9月下旬から一か月。いまだにトレンドマイクロ社のアプリは「App Store」には表示されません。
この一週間ほど、この問題に切り込んでいた高木浩光氏のTwitterアカウント(@HiromitsuTakagi)が一時凍結されていたため、ネット民の温度感が下がってしまったようですが、事実が消えたわけではありません。

今北産業という人のために、下記、三行にまとめますと、
  • アンチウィルスソフト、インターネットセキュリティソフトで有名な『トレンドマイクロ社』が、自社アプリケーションにて本来不要な「Webブラウザーの履歴収集および送信」をおこなっていた。
  • 9/12の『macOS、iOS向け当社アプリに関する重要なお知らせ』や10/5の『App Store上の当社アプリに関する進捗状況について』というごちゃごちゃ言い訳が書かれた公開文書は、情報収集と送信を重篤な問題と認識した上でそれを謝罪している文章ではなかったことが問題視され、20日ほど経った10/24時点での『App Store上の当社アプリに関する重要なお知らせ』で、少しお詫びしている風合いが漂う文章が掲載された。
  • そもそもiOSにインターネットセキュリティソフトウェアが必要なものなのかどうかも問われており、いわゆる情報弱者向けビジネスだったのではないかという観点や、トレンドマイクロ社製アプリの挙動により他のアプリケーションの動作が阻害されているのではないかという観点もある。
「インターネットセキュリティを担う企業が、利用者のセキュリティを積極的に損ねている」という点で、由々しき問題だと思うのですが、なぜか今一つ話題の温度感が低いです。

例えばブロッキングの是非のときは、攻守ともども尖ったキャラクターが激論を交わしつつ痴態を見せつけ、大手通信業者がフライングブロッキング宣言したり、知的財産戦略本部での有識者会議「海賊版対策タスクフォース」では特徴的な発言が飛び出していることが報道され、政財界の闇がそもそもあるのではないかというミステリー風味なところもあって役者も舞台も揃っておりました。

ですが今回は、トレンドマイクロ社のリリースも20日に1回ペースという面白さで、暖簾に腕押し感が漂っています。いまどきスマホゲームの不具合メンテ告知だって時間単位だというのに、何をやっているのでしょうか。

世間が忘れてくれるまで待とう、とでも言わんばかりですが、でも忘れません。ぼくは忘れません。例えば、MERYやWELQがした、ネットメディアが地に落ちたあの瞬間のことを今でも忘れません(唐突に無関係な他社問題を蒸し返して紛れ込ませるスタイル)

下馬評レベルの話でお耳汚し申し訳ないですが、トレンドマイクロ社は多くのメディアのスポンサーとなっているから追及しづらいのではないか、とか、大手通信事業者や官公庁へサイバー入れ知恵役をやっているからお咎めも無いのではないか、というようなことが囁かれています。まったく事実無根だとは思いますが、こう、もっと炎上には躍動感が欲しいものです。わかりやすい悪役も欲しいです。

「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ」を、我々は見たいんです。トレンドマイクロ社におかれましては、何の論をぶつけても無駄そうなサイコパス感ある広報さんを立てるなどの対応を早急にしていただきたいと思います。こっちからぶつけるバケモンは、読者のみんなはもうわかってるね!(誰だよ

……ってことをずっと書きたかったんだけど、ブロッキング論者を社長に据えるKADOKAWAグループの小説投稿サイト「カクヨム」主催かつ、渦中のトレンドマイクロ社が協賛している『サイバーセキュリティ小説コンテスト』に応募してたんで、書けませんでした。

だって「ゴチャゴチャ言ってくるヤツ」って思われて小説が選外とかになったらイヤじゃん。

ブロッキング推進もWeb閲覧履歴の収集や送信もそれだけで十分「サイバーセキュリティ」の題材としてはオイシイ感じするんですが、そういった内容に切り込んでいる小説は、果たして選ばれたんでしょうか、興味深いです。(他人の書いた小説まったく読まないマンなので未見です申し訳ない)

というわけで、今回の『サイバーセキュリティ小説コンテスト』の中間発表では惜しくも選外となってしまいましたが、2018年度上半期のネットの話題テンコ盛りのサイバーセキュリティ小説を公開しておりますので、どうぞお読みください。

小説『ブロックチェーン・ゲーム』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885296473

※加筆修正版をKindleで販売するため準備中です。無料公開バージョンということで、ブロッキング論者を社長に据えるKADOKAWAグループの小説投稿サイト「カクヨム」にて公開しております。