内閣府「障害者差別解消法に基づく基本方針(原案)に関する意見募集について」へのパブコメ

2014年1月、日本政府は国連障害者権利条約を批准しました。

その前提として、数々の国内法整備が行われました。その一つが「障害者差別解消法」です。

この「障害者差別解消法」の施行に先立ち、内閣府の基本方針が取りまとめられようとしています。

「これが? 障害者権利条約批准の前提だったの?」

ともなりかねない基本方針の数々を解説し、さきほど送ったパブコメを公開します。

パブコメ、本日(2014年12月25日)いっぱい

こちらのページで、基本方針が公開され、パブコメも受け付けられています。

障害者差別解消法に基づく基本方針(原案)に関する意見募集について

基本方針の問題点

一言でいえば、

「せっかくの障害者差別解消法を、障害者の権利擁護にも差別解消にも約に立たないものとする基本方針」

です。

  • 法の対象範囲

事業者・障害者のみです。障害者の家族が入っていません。

  • 「差別」の範囲が狭すぎる

障害者差別解消法が定めた差別は「不当な差別的取り扱い」「合理的配慮の不提供」の2類型です。

いずれにも直接差別・間接差別・関連差別がありえます。

より被害が深刻になりやすく、表面化しにくく、対処の難しい間接差別・関連差別を、どのような類型に分離される「差別」にも含めておかなければ、法律的には差別とされない差別を奨励するものになりかねません。

  • 差別の「正当な理由」

多くの差別は「正当な理由に基づく合理的判断であり区別」という主張のもとに行われます。

現在の基本方針文案では、この「正当な理由」が「なんでもあり」です。判断基準も何もありません。障害者に対しては「説明」すればよく、理解を求めることが「望ましい」のだそうです。

何のための障害者差別解消法なのでしょうか?

  • 合理的負担が「過重な負担」となる場面

事業者は障害者に対して合理的配慮を行うことが求められますが、それが「過重な負担」である場合、合理的配慮をしなくてよいことになっています。

もちろん、実際に「過重な負担」である場合はありえます。

しかし、どこの誰が「過重な負担」であるかどうかを判断すべきかについての記述、判断が客観的に行われることを担保する記述はありません。

「過重な負担だから」と言えば済む、ということになります。

  • 「障害者差別解消支援地域協議会」は紛争解決の仕組みになりうるのか?

障害者差別は、解消する法律一つ作ったくらいでなくなりません。

当然、差別の発生も、差別の解消を求める紛争も続くでしょう。

法的手段という最終手段に訴える前に解決できれば、それに越したことはありません。

障害者差別解消法で紛争解決の仕組みとなりうるのは、「障害者差別解消支援地域協議会」です。

しかし、差別解消のために実際に機能することは、基本方針からは期待できません。

  • インクルーシブ教育・インクルーシブ社会

「障害児は特別支援学校に」は、障害者・障害児に対して社会が「慣れ」る機会を奪います。

もちろん、個々の子どもが適性や障害に応じた教育を受ける必要はありますが、別の学校・別の学級に分離する必要が本当にあるのでしょうか?

「別の学校・別の学級への分離はやめる」を原則とし、その上で、その学校・その学級のすべての子どもが適切な教育を受けられるようにすべきです。障害児教育は、その一部として考えればよいのではないでしょうか。

もちろん、成人した障害者も、「すべての者との平等」という観点から、地域生活が行えるのが「あたりまえ」になる必要があります。

この観点から、精神科の「病棟転換型居住系施設」は問題とされています。

いまのところは精神障害者の問題ですが、当初から、すべての種類の障害者たちの多くが「障害者すべてに関わる問題」と考えてきました。将来の高齢者問題でもあります。

  • 制度による障壁の撤廃は?

「障害を理由として公務員試験の受験を拒まれた」「正当な理由なく政治参加の場で補装具を使用させない」など「これを差別と言わずにどうします?」という事例は、現在も後を絶ちません。

障害者差別が解消されるための環境を整備することは、障害者差別解消法にも含まれています。「制度が障壁になっていることがある」という状況をこのままにしておいて、どういう環境整備が可能なのでしょうか?

