シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる 作:須達龍也
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謝罪は聞き入れない。言い訳には激怒。
小説版では、フォーサイトは詰んでますね。
「待っていたでありんすよ」
その言葉は心の底から出た思いだった。
温情を特にかけて頂いていたのに、恐ろしい早さでマイナスポイントが積み重なっていくので、急いでこちらに来てもらうようになんとか仕向けた。
アルシェはまだ余裕があったんだけど、あのハーフエルフは口が悪すぎだ。アルシェさえ助けられればいい気もするけど、まあ、せっかくだし。
「とりあえず、自己紹介を。妾はシャルティア・ブラッドフォールン。アインズ様より特別にお前たちの出迎え役を任されたでありんす」
スカートをつまんで、優雅にお辞儀をしてやった。
「ご丁寧な自己紹介ありがとうございます。こちらもしたいところですが、まずは謝罪をさせて頂きたい」
リーダーらしき人物がそう言ったあとパーティに目配せをすると、一斉にその場で土下座をした。
「「「「申し訳ございませんでした」」」」
声と姿勢をそろえたそれは、なかなか綺麗な土下座と言っていいだろう。観覧席からご覧になられているアインズ様も、満足そうに頷いているので、ホッとする。
「いいでしょう。謝罪を受け入れましょう。お前たちは盗掘もしていないので、アインズ様も特別に許してやろうと仰せです。ありがたく思いなさい」
「「「「ありがとうございます」」」」
土下座のまま、もう一度頭を下げてくる。アインズ様に温情をお願いしたわたしの立場的にも、好感の持てる対応と言えよう。
「謝罪は受け入れました。もう土下座は結構でありんす」
「わかりました」
妾の許しを受け、アルシェのチームの面々が立ち上がる。
「こちらの勝手な都合で足を踏み入れたにも関わらず、寛大なる許しを得ることができ、本当にありがとうございました」
リーダーが代表して、もう一度礼を言ってきた。うんうん、見苦しく言い訳するよりも、素直に謝るのが一番よ。
「シャルティア様はこの墳墓の主の奥方様でありましょうか? ご主人様にも我々のお礼をお伝えいただきたい」
「まあ!」
なんといいことを言うのでしょう!
「お前、お前の名前は何と言うのかしら」
「はっ、ヘッケランと申します」
「いいです、いいですよ、ヘッケラン! 妾はアインズ様の奥方と言っても過言ではないと言っていいでしょう」
観覧席から、いいわけあるかとか、マイナス一点、いや十点だとか騒いでいる大口ゴリラがいるが、完全無視に決まっている。
「アインズ様より特別に許可を頂いております。お前たちはこの階層に家を設けてやりますので、そこに住まうことが許されました」
気分も良くなったわたしは、アインズ様からの特別な大奮発を教えてあげた。
「…えっ?」
「ん? どうかしたでありんすか?」
泣いて感激するかと思ったら、意外な反応だった。
「あ、いえ、我々のような無礼者、早々と出ていけと言われると思ったものですから」
ヘッケランとやらが、にこやかに笑って、その反応の意味を答えてきた。それは実に納得の行くものだった。
「ああ、なるほど。なかなか身の程をわきまえているでありんすな。それは実に良いことでありんすよ」
わたしはうんうんと頷きながら、そう褒めてやる。
「まあ、住まうことが許されたと言っても、ずっとと言うわけにはいかないでありんすがね。数か月と言ったところかしら?」
「ああ、そうですか、了解致しました」
ヘッケランが残念そうと言うよりは、ちょっとホッとしたように見えたが、気のせいよね。
「…数か月…そんな、困る…」
「あぁ?」
ふざけたことを口走る奴がいると目を向けたら、それはアルシェだった。
「困るって、どういうことでありんすかね?」
いかにアルシェとは言え、アインズ様の寛大なるご処置に文句を言うというなら、ただではおかない。
「申し訳ございません、奥方様。この娘、アルシェには少々家庭の事情がございまして、決してご主人様の寛大なる処遇に不満というわけではございません」
「ふむ、家庭の事情ね」
うん、奥方様、実にいい呼称ね。
「はい。こちらのアルシェには妹達がいるのですが、その子達のことでアルシェだけは家に少しだけ帰る許可を頂きたくお願い致します」
そう言われて、アルシェの家庭の事情を思い出す。
「そう言えば、妹達が邪教集団に売られてしまうんだっけ?」
「なっ!?」
「あれ、違ったっけ?」
アルシェが驚いたので、記憶違いだったかと思い直す。
「さすがに、そんなことには…と、思いたい」
アルシェが顔面を蒼白にさせながら、ボソボソとそう言った。
「妹達を引き取りたいのかしら? 妾はある程度お前たちの処遇についての裁量権を頂いているでありんす。いいでありんすよ、迎えに行っても」
「……お願いします」
いろいろと考えたうえで、アルシェがそう答えた。
「…ならば、私が<転移門>を繋いでやろう」
観覧席からフワリと舞い降りて、アインズ様がそんな寛大なお言葉をかけてくださった。
「まことにありがとうございます」
片膝をついて、礼をする。
横目で見るとボケっとアルシェが突っ立っていたので、ギンと睨み付けてやると、慌てて両膝をついて礼をした。
「帰りはお前の<転移門>で帰ってこい。…そうだな、地上に人間共がいるから、直接戻ってくるほうがいいな」
アインズ様がそうおっしゃって、虚空に手をつっこまられる。
「特別に”リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン”を貸し出しておこう。保護が済めば即座に転移し、返却するのだぞ」
「あ…ああ…ありがとうございます!」