衆院選、まだ投票していない方々へ:第二次安倍政権下で、障害者の声は政治に反映されにくくなっている

猫の故・悠(1998-2013)、私と一緒に期日前投票に参加しました。

2014年1月、第二次安倍政権下の日本は、国連障害者権利条約を批准しました。

障害者の雇用に関する状況も、前進しているかにみえます。

第二次安倍政権下で、障害者の声はどのように政策に反映されているのでしょうか? 民主党政権下と、どのような違いがあるでしょうか?

障害者政策に関わる委員会

まず、民主党政権下と第二次安倍政権で、政策の場で障害者政策がどのように定められているか、委員会の設置状況で見てみましょう。

障がい者制度改革推進会議(2009-2012)

民主党政権下の2009年12月、内閣府は「障がい者制度改革推進会議」を設置しました。

内閣府:障がい者制度改革推進会議

この会議には、「差別禁止部会」「総合福祉部会」の部会があり、二つの重要な提言を取りまとめました。

障害者制度改革の推進のための第二次意見

障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言

しかし、同じく民主党政権下の2012年7月に解散となりました。解散となった背景には、「税と社会保障の一体改革」との関連があっただろうと私は見ています。

いずれにしても、上記の2つの提言および議論は、改正障害者基本法(2011年8月)障害者総合支援法(2012年6月成立、2013年4月施行)障害者差別禁止法(2013年6月、2016年4月より施行予定)に、極めて不完全ながら反映されています。

以上の国内法整備が一応は行われたため、本年2014年1月、日本政府は国連障害者権利条約を批准することができました。2007年に制定されて以来、「やっと」です。

ちなみに、日本人が「人権後進国」と笑いものにすることもある中国は、障害者問題に対しては動きが早く、2008年には批准しています。

障害者政策委員会(第一期(2012-2014)・第二期(2014-))

2011年8月、内閣府に「障害者政策委員会」が設置されました。内閣府によれば、目的は

「障害者基本法が平成23年8月に改正され、障害者基本計画の策定又は変更に当たって調査審議や意見具申を行うとともに、計画の実施状況について監視や勧告を行う」

です(参照)。

障害者政策委員会は、2012年より活動を開始し、2014年4月まで議論を続けていました。しかし会議開催が中断された後の2014年9月、大幅なメンバー交代(メンバーは内閣府より指名)が行われました。障害者運動界隈では、便宜的に「第一期(2012-2014)」「第二期(2014-)」と呼んでいます。

委員会のメンバー構成は?

総数では?

障害者運動界隈が最も問題としているのは、メンバー構成の変化です。

障害者政策の影響を最も大きく受ける障害者本人を抜きにした障害者政策の議論は「欠席裁判」のようなものです。少なくとも、議決に影響を与えることの可能な人数の障害者委員が参加していなければ、「欠席裁判」「結局はマイノリティの人権蹂躙」と非難されてもいたし方ないでしょう。

まず、障害者委員に占める障害者本人・障害者団体運営委員等・障害者家族の人数比を見てみましょう。

障害者制度改革推進会議 委員総数 24名 障害者委員 14名(58%)

第1期障害者政策委員会 委員総数 30名 障害者委員 16名(53%)

第2期障害者政策委員会 委員総数 28名 障害者委員 17名(60%)

いずれも障害者が過半数です。さすがに、あからさまに「障害者本人を無視」といえる状況ではありません。

ただ、障害者家族が「障害者の利益を代表する」と言えるかどうかは微妙です。障害者家族を除けば、いずれも「障害者が過半数」とは言えなくなります。

障害別の構成は?

さらに障害別の構成を見てみると、「なんで、これで『障害者の声を聞いた』と言えるのか?」というお寒い状況になっています。

身体障害者に偏っており、精神障害者・知的障害者は極めて少なかったのですが、第二期障害者政策委員会では精神障害・知的障害の障害をもつ本人が0名というお粗末ぶり。

障害者制度改革推進会議 

委員総数 24名 

うち精神障害 2名(本人1+家族会1) 知的障害 2名(本人1+育成会1)

第1期障害者政策委員会 

委員総数 30名 

うち精神障害 2名(本人1+家族会1) 知的障害 2名(本人1+育成会1)

第2期障害者政策委員会 

委員総数 28名 

うち精神障害 1名(本人0+家族会1) 知的障害 1名(本人0+育成会1)

参考:2013年の日本の障害者数(平成25年「障害者白書」による)

身体障害 366万人

知的障害 55万人

精神障害 320万人

また身体障害の本人たちに関しても、障害者運動に関わってきた団体からの委員が減少させられ、「エリート障害者」的な委員が増加しているという現象が見られます。しかしその「エリート障害者」的委員が「障害者を甘やかすな、福祉は減らしてよし」といった発言をしているわけではなく、むしろ障害者全体の状況に目配りし、利益を代表する発言をしているという現状も見られています。

民主党政権下での画期的な変化

「精神障害や知的障害の本人がいても議論はできないのではないか?」とお思いの方もおられるでしょうか? そんなことはありません。

精神障害者が知的障害を伴っていない場合、知的には健常ですから、一定の配慮のもとで、議論も立案もごく普通にできます。私は、そういう方々を何人も知っています。多くは、常識があり、周囲への配慮もおできになり、楽しくお付き合いできる方々です。