「制度が差別的」をなくすことを明文化していただく必要があります。

私が送ったパブコメ

なにぶん論点が多すぎるので、「範囲」「差別とは」に限定して書き、2回にわけて送りました(1回あたり1000文字までなので)。

日頃の障害者施策へのご尽力に感謝申し上げます。

当方、障害者として、日常生活・社会生活・職業生活のあらゆる場面で、障害者差別と無関係でいることができません。

今回は、その立場から、意見申し上げます。

●「1 法の対象範囲」に関して

現在の案では、障害者・事業者のみが対象となっており、障害者の家族は含められておりません。

障害者の家族は、障害を持つ家族を差別する側・障害を持つ家族がいることによって差別される側のいずれともなりえます。

また、障害を持つ家族の介護・扶養を要求されることも多々あります。もし家族への愛情によって自発的に介護・扶養を行うのであるとしても、障害者本人と同等の多様な機会に関する制約が発生しうることは、否定できません。

障害者を家族とする人々は、障害者差別を行う側となること・障害者差別の一部と考えることのできる扱いを受ける側となることの何れの可能性を考えたとしても、障害者差別と密接な関係にあります。

対象範囲を、「障害者・家族・事業者」とされますよう、ご再考をお願い申し上げます。

●「2 不当な差別的取扱い」に関して

障害者差別解消法における「差別」は、「不当な差別的取り扱い」「合理的配慮の不

提供」の2類型から成っています。いずれの類型においても、直接差別・間接差別・関連差別のすべてが起こりえます。

障害者差別の解消、障害者の「すべての者との平等」、障害者を含むあらゆる人々の平等は、日本政府が2014年1月に批准した国連障害者権利条約の根幹の一つです。

障害者差別解消法は、国連障害者権利条約の批准の前提となる国内法整備の一環として成立したものでもあります。

あらゆる類型。あらゆる形態の障害者差別は、「差別」として把握し、許されないものと認識し、解消のために有効な対応を行う必要があるはずです。

しかしながら、文案を拝見する限り、

「2類型のいずれにおいても、直接差別・間接差別・関連差別を許容しない」

という考え方は明確でありません。

類型と形態にかかわらず、障害者差別を解消する方向性を明文化されますように、ご再考をお願い申し上げます。

●2-(2) 正当な理由の判断(正当化事由)

現在の文案には

「正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である」

とあります。

運用において最大の問題となるのは、「客観的に見て正当な目的」「やむを得ない」の判断がどのように行われるかでしょう。しかし、続く文言を拝読いたしましても「個別の事案ごとに」「総合的・客観的に判断」が必要であると書かれているのみで、判断基準は全く明らかでありません。さらに「正当な理由がある」と判断した行政機関および事業者は、ただ障害者に理由を説明すればよく、障害者が理解や同意を示すことは必要とされていません。

以上の記述は、

「行政機関等及び事業者は、『正当な理由がある』と判断したら、差別を行ってよい。障害者にその理由を説明すればよい。障害者の理解は得なくてもよい」

というご意図として読み取られる可能性を否定できないかと思われます。

差別は許されないことであり、許されない障害者差別を消滅させるための障害者差別解消法です。であれば、

「正当な理由があるため許容される差別」

を、限りなく広く解釈されうる例外とするのではなく、

「障害者から差別と解釈される扱い、解釈される可能性のある扱いは、すべて障害者差別である」

を大原則とするべきです。

少数ながら「客観的に見て正当な目的」「やむを得ない」と判断されうる事例は存在します。また残念ながら、「自分は障害者であり、自分の意に沿わない扱いは障害者差別である」という主張によって他者を意のままに動かそうとする障害者も、少数ながら存在します。

ですが少数ですので、個別に判断して救済すれば済むはずです。もし、そのような事例があまりにも多くなるのであれば、「障害者差別解消法が差別解消の仕組みとして機能していない」ということです。

本来あるべき姿からは、原則と例外の扱いは逆であるべきです。

全面的にご再考をお願い申し上げます。

一言でも、パブコメお願いします!

1980年代に大学生・大学院生だった私は、「男女雇用機会均等法」が制定・施行される過程をリアルタイムで見ていました。

大いに期待しましたが、限りなく事業者に甘く、女性に厳しい内容として成立しました。

批判渦巻くなかで施行された「均等法」には、もちろん、数多くの問題がありました。しかし、問題を指摘しつつ、実現されるべき方向性・現実となるべき考え方を示しつつ見守り続けた、数多くの人々がいました。

結果として、「均等法」が女性の社会進出にあたって一定の役割を果たせたことは間違いないかと思われます。

正直なところ、今回の基本方針は「均等法のときよりひどい」です。

どうぞ、皆さん、一言でもパブコメをお願いします。

障害者差別解消法に基づく基本方針(原案)に関する意見募集について