1月1日付けの「科学新聞」は、(社)先端技術生産推進機構の会長を務める西澤首都大学東京学長が提唱する「世界の電力需要は水力電力と直流送電で賄える」と提唱し温暖化問題の切り札として早期にこれを実行するよう提唱している。学長は1986年以前からこれを国内等で提唱してきており、最近台湾政府に提案した。
学長の提唱は、グローバルな提案であるが、日本国内の課題として、首都圏等人口集中地域に対する供給が重要な課題である首都圏等人口・産業集中地域に対する効率的な電力の効率的供給と地方の小規模な電力確保のための小規模水力発電の活用は興味深い対策と思う。政府の思い切った決断を期待したい。
記事の要点:
・ 1880年から1890年頃の米国における電流戦争で交流送電に負けて以来、ほとんど使われることがなくなった”直流送電”の復活と、水力発電の再活用により、エネルギー問題は解決できると、同氏は強く主張している。
・ 水力発電に必要な水の量は発電所の取水口に流れてくる分だけあれば十分です。
・ 従来から電力輸送には、送電塔に架空した電線を用いてきている。そのために、電線は細くて軽い方がいいのである。電柱にかかる負荷が少なくて、費用をかけて丈夫な電柱を建てなくても済むからである。
したがって、同じ電力を送るのなら、変圧器を使って高圧で小さな電流を送電する交流送電の方が、変圧器が使えない低電圧で大きな電流を送電する直流送電より、優っていることになる。
「ところが、交流送電にも欠点がありました。それは送電距離の限界が、せいぜい200キロメートル程度だということです。それでも交流送電の高圧電流を、家庭などで利用できるように電圧を下げる変圧器が当時すでにあったので、交流送電のメリットを優先して導入することになったわけです」。エジソンの主張した直流送電がウエスティングハウスの交流送電に負けた理由を、そう解説する。
しかし、西澤氏が開発した静電誘導サイリスタを使えば、直流を効率よく交流に変換できる。同氏は実際に1987年頃にその装置を開発し実験してみた。その結果、98%というほとんど損失のない高い変換効率で、直流から交流に変換できた。その後の追試では99%の変換効率を確認している。「エジソンの時代にはそれを簡単にできる装置がなかったわけです。いまはそれがあるわけですから、直流で伝送して交流に変換し、変圧器で電圧を変えて利用することが出来ます。直流送電は、交流送電に比べてはるかに長距離伝送できるのが魅力です。今の電線規格なら、直流を1万キロメートル送電しても損失は15%程度です。つまり交流の50倍も遠くまで運ぶことができるわけです」。さらに電線を少し太くすれば、2万キロメートルまでも可能であり、地球上のどこへでも電力を送電できるという。
そこで、この直流送電をもう一度見直して復活させ、水力発電と組み合わせれば、豊富な水力資源のある場所(国、地域)で発電した電力を、世界中の消費地に運んで使うことが可能になる。それが同氏の提唱する、温暖化とエネルギー問題解決への方法論だ。
・ 日本での直流送電導入は事例が少ない。徳島県と和歌山県の間で海底ケーブルによる送電が実施されるなど、数ヶ所で実用化されているだけである。
・ 隣国の中国が2005年に完成させた、山峡ダムから上海までの直流送電網は世界最大と言われている。「この水力発電事業には、日本企業とスウェーデン企業が応札しました。日本企業は全くやらずに入札したので負けたのです」と口惜しげに語った。
・ いま同氏は、”水力発電と直流送電による電力供給システム”を、海外にも熱心にピーアールしている。「台湾にこの間出かけて話してきました。たとえば水資源が豊富なカンボジア等に、日本が投資して水力発電所をつくり、その電力を海底ケーブルで台湾まで直流送電する。台湾で余った電力はさらに海底ケーブルで日本や中国に直流送電する。カンボジア等にとってもいい話であり、国際貢献にもなります」。」・・・「ぜひこれを、早急に検討してもらいたいと考えています。温暖化とエネルギー問題の解決策で、いま外に方法がありますか」。
|
コメント(6)
いまこそこの考えを日本も世界も実現すべきではないでしょうか、考えていけは原子力の恐怖におびえなくてすむと思います。勉強になりました。
2011/3/17(木) 午後 7:25 [ チョコミルク ] 返信する
水力発電は水路式とかダム式とかありますが、ダムの建設は大変危険なものです。死者が出ないダム建設はありません。みんなのためなら数人の作業者の命は犠牲にしていいのですか?
自分さえよければいいって人は、原発推進派の中にも水力推進派の中にもいると思いますよ。
2011/4/4(月) 午後 8:30 [ - ] 返信する
技術的にも経済的にも詳細はわかりませんが。海を越えて電気を受けたり送ったり、超スーパーグリッドでなんてすばらしい夢でないでしょうか。
Wildgoose_landさんのポイントはよくわかりませんが・・・。
2011/4/4(月) 午後 9:15 [ tsukanof ] 返信する
http://blogs.yahoo.co.jp/zaqwsx_29/29356558.html 「2030年時点で電力の60%は自然エネルギーにならなければいけない」 孫社長、スーパーグリッド構想を提言
2011/9/14(水) 午前 1:28 [ 平山 滋 ] 返信する
素晴らしい構想であると思います。エジソンの直流発電にも匹敵するものと思います。即ち、現代版のエジソンに相当するのではないでしょうか?
もし実現しますと、大きな業績を子孫に残すことが出来ると思います。
2011/9/18(日) 午後 3:19 [ 重松宏昌 ] 返信する
一昨日機会があれば西澤先生に伺ってみようかなと思っていたのですが、先生もしばらく入院されていたようでまだ完治とはいかないようで遠慮してしまいました。
2011/9/23(金) 午後 1:06 [ tsukanof ] 返信する