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【社説】

核廃絶と日本 被爆国の責務がある

 米国の核廃棄条約の破棄方針で、新たな軍拡競争への懸念が広がっている。唯一の戦争被爆国である日本は、この事態を静観するだけでなく、核兵器なき世界を実現するため、積極的に動くべきだ。

 トランプ米大統領が旧ソ連との中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱する方針を示したことをめぐり、来月、米ロ首脳会談が開かれる見通しとなっている。

 本当に米国が離脱し、条約が破棄されれば、米ロの核秩序が崩れる。さらに、中国も巻き込んだ核開発競争に発展する危険もある。もちろん、日本を含む北東アジアの安全保障への影響も、避けられないだろう。

 しかし、日本政府の対応は鈍い。菅義偉(すがよしひで)官房長官は会見で、破棄方針について「望ましくない」と語ったものの、トランプ大統領を説得する姿勢は見せず、あいまいな物言いに終始した。

 そもそも日本政府は、核廃絶に向けて、核保有国と非保有国との「橋渡し役」を果たすと、繰り返し表明してきたはずだ。

 安倍晋三首相は、トランプ大統領、ロシアのプーチン大統領とも近い関係だ。中国の習近平国家主席とも二十六日に会談したばかり。関係国の調整役になれる立場だが、動きは見えない。

 日本政府が二十五年続けて国連に提出した核兵器廃絶決議案も、国際社会にアピールしていない。

 米国など核保有国の賛同を得るため、核兵器を法的に禁止する核兵器禁止条約(昨年七月、国連で採択)に触れていないためだ。核兵器の非人道性に関する表現も、従来より弱めている。

 昨年も核兵器の非人道性に関する表現を弱めており、賛成は前年の百六十七カ国から百四十四カ国に減少してしまった。

 日本の決議案は来月上旬に委員会通過後、十二月上旬に総会で採択されるが、今年も、幅広い賛成を得るのは難しいだろう。

 確かに日本は米国の「核の傘」に入っている。それでも安倍首相は八月上旬、長崎、広島での平和祈念の式典で「『核兵器のない世界』の実現に向けて粘り強く努力を重ねることは、わが国の使命だ」と明言していたはずだ。

 一方、核廃絶を目指す核兵器禁止条約は、少しずつ批准国を増やしている。二〇一九年後半には、発効に必要な五十カ国・地域に達するとの見通しもある。

 日本政府は、この条約への参加も含め、核廃絶への断固とした姿勢を示し、責務を果たすべきだ。

 

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