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全固体電解質にもなる新材料

 Si負極の信頼性を新しい材料・製法で高めようとしているのが、大阪産業技術総合研究所発のベンチャー企業ATTACCATO(アタッカート)である。Siの収縮膨張による電極の劣化を抑制するバインダーの強度を高めるガラス系無機材料を開発中だ。体積変化が大きくない既存の負極用活物質(黒鉛など)向けバインダーでSi負極を実現できる。

 負極表面に新材料を浸透させて、バインダー、活物質、集電体を覆う。強固な骨格が形成され、Siの体積変化があっても電極構造が破壊しない(図6)。SiO材料に適用した例では、少なくとも300回の充放電に耐えられるという。

図6 Si負極を無機材料で高信頼に
大阪産業技術総合研究所発のベンチャー企業であるATTACCATO(アタッカート)が試作したSi負極。(a)無機材料で電極部を骨格のように覆い、Siの活物質の膨張収縮による信頼性低下を抑える。(b)骨格がなければ、活物質と集電体は1回の充放電後で剥がれていた。(c)このSi負極は既存の製造プロセスへの適用が可能。(図と写真:同社)
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 新材料が活物質を覆うため、充放電時にLiイオンが活物質と行き来できるようにイオン伝導性を持たせた。電子の伝導性はないため、原理的には電解質として機能させて全固体電池を作成することが可能だ。ただし、現時点ではイオン電導性が既存の電解質と比べてケタ違いに低く、全固体電池の作成は現実的ではないようだ。それでもイオン電導性を今後高める余地はあるとしており、将来的には実現できる可能性がある。

 なお新材料はバインダーとしても利用できる。ただし、比重が既存の有機系バインダーよりも高いため、電池が重くなってしまう。骨格として使う方がメリットを発揮できるという。