大の問題となっているのは、治療方法がないこと・生存やQOLの維持に有効な技術がないことではなく(技術は十分にあります)、医療や介護の確保です。

医療においては、高額療養費の自己負担額の上限が上げられる動き・難病としての経済的負担が呼吸器装着後に限定される動きなどが政府によって進められています。

介護においては、呼吸器装着後のALS患者さんたちが必要としている24時間介護を提供してきた地域は、もともと多くありませんでした。このため、地方から東京に転居してくる患者さんも数多くいます。

東京でも楽観できません。過去には24時間介護を提供していた地域でも、今後は新規の患者さんには提供しない動きが時折進められようとしていたりします。各地域で患者さんたちが抵抗していますけれども、「蟷螂の斧」というべきものかもしれません。

いずれにしても、療養生活が長期にわたると、家族だけでの介護は不可能になります。介護負担から、まあ、ぶっちゃけ、ALS患者さんに「死んでくれ」と迫る家族、あるいは呼吸器のケアをせず死なせてしまう家族の話は結構聞きます。呼吸器を止めれば、あるいは呼吸器の痰づまりをそのままにしておけば、ALS患者さんはすぐ亡くなりますから。

特に女性の患者さんに対して、「生きない」という選択が迫られる傾向は強いです。

この問題への対策の一つは、

「患者さんが世帯分離あるいは離婚を行い、単身で生活保護を利用して暮らす」

でした。

(後記:ALSや筋ジストロフィーのような難病に罹患した家族のために「世帯ごと生活保護を余儀なくされる」という場合もあります。家族の手で介護しようとするならば、家族の就労継続が大きく制約されます。貯金があったとしても、底をつくのは時間の問題です。その後は、もし家族介護を継続したいというのであれば、生活保護または無理心中以外の選択肢はなくなります。「世帯分離して患者さんだけ生活保護+公的介護サービスで24時間介護」は、生活保護を余儀なくされる人数を最小限にするためにも有効な手段です)

ALS患者さんが「生きてほしい」と望む家族に恵まれなかった場合、生活保護以外に生存の手段はないことが多いのです。

しかし、改正生活保護法で強められた「家族の扶養義務」のもとでは、離婚していようがなんだろうが、血のつながりがあれば「扶養義務がある」とされる可能性もあります。夫あるいは妻とは血のつながりはありませんが、子どもや孫に「扶養」「介護」を押し付けなくては生きていけないということにされる、ということです。

現在のところ、もし自治体がそういう運用をしようと考えたとしても、対抗する手段はなくはありませんが。

「自分は生きない」という選択を迫られる患者さんは、特に女性を中心に数多く存在しました。しかし、黙って死に、黙って殺されたので、充分に知られていません。

改正生活保護法は、そういう患者さんを増やす可能性があります。

このことに、どうぞ目を向けてください。

大変さわやかにいただけました。

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障害者になったとたんに、あるいは難病に罹患したとたんに、家族から「もう関係ないから」「ただの厄介者」という扱いを受ける方、特に女性を中心に、ALS以外にも多いです。私も同様の経験があります。

作家・大野更紗さんのご両親のように、献身的に難病の娘をケアしようとするご家族は、むしろ稀少な存在です。

このことに、今後とも引き続きご関心を向けていただければ幸いです。

参考:日本ALS協会:ALSアイスバケツチャレンジ(寄付の振込先情報もあります)