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高温で冷却せずに利用可能に
(3)の電解質の新技術では、安全性を高める材料を日立製作所が東北大学 教授の本間 格氏(多元物質科学研究所)と共同開発した。引火温度を既存品の最大20℃から120℃以上に高めた。万が一、液漏れが生じても発火しにくい。安全部材や冷却部材を簡素化して電池パックとしての容量密度を向上できる。100Wh品を試作し、くぎ刺し試験で発火しなかった(図8)。
今回の電解質は、有機材料の液体である。材料開発には、コンピューターシミュレーションを駆使した(別記事の「AIで材料の探索時間を大幅削減」参照)。イオン電導性はmS/cm2オーダーで既存の電解質よりは低いが、今後、改善の見通しがあるという。正極あるいは負極との副反応を抑制させて、容量の低下を抑えた。試作品で充放電を繰り返しても理論値に近い容量を維持できたことから、副反応の発生は限定的とみられる。電解質の信頼性低下の要因となる凝集などが生じないように均一に分散させる工夫もした。
用途として、自動車のエンジンルーム内に設置する電子機器、高温での滅菌処理が必要な医療機器、気温が高くなる地域での屋外設置用蓄電システムなどへの利用を見込む。新しい電解液は、既存の電池製造工程を大幅に変更せずに適用できる。