MRIが出現するまで

 入口紀男(熊本大学名誉教授)  上野照剛(東京大学名誉教授)





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脳のMRI画像

 磁気共鳴イメージング(MRI)の分野では、哲学者や科学者の名前のついた現象、法則、単位が多く用いられる。以下は、過去の哲学史上・科学史上の発見とMRIの歴史をたどって、ごく主要な人物に限って簡単にまとめたものである。



1093年 羅針盤の発明(沈)

  しん かつ(沈 括) (1030-1094) 沈 

 中国では磁鉄鉱が南北を指すことは紀元前(漢の時代)から知られていたが、沈は、磁鉄鉱に触れて磁気を帯びた鉄の小片を、水盤に浮かべた小舟に載せると、「北極星の北」からわずかにずれた「地磁気の北」を指すことを見出し、羅針盤を発明した。 主著 『夢渓筆談』1088-1094年

1600年 磁気学の創始(ギルバート)

  Sir William Gilbert (1544-1603) Gilbert 

 イギリスの自然哲学者。エリザベスI世の主治医。「磁気学の祖」と呼ばれる。地球が一大磁石であることを発見した。それまで方位磁針が南北を指すのは北極星に強大な磁気があるからと考えられていた。主著 De Magnete, Magneticisque Corporibus et de Mango Magnete Tellure Physiologia Nova, 1600年

1619年 線形座表系(デカルト)

  Rene Descartes(1596-1650)  Descartes 

 フランスの哲学者。数直線を負の方向に延長して負の目盛をつけて表わすことができることを発見した。すべてを疑うことから始めて明確な要素を見出し、そこから論証によって一歩ずつ全体の認識に至る方法を提唱した。それまでのスコラ哲学では、真理は伝統的に信仰によって獲得されていた。主著 Principia Philosophiae, 1644年

1665年 スベクトロスコピー・微分積分学の発見・創始(ニュートン)

  Sir Isaac Newton (1643-1727) Newton 

 イギリスの自然哲学者。ケンブリッジ大学在学中にペストの大流行で大学が閉鎖されていた頃、白色光がプリズムによって美しい虹色に分離されることからスペクトロスコピー(分光学)を創始した。そのころ万有引力の法則と微分積分学を発見創始した。光は粒子であると主張したが、一方でニュートンリングを発見し、光の波動性を認めていた。写真はニュートンの分光学の創始を称えてドイツで発行された切手である。主著 Philosophiae Naturalis Principia Mathematica, 1687年

1686年 微分記号d/dx、積分記号dxの創始、質点のエネルギー(ライプニッツ)

  Gottfried W. Leibniz (1646-1716)  Leibniz 

 ドイツの数学者。哲学者。微分記号d/dx、積分記号dxを創始した。質点のエネルギーが「質量×速度の2乗」(mv2) に比例することを発見した。

1760年 剛体の運動方程式(オイラー)

  Leonhard Euler (1707-1783)  Euler 

 スイスの数学者。自然哲学者。剛体の運動方程式を立てた。主著 Institutiones Calculi Integralis, 1770年

1785年 静電気の法則(クーロン)

  Charles Augustin de Coulomb (1736-1806)  Coulomb 

 フランスの自然哲学者。静電気の法則を発見した。

1811年 気体分子数の決定(アボガドロ)

  Amedeo Avogadro (1776-1856)  Abogadro 

 イタリアの自然哲学者。分子の概念を確立した。

1820年 電流がつくる磁界(ビオ)

  Jean Baptist Biot (1774-1862)  Biot 

 フランスの自然哲学者。F. Savartと共にビオ・サバールの法則を実験的に発見した。

1822年 フーリエ変換(フーリエ)

  Jean Baptist Joseph, Baron de Fourier (1768-1836)  Fourie 

 フランスの数学者。フーリエ級数論を発見創始した。主著 Theorie Analytique de la Chaleur, 1822年

1822年 電流磁界の法則(アンペア)

  Andre M. Ampere (1775-1836)  Ampere 

 フランスの物理学者。電流磁界に関するアンペールの法則を発見した。主著 Recueil d'observations electrodynamiques, 1822年

1831年 電磁誘導の法則(ファラデー)

  Michael Faraday (1791-1867) Faraday 

 イギリスの自然哲学者。電磁誘導の法則を発見した。1831年ヘンリーとは独立に電流の自己誘導現象を発見した。1833年電気分解に関するファラデーの法則を発見した。(肖像画出典: 英国立肖像館)主著 Experimental Researches in Electricity, 1855年

1832年 電流の自己誘導現象の発見(ヘンリー)

