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電池の進化が続いている。大容量化や高出力化に適した量産レベルの多様な新材料の開発が盛んだ。2020年ごろの容量密度の目標は、既存の100~200Wh/kgから3倍前後の400~500Wh/kg。安全性を高められる電解質、電解質の全固体化で実用化しやすくなった材料、全固体化を促す材料も登場している。

 Li(リチウム)イオン2次電池の容量や出力、安全性を高める技術開発が相次いでいる。2018年2月28日~3月2日に開催された「国際二次電池展」での展示や最近の発表では新技術が目白押しだ。

 これらは数年内の量産を見据えた現実的な技術であり、着実な進化を遂げている。今後を見ると、全固体電池の実用化前にも、継続的な進化を促す技術の種が控えていることが分かる。

 電池の進化の大きな方向性には、大容量化、充放電の高レート化(高出力化)、安全性向上の3つがある(図1)。今回注目するのは、(1)大容量化につながる高電圧材料の正極への導入、(2)大容量化と高レート化をもたらすSi(シリコン)材料の負極への適用、(3)大容量化や安全性向上を実現する電解質の固体化などだ。

図1 Liイオン2次電池の高性能化と安全性向上に向けた開発トレンド
Li(リチウム)イオン2次電池を大容量化・高レート(高速充放電)化したり安全性を高めたりするための技術が、「国際二次電池展」(2018年2月28日〜3月2日、東京ビッグサイト)の展示や最近の発表で相次いだ。いずれも正極・負極材料や電解質材料を改善したもの。電解質を液体から固体にする、負極に大容量化や高速化が見込めるSi(シリコン)を導入する、などだ。負極や正極に新材料を導入する上では、充放電時にLiイオンを蓄積・解放する活物質の膨張・収縮を抑えるバインダーや、導電性を高める導電助剤の役割が重要になる。
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 Liイオン2次電池の容量は、電極を構成する「活物質」のLiイオン蓄積量、充放電レートは「電解質」でのLiイオンの移動速度や電極での電子とLiイオンの電導度などで決まる。安全性は、正極と負極の短絡による発火や、電解質材料の電解液への引火を抑制することで高める。発火や引火は、電解質を固体にしたり引火温度を高めたりして抑えられる。