では、知的障害のある方の場合はどうでしょうか? 結論からいうと「できる」です。

障害者制度改革推進会議では、はじめて知的障害の本人が委員として参加したのですが、この時、議論に参加できるように、「イエローカード」ルールが設けられました。

この方がついていけなくなると、イエローカードを提示するのです。すると、より明快で分かりやすい言葉遣いで、説明や議論がやりなおされます。他の委員たちからも「かえって理解が深まる」と好評だったとのこと。

しかし民主党政権下では、さまざまな障害者が議論に参加できて結論の取りまとめに参画できたとしても、結論を実行に至らしめる力が政権にはありませんでした。したがって、障害者の参画は極めて不完全に終わりました。

第二次安倍政権成立後の絶望的な変化

民主党政権に対する評価は非常に難しいと思うのですが、こと障害者政策については「まだマシだった」と思っています。

第二次安倍政権下では、障害者が参加出来なくなる動きが加速されました。上記の3つの委員会は、まだマシなほうです。精神障害者に関わる施策を議論するさまざまな委員会では、

「委員25名のうち、精神障害者は1名」

といった、正直「ふざけるな!」と言いたくなるような人員構成で、精神医療(というより精神科病院経営者)の都合だけで結論が取りまとめられてしまうような事態が相次いでいます。

この問題は、あまり軽視されるべきではないと思います。

いずれは、日本の全員に影響を及ぼしうるからです。

すでに精神医療の主力は、認知症に対するものへとシフトしてきています。

つまり、現在、精神障害者に対して行われようとしている施策の数々は、近未来・将来の高齢者施策なのです。

私も、自分も生きられて前進できる将来が欲しい

今回の衆議院総選挙で、まだ投票していない方々へのお願いです。

障害者施策に関するこれらの変化を踏まえ、ただでさえ聞かれにくい障害者の声がより聞かれやすくなるように、せめて民主党政権下と同等の状況を「取り戻す」ことができるように、投票活動での選択をお考えいただけないでしょうか。

「自民党に投票しないでほしい」というわけではありません。障害者問題・難病問題・貧困問題に深いご理解をお持ちの自民党議員もいらっしゃいます。でも、今の状況では、そういう方々の自民党内での発言力は大きくありません。

「民主党ならいい」というわけでもありません。民主党政権下では、障害者政策に関して、かなり残念な変化もありました。所詮はマイノリティである障害者の問題は、やはり政争の具にされやすいのです。二人や三人の議員が頑張ったからといって、党全体、政権全体、さらに官僚を動かすのは容易ではなかった、というところです。

では、どこなら、誰ならいいのか? 私自身、結論に達しているわけではありません。ただ、その時々で、

「マイノリティの人権を無視してはならないという方向に何らかの圧力を加えられる人や政党に、少しでも力を」

という選択をしています。それが正解なのかどうかはわかりません。

障害者は、特別なことを望んでいるわけではありません。

健常者と同様に「生きる」ということのスタートラインに立ち、家庭生活・地域生活・社会生活・可能であれば就労を含めて、自分の人生を作りあげていきたいのです。

スタートラインに立ち、基本的な生活を営むにあたって、障害ゆえに背負っているもろもろがハンディキャップとならないことが必要です。介助や経済的支援は、そのためのものです。

障害者が望む障害者福祉とは、スタートラインに立つ(立ち続ける)ために必要なモノやカネや人的資源です。それを「障害者利権」と呼ばれてしまう悲しい状況が、日本には存在し続けていますけれども(もし「障害者利権!」と声を張りあげたい方は、逆に「健常者利権!」と言われたらどう思うか考えてみてください)。

以下、第二次安倍政権下で日本政府が批准した「障害者権利条約」から、関連する部分を引用しておきます。いや、どこもかしこも関連してるんですけど。

序文

この条約の締約国は、

(a)国際連合憲章において宣明された原則が、人類社会の全ての構成員の固有の尊厳及び価値並びに平等のかつ奪い得ない権利が世界における自由、正義及び平和の基礎を成すものであると認めていることを想起し、

(b)国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、全ての人はいかなる差別もなしに同宣言及びこれらの規約に掲げる全ての権利及び自由を享有することができることを宣明し、及び合意したことを認め、

(c)全ての人権及び基本的自由が普遍的であり、不可分のものであり、相互に依存し、かつ、相互に関連を有すること並びに障害者が全ての人権及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを保障することが必要であることを再確認し、

(d)経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約、児童の権利に関する条約及び全ての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約を想起し、

(e)障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め、

(f)障害者に関する世界行動計画及び障害者の機会均等化に関する標準規則に定める原則及び政策上の指針が、障害者の機会均等を更に促進するための国内的、地域的及び国際的な政策、計画及び行動の促進、作成及び評価に影響を及ぼす上で重要であることを認め、

(g)持続可能な開発に関連する戦略の不可分の一部として障害に関する問題を主流に組み入れることが重要であることを強調し、

(h)また、いかなる者に対する障害に基づく差別も、人間の固有の尊厳及び価値を侵害するものであることを認め、

第五条 平等及び無差別

1 締約国は、全ての者が、法律の前に又は法律に基づいて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認める。

2 締約国は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保障する。

日本政府が、批准した「障害者権利条約」を実現するかどうかは、政権のいかんにかかわらず、日本という国の信用に関わる問題です。

これまで築かれてきた日本の良いイメージや、日本に対する国際的信用を失わないために、「障害者政策」という側面からも、今日これからの投票行動を考えていただければ幸いです。

障害者の一人として、どうかよろしくお願いします。