  Joseph Henry (1797-1878)  Henry 

 アメリカの自然哲学者。電流の自己誘導現象を発見した。1830年ファラデーとは独立に電磁誘導の法則を発見した。

1834年 電磁誘導の向きに関する法則(レンツ)

  Heinrich F. Lenz (1804-1865)  Lenz 

 ドイツの自然哲学者。電磁誘導の向きに関する法則を発見した。

1835年 エネルギーの方程式(ハミルトン)

  William R. Hamilton (1805-1865)  Hamilton 

 イギリスの数学者。自然哲学者。古典力学のエネルギーの方程式を確立した。ハミルトニアンとは、古典力学では系のエネルギーを一般化運動量の関数として表したものであり、量子力学では系のエネルギーに対する演算子のことである。

1846年 電磁気量の単位系の確立(ガウス)

  Carl F. Gauss (1777-1855)  Gauss 

 ドイツの数学者。自然哲学者。1823年統計学における正規分布の法則を確立した。ウェーバーと共に電磁気量の単位系を確立した。

1846年 電磁気量の単位系の確立(ウェーバー)

  Wilhelm E. Weber (1804-1891)  Weber 

 ドイツの物理学者。電磁気量の単位系を確立した。

1847年 熱の仕事当量(ジュール)

  James P. Joule (1818-1889)  Joule 

 イギリスの物理学者。羽根車を回して熱の仕事当量(J)の値を測定した。

1866年 自励発電機の発明(ジーメンス)

  E. Werner von Siemens (1816-1892)  Siemens 

 ドイツの発明家。シーメンス社を創業した。貴族。

1870年 均一磁界の発生(ヘルムホルツ)

  Hermann L. Helholtz (1821-1894)  Helmholts 

 ドイツの生理学者。ドイツ最初の物理学教授。ヘルムホルツコイルを創作した。

1870年 電磁波の存在を予言(マクスウェル)

  James C. Maxwell (1831-1879)  Maxwell 

 イギリスの物理学者。電磁気学を四つの方程式で表して完成した。光が電磁波であることと、あらゆる電磁波は波長こそ異なるが基本的に同じ性質をもつことを発見した。

1872年 気体分子に関する速度分布の法則(ボルツマン)

  Ludwig Boltzmann (1844-1906)  Boltzmann 

 オーストリアの理論物理学者。マックスウェル・ボルツマンの気体分子に関する速度分布の法則を発見した。ボルツマン定数 k は、気体定数をアボガドロ数で除したもの。k = 1.38x10-23 J/Kである。主著 Vorlesungen ueber Gastheorie, 1898年

1878年 電力の本格的応用(エジソン)

  Thomas A. Edison (1847-1931)  Edison 

 アメリカの発明家。1882年ニューヨークにゼネラルエレクトリック社の前身となるエジソン電燈会社を設立した。

1880年 スペクトル曲線(ローレンツ)

  Hendrik A. Lorentz (1853-1928)  Lorentz 

 オランダの理論物理学者。1892年ローレンツ収縮、1903年ローレンツ変換を発見した。電磁波の周波数分布がローレンツ曲線で表わされることを見い出した。主著 The Theory of Electrons, 1909年

1888年 光の電磁波論の検証(ヘルツ)

  Heinrich R. Hertz (1857-1894)  Hertz 

 マックスウェルの光の電磁波論を実験的に証明した。

1893年 液化ガス用の魔法瓶(デューア)

  James Dewar (1842-1923)  Dewar 

 イギリスの物理学者。液化ガスの魔法瓶を発明した。

1895年 交流発電の実用化(テスラ)

  Nikola Tesla (1857-1943)  Tesla 

 アメリカに1884年に移住したクロアチア人技術者。誘導電動機を発明した。交流送電を推進した。ナイアガラの滝で大電力発電に成功した。磁束密度 1テスラ( T) は 1 Wb/m2 である。

1895年 無線通信の成功(マルコー二)

  Guglielmo M. Marconi (1874-1937) Marconi 

 イタリアの電気技術者。大西洋を隔てて無線通信に成功した。1909年ノーベル物理学賞を受賞した。 (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1897年 歳差運動の方程式(ラーモア)

  Sir Joseph Larmor (1857-1942)  Lamor 

 イギリスの理論物理学者。クィーンズ大学在職中に、電子が回転しているとき磁場が加えられると歳差運動を行うことを発見した。

1900年 量子論の創始(プランク)

