【ニューデリー=黒沼勇史】スリランカのシリセナ大統領は26日、2015年以来、連立を組んできた最大与党を率いるウィクラマシンハ首相を解任し、前大統領のラジャパクサ氏を後継の首相に据えると宣言した。ウィクラマシンハ首相は解任を無効と主張しており、解任の是非を巡り当面政局が混乱しそうだ。
シリセナ大統領は直接的な解任理由を公表していないもよう。ただ今年2月の地方選で、シリセナ=ウィクラマシンハの連立与党側が、ラジャパクサ前大統領の「スリランカ人民党」に7割の議席を奪われる惨敗となった。その後、シリセナ氏とウィクラマシンハ氏は互いの汚職や政策停滞を非難し合うなど、連立瓦解の予兆を示していた。
ラジャパクサ前大統領は05~15年に強権政治を敷き、中国マネーを用いて港湾や空港を開発し、スリランカを「債務のワナ」に陥らせた。ラジャパクサ政権で保健相だったシリセナ氏は過度な対中傾斜を批判材料の1つとして15年の大統領選で造反し、野党統一候補となってラジャパクサ氏を追い落としていた。今回、同氏を後継首相に指名したことで、スリランカの対中接近が再び加速する可能性もある。
ウィクラマシンハ氏側は今回の解任を「憲法違反」と主張し、徹底抗戦の構えを見せている。最大都市コロンボの政界筋によると、同氏は「いまも首相のままだ」と公言しており、シリセナ氏の決定の是非を巡る政治混乱が当面、深まりそうだ。