大学院へのショートカットコース ー 学歴不足を取り返したい方のために

文科省が設置を認可する大学等のほとんどに、受験資格・入学資格があります。

大学院修士課程は大学学部卒業が、大学院博士課程は大学院修士課程修了が条件です。

しかし、蓄積できなかった学歴を一気に飛び越える方法、実は結構あります。

高校と大学を飛び越えて大学院修士課程へ

私の知人の一人の実話です。

彼は工業高校在学中に担任教師と衝突したか何かで、中退してしまいました。

その後、学歴不問のプログラマの仕事を見つけて就職したものの、会社の倒産などで数回の転職を余儀なくされました。

しかし彼は、どの職場でも身につけられるものを身につけ、転職のたびに少しずつキャリアアップを繰り返していき、20年後には一部上場の大企業への転職に成功しました。ところが間もなく所属していた事業所が買収され、お決まりの人員削減が始まり、彼は精神を病んで休職に至りました。

休職中、公立大学の大学院修士課程に受験の相談をしてみたところ、過去の職歴が評価され、受験を許可されました。そして見事に合格。修了後は教育機関に正規雇用され、元気に活躍しています。

大学院修士課程を飛び越えて大学院博士課程へ

これまた、私の知人の一人の実話です。

彼女は大学を卒業後、大学での専攻と若干は関係のある職種で3年間勤務していました。そのうちに「学問として深めていきたい」という希望が高まってきました。

その分野を専攻できる国立大学の大学院教員に相談してみたところ、3年間の職業経験が「大学院修士課程修了と同等」と評価され、大学院博士課程の受験を許されました。受験して合格し、3年間の研究生活ののちに学位を取得し、現在は非常勤のかけもちながら大学に勤務しています。

「飛び学歴」は制度として認められています

どこの大学院でも、受験資格に「その他、本学が特に認めたもの」という一項があります。

これは、その大学院が特別に「インチキ」をしているというわけではなく、文科省が認めています。

文科省サイト「博士課程(後期)の入学について」を見てみると、

博士課程(後期)の入学資格は以下のいずれかに該当する方に認められます。

1 修士の学位や専門職学位を有する者(法第102条第1項)

2 外国において、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第1号)

3 外国の学校が行う通信教育を我が国において履修し、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第2号)

4 我が国において、外国の大学院相当として指定した外国の学校の課程(文部科学大臣指定外国大学(大学院相当)日本校)を修了し、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第3号)

5 国際連合大学の課程を修了し、修士の学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第4号)

5 大学等を卒業し、大学、研究所等において2年以上研究に従事した者で、大学院において、修士の学位を有する者と同等の学力があると認めた者(平成元年文部省告示第118号)

6 大学院において個別の入学資格審査により認めた者(施行規則第156条第6号)

法:学校教育法 施行規則:学校教育法施行規則

出典:博士課程(後期)の入学資格について:文部科学省

とあります(原文ママ)。「大学、研究所等において2年以上研究に従事した者で(略)同等の学力があると認めた者」「個別の入学資格審査により認めた者」に該当すれば、学歴がなくても飛び越えることは可能、というわけです。

大学院側の事情も

少子高齢化の進行により、大学でさえ定員を満たすことが困難になりつつあります。ましてや大学院は、なおさらです。文系の修士課程以上、理系でも博士(後期)過程は、「行ってもデメリットの方が大きいし」と敬遠される傾向が強くなりつつあります。

定員が満たせないと、教員数が減らされたり、その組織がお取り潰しに遭ったりとかします。

というわけで、「希望者がいたら、なりふりかまわず入学させなくちゃ」という大学院、実は結構あります。学部の偏差値やブランドによって、その「なりふりかまわず」ぶりに相当の差はありますが。

経済的支援をふんだんに用意している大学院も

特に博士課程に関しては、学費減免・多様な給付制奨学金類を用意している大学院が珍しくありません。私立の大学院の一部には、国公立より少ない経済的負担で在学できる大学院もあります。進学を検討するなら、よくよく調べてみるべきです。

ただしこの状況は、「続いても今後3年~5年程度では」と私は見ています。現在のところは一定の条件で「大学院を維持する」「大学院生を在学させる」「大学院に在学する」が大学(院)・大学(院)教員・大学院生の利益にかなう状況があるわけですけれども、その前提となっている社会状況はいつまで続くのでしょうか? 何によって続いているのでしょうか? 

やるなら今、かもしれません。秋の大学院入試シーズンは終わりましたが、1月~3月の入試シーズンがまだ残ってます。

ただし、「学歴の逆転」が目的ならオススメしません

というわけで、「大学(院)に行けなかった」に加えて「高校を卒業できなかった」あたりの学歴不足は、現在かなり逆転がやりやすくなっています。高校も大学も飛び越えて大学院修士課程を修了すれば、「大学院を出た人」と認知されますし。

ただ、何らかの実力の裏付けがなければ「カンバンだけ立派で中身のない人」と見られることになってしまうリスクもあります。すると、学歴は逆効果になってしまいます。例にあげた二人は、職業経験の積み重ねなど、実力や経験の裏付けがありました。ないのは学歴だけだったので、飛び越えが可能になり、その後のキャリアも開けたわけです。

また博士課程の場合、やることは「学び」というより研究です。研究を行って結果を出し、論文を書き、博士論文を執筆して学位審査を受けなくては学位の取得ができません。学歴を積み上げてきた人たちは、研究の方法や論文の書き方についても一応は指導を受けています。「飛び越えて」きた人たちは、欠けているそれらのスキルを自分で補うことになります。周囲の「飛び越えて」きた人たちを見ていると、それは相当高いハードルになる場合もあるようです。

しかも修士号や博士号は、具体的な何らかの「ご利益」を約束してくれるようなものではありません。他の学びにも遊びにも使うことのできる時間やお金を注ぎ込んで行うべきことなのか、現在の職業を「やめる」「減らす」といったリスクを考慮しても行うべきことであるかどうかは、冷静に考えてみたほうがよいと思います。