  Max Planck (1858-1947) Planck 

 ベルリン大学在職中に、ある発振子のエネルギーは不連続に飛び飛びの値をとり、特定の値の整数倍となると仮定してその特定の値を量子(quantum)と呼んだ。1918年ノーベル物理学賞を受賞した。プランクの定数 h = 6.63×10-34 Js (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1905年 相対性理論(アインシュタイン)

  Albert Einstein (1879-1955) Einstein 

 スイスのベルン特許局在職中に1905年特殊相対性理論を発表。1916年ベルリン大学在職中に一般相対性理論を発表した。特殊相対性理論の帰結としてエネルギーが「質量m×光速cの2乗」(mc2)であることを見出した。周波数νの光子(photon)の運動量が「hν/c」であることを見出した(光量子仮説)。1921年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1911年 超伝導現象の発見(オネス)

  Kamerlingh Onnes (1853-1926) Onnes 

 オランダの物理学者。1908年ヘリウムの液化に成功した。水銀の超伝導現象を発見した。1913年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1924年 スピニングの発見(パウリ)

  Wolfgang Pauli (1900-1958) Pauli 

 スイスの理論物理学者。24歳のとき核の旋回(スピニング)の概念に想到した。パウリの原理を発見した。1945年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)主著 Die Allgemeine Prinzipien der Wallenmechanik, 1926年

1925年 マトリクス力学(ハイゼンベルグ)

  Werner K. Heisenberg (1901-1976) Heisenberg 

 ドイツの理論物理学者。マトリクス力学を創始した。たとえば、スピンのもつ角運動量 の時間変化は古典力学では d /dt = μ × と表されるが、統計的に振舞うスピンの運動もマトリクスを用いてd /dt = - / 2π)[,]と表され( はハミルトニアン)、古典力学と同型の方程式に従う。同年、不確定性原理を発見した。原子よりも小さな粒子の位置と運動量は同時には一意に定まらない。1923年ノーベル物理学賞を受賞した。 (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館主著 Die physikalischen Prinzipien der Quantentheorie, 1930年

1926年 波動カ学(シュレーディンガー)

  Erwin Schroedinger (1887-1961) Schroedinger 

 ドイツの理論物理学者。オーストリアの生まれ。量子力学の一形式である波動力学を創始した。この理論とハイゼンベルクのマトリクスカ学によって量子力学の基礎が確立された。1933年ノーベル物理学賞を受賞した。 (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館主著 Abhandlungen zur Wellenmechanik, 1927年

1937年 磁気モーメントの測定(ラビ)

  Isidor I. Rabi (1898-1988)  

 アメリカの物理学者。幼少時にオーストリアより移民。塩化リチウムについてリチウム核(7Li)の磁気モーメントを測定した。1944年ノーベル物理学賞を受賞した。 (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1945年 核磁気共鳴のエネルギー吸収実験(パーセル)

  Edward M. Purcell (1912-1997)  Purcell 

 アメリカの物理学者。イリノイ州の生まれ。1945年12月半ばにハーバード大学でトリー(H. C. Torrey)、パウンド(R. Pound)と高周波ブリッジを作成し、近くで購入した 830 ml のパラフィンワックスを試料として、0.7 T の磁場と 29.8 MHzの高周波を用いてエネルギー吸収の形でプロトンの核磁気共鳴の実験に成功した。ブロッホよりも2週間早い実験であった。"We have observed the absorption of radiofrequency energy due to transitions in a solid material."と述べて同年クリスマス前日にPhysical Review誌に投稿した。1 信号の S/N 比は約 20 であった。1952年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1945年 核磁気共鳴の電磁誘導実験(ブロッホ)

  Felix Bloch (1905-1983)  Bloch 

 アメリカの物理学者。ライプチヒ大学でハイゼンベルク研究室の助手を勤めた。スイス国籍を持っていたが、1933年ヒットラーを逃れてドイツよりアメリカヘ移住した。スタンフォード大学で中性子の磁気モーメントを測定した。戦後の研究費として支給された$450のうち$300でオシロスコープを購入した。スクラップで測定装置を作り、1945年12月末にハンセン、大学院生パッカード(M. E. Packard)と、ガラス球に入れた0.1mlの水を磁極の間に置き、7.8MHzでプロトンの核磁気共鳴の実験に成功し、「核の誘導(nuclear induction)」と呼んで1946年1月にPhysical Review誌に投稿した。2, 3 T1、T2 に関するブロッホの方程式を発表した。4 1952年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1949年 自由誘導減衰(FID)信号の観測とエコー信号の発見(ハーン)

