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GSユアサ、車載でSi全固体

 GSユアサは、SiをLiイオン2次電池の負極に適用して容量密度を向上する技術を開発した。SiはSiOxよりも大容量化しやすい一方、充放電を繰り返すと劣化しやすく信頼性の低下を招きかねない。特に車載用途に使うことは難しいとの見方がある。同社は、信頼性を改善するとともに、自動車向けで培った「使いこなし技術」によって、2025年ごろに車載用途へ展開する(別記事の「電池に近づくトヨタと離れるボッシュ」参照)。全固体電池への適用も可能だ。

 同社は、Siがサイクル寿命に悪影響を与えるメカニズムについて、仮説を実験で検証する形で詳細に解析。「電気化学会第85回大会」(2018年3月9~11日、東京理科大学)で発表した。解析結果から課題を緩和できる複数の技術を見い出した。これらを適用することで、2025年ごろに既存のLiイオン電池の3~4倍の容量密度が得られる新型電池実用化の見通しを得たという。

 解析したのは、負極の活物質にSi、集電体にCu(銅)箔を使った場合に、充放電を繰り返すことで充放電に寄与しなくなるLiイオンが増える現象である。解析から明確になったことは大きく3つある(図4)。

図4 Si負極の活物質の最適条件を探索
(a)(b)(c)GSユアサは、Si負極の信頼性の低下につながる原因(被膜形成、微粉化、破断)を明らかにした。その結果から、活物質とする球状Siの寸法に最適値があることを見出した。(d)2.8µmの最適寸法では、充放電サイクルを繰り返して容量低下が最も少ない。(図:同社)
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 第1は、電解液の悪影響が継続する現象。金属Siは、Liイオンを取り込んで化合物になると電解液の一部の成分と反応して被膜を形成する。被膜は、充放電によるSi(あるいはLiとSiの化合物)の体積変化で一部剥離する。露出したSiは新たに反応して被膜を形成する。Siでは、被膜形成と剥離を繰り返すうちに厚い被膜が生成されて、Liイオンが移動(Siと反応)できなくなる。この結果、充放電に寄与するSiの活物質が減ってしまう。

 第2は、金属Siの微粉化。金属Siは粒子として電極に塗布されている。このSi粒子はLiイオンの取り込みと放出を繰り返すことで体積を大きく変化させ、クラック(ひび割れ)が生じる。その繰り返しでSi粒子が細かくなる。粉々となったSi粒子の隙間のために電子伝導性が低下する。仮に充電でLiイオンを十分に移動させても、その量に対応するよりも少ない電子しか流せなくなる。

 第3は、電極構造の崩壊。集電体(Cu箔)と密に接着して電子を移動させるはずの活物質(金属Si)が剥がれてしまう。両者を接着させる目的で付加しているバインダーも破断し、集電体と活物質との間に電子が流れなくなる。