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 米IBMは2018年10月28日(米国時間)、米レッドハット(Red Hat)を340億ドル(約3兆8000億円)で買収すると発表した。レッドハットは買収後も独立した組織として存続し、ブランドや製品ラインアップを維持するとしている。IBMは買収によってマルチクラウド戦略を強化するとしている。

 レッドハットの買収は2019年後半までに完了する予定。IBMのジニー・ロメッティ(Ginni Rometty)会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)はプレスリリースで「レッドハットの買収はクラウド市場のすべてを変えるゲームチェンジャーになる」と主張し、レッドハット買収の目的がクラウド事業の強化にあると説明した。

レッドハットのジム・ホワイトハースト社長兼CEO(左)とIBMのジニー・ロメッティ会長兼社長兼CEO
出典:米IBM
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 レッドハットはエンタープライズ市場で最もよく使われているLinuxのディストリビューション(検証済みパッケージ)である「Red Hat Enterprise Linux」を擁するほか、Javaアプリケーションサーバーの「JBoss」やコンテナ管理プラットフォームの「OpenShift」などを提供する。

 そしてレッドハットは同社が提供するオープンソースソフトウエア(OSS)のクラウドでのサポートに関して、米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)や米マイクロソフト(Microsoft)、米グーグル(Google)、中国アリババ集団などの大手クラウド事業者と提携済み。IBMはレッドハットの製品群を手に入れることで、様々なクラウドでの稼動を保証するシステムの構築が容易になる。これがIBMの言うマルチクラウド戦略の強化だ。

 レッドハットのジム・ホワイトハースト(Jim Whitehurst)社長兼CEOは「IBMの企業規模やリソースなどを活用することによって、レッドハットのソリューションをより幅広い顧客に提供できるようになる。我々のユニークな文化やオープンソースへの貢献はこれからも保ち続ける」と述べている。レッドハットのブランドや製品ラインアップだけでなく、組織や経営陣も維持される。

 レッドハットの2018年2月期通年決算の売上高は29億2046万ドル(前年同期比21.1%増)で、純利益は2億5880万ドル(同2.0%増)だった。従業員は1万2600人。IBMによる買収後のレッドハットは、IBMの「Hybrid Cloud」部門に所属する独立組織となる。AWSなどとの提携はIBMの買収後も維持する。