  Erwin L. Hahn (1921-2000)  Hahn 

 アメリカの物理学者。1944年ロスアラモスのマンハッタン計画にいったん採用されたが、戦時下結婚している学生には官舎を提供できないという理由で不採用となり、海軍に徴兵された。戦後イリノイ大学で核磁気共鳴の研究を始め、1949年6月スピンの傾きに関する研究で学位を取得し、研究助手として残った。同年8月水とグリセリンのT1を測定していたとき、オシロスコープのスクリーンに自由誘導減衰(free induction decay, FID)信号を最初に観測し、それをハーバード大学からイリノイ大学に赴任したスリクター(C. P. Slichter)が見届けた。これは当時としては困難な技術で、ハーバード大学のトリー(H. C. Torrey)も "No one has yet observed free precession signals."と述べていた。また、そのとき二つの90°パルスによって「小うるさいアーチファクト(annoying glitch)」が現れることを発見し、スピンエコー(spin echo, SE)と命名した。5 しかし、そもそもいったんバラバラとなったスピン集団が再収束してエコー信号を発生するという考えは、当時熱力学の第二法則に反すると考えられた。翌1950年にハーバード大学の大学院生カー(Herman Carr)とパーセルによって90°-180°パルスのスピンエコー(SE)信号が観測された。ハーンによる FID 信号の観測とエコー信号の発見は、その後 1960 年代から本格化した NMR の普及発展と、さらに 1970 年代から立ち上がった MRI の普及発展に照らしても真に意義が大きい。(肖像写真出典: European Magnetic Resonance Meeting

1950年 化学シフトの理論(ラムゼー)

  Norman F. Ramsey (1915-2011) アメリカの物理学者。化学シフトの理論を確立した。1989年ノーベル物理学賞を受賞した。ハーンの発見したスピン再収束の概念が熱力学の第二法則に反するという疑問を1956年「負の絶対温度(negative absolute temperature)」の概念によって解決した。6

1956年 フーリエ変換NMRの発明(バリアン)

  Russell H. Varian (1898-1959) アメリカの発明家。起業家。1937年スタンフォード大学でハンセン(W. W. Hansen)とクライストロン真空管を発明した。1948年弟バリアン(S. Varian)、ハンセン、ギンツトン(E. Ginzton)らとカリフォルニア州サンカルロスに資本金$22,000でバリアンアソシェーツ社を創業した。1948年10月に特許"Method and means for correlating nuclear properties of atoms and magnetic fields"を出願し、その中でハーンよりも早く FID 信号をとらえる手段を記載していた(米国特許第2,561,490号, 1951 年)。1953 年 NMR の最初の商用機 HR-30 を開発した。「NMR」という語を最初に用いた。1956年10月に特許出願した"Gyromagnetic resonance methods and apparatus"には最初のフーリェ変換NMRの概念と手段を記載していた(米国特許第3,287,629号, 1966年)。

1964年 フーリエ変換NMRの実験(エルンスト)

  Richard R. Ernst (1936- ) スイスの物理学者。1962年バリアン・アソシェーツ社に技術者として採用され、1964年にアンダーソン(Weston Anderson)とフーリェ変換NMRの実験に成功した。7 パンチカード式のコンピューターIBM7090を用いた。1968年スイスに帰国。チューリヒ連邦工科大学で二次元フーリエ変換スペクトロスコピー("Two-dimensional gyromagnetic resonance spectroscopy"米国特許第4,045,723号, 1977年)、フーリエ変換イメージング法("Gyromagnetic resonance Fourier transfom zeugmatography"米国特許第4,070,611号, 1978年)、多量子NMR("Selective detection of multiple quantum transitions in nuclear magnetic resonance"米国特許第4,134,058号, 1979年)を発表した。1991年ノーベル化学賞を受賞した。

1970年 腫瘍組織のT1、T2測定(ダマディアン)

  Raymond V. Damadian (1936- ) Damadian 

 アメリカの医学者。起業家。読み書きを教わった祖母が10歳のとき癌で壮絶死したことにより癌に大きな関心をもつ。バイオリンの才能を顕わしてジュリアード音楽院に進んだが、医学に転向してアルバート・アインシュタイン医科大学を卒業した。ニューヨーク州立大学在職中に腫瘍組織のT1、T2 値が正常組織の値より非常に長いことと、正常組織でも値が組織によって大きく異なることを発見した。8  NMR を臨床診断用の断層撮像装置に応用することを着想し、1972 年に特許出願明細書の中にその概念を最初に記載した。9  1977 年 whole-body 装置を試作して撮像に成功した。1980 年最初の商用機 QED80 を北米放射線学会(RSNA)に展示した。永久磁石方式であった。ダマデイアンの試作1号機はワシントンのスミソニアン国立博物館に永久展示されている。(写真はダマディアンと試作一号機 出典: Smithsonian Magazine)

1971年 生体の局所NMR(阿部)

  阿部善右衛門 (1914-1999) 非線形勾配磁場を用いた磁場焦点法を1971年までに創案した。北海道大学応用電気研究所在職中に大学院生田中邦雄らと磁場焦点法を用いた生体の局所NMR信号取得法を米国特許出願明細書に記載した。10

1972年 水信号画像(ロウターバー)

  Paul C. Lauterbur (1929-2007) Lauterbur 

 アメリカの化学者。ニューヨーク州立大学在職中に、1972 年 NMR のバックプロジェクション再構成法を独自に着想して、二本の 1 ミリ径の細管中の水のプロトン信号のコンピューター画像を取得し、磁気共鳴イメージングを"zeugmatography"と命名して同年10月にイギリスの「Natue誌」に投稿した。11 2003年ノーベル医学生理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1978年 エコープレイナーイメージング法(マンスフィールド)

  Sir Peter Mansfield (1933-2017)   

 イギリスの物理学者。Pykett I. L. と共に高速イメージング法であるエコープレイナーイメージング(EPI)法を開発した。12 1990年代に MRI のハードウェア技術が急速に進歩し、臨床用に実用化されるに至った。2003年ノーベル医学生理学賞を受賞した。 (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館

1979年 フィールドエコーイメージング法(ハチソン)

  James M. S. Hutchison (1942- ) イギリスの物理学者。1978年アバディーン大学で極めて単純なフィールドエコーイメージング法を創始した。13 エデルシュタイン(W. Edelstein)、ジョンソン(G. Johnson)、マラード(J. Mallard)らとスピンワープイメージング法を開発した。14

1989年 ファンクショナルMRI(小川)

  小川誠二 (1934- ) 血液中のヘモグロビンが酸素との結合によって磁気特性が変化することに着目し、生体の活動領域で血流が増加する際のデオキシヘモグロビンの相対的濃度低下をMRIで描出することができることを示し、BOLD(Blood Oxygenation Level Dependent)効果と呼んだ。15



参照文献

  1. Purcell, E. M., Torrey, H. C., and Pound, R,V., "Resonance absorption by nuclear magnetic moments in a solid." Phys. Rev. 69: 37-38, 1946
  2. Bloch, F., Hansen, W. W., and Packard, M., "Nuclear induction." Phys. Rev. 69: 127, 1946
  3. Bloch, F., Hansen, W. W., and Packard, M., "The nuclear induction experiment." Phys. Rev. 70: 474-485, 1946
  4. Bloch, F., "Nuclear induction." Phys. Rev. 70: 460-474, 1946
  5. Hahn, E. L., "Spin echoes." Phys. Rev. 15: 580-594, 1950
  6. Ramsey, N. F., "Thermodynamics and statistical mechanics at negative absolute temperature," Phys. Rev. 103: 20, 1956
  7. Ernst, R. R. and Anderson, W. A., "Application of Fourier transfom spectroscopy to magnetic resonance." Rev. Sci. Instrum. 37: 93-102, 1966
  8. Damadian, R., "Tumor detection by nuclear magnetic resonance." Science 171: 1151-1153, 1971
  9. Damadian, R., "Apparatus and method for detecting cancer in tissue." 米国特許第3,789,832号, 1974
  10. Abe, Z., Tanaka, K., Hotta, M. and Imai, M., "Method of obtaining internal information of measuring target from the out-side by the application of a nuclear magnetic resonance phenomenon." 米国特許第3,932,805号, 1976
  11. Lauterbur, P. C., "Image formation by induced local interactions:examples employing nuclear magnetic resonance." Nature 242: 190-191, 1973
  12. Mansfield, P and Pykett, I. L., "Biological and medical imaging by NMR." J. Magn. Reson. 29: 355-373, 1978
  13. Hutchison, J. M. S., Mallard, J. R., Sutherland, R. J., "Method of deriving image information from objects.''米国特許第4,290,019号, 1981
  14. Hutchison, J. M, S., Edelstein, W. A. and Johnson, G., "A whole-body NMR imaging machine." J. Phys.E)13: 947-955, 1980
  15. Ogawa, S. Lee, T. M., Kay, A. R., Tank, D. W., "Brain magnetic resonance imaging with contrast dependent on blood oxygenation." Proc. Nat'l Acad. Sci. USA)87: 9868-9872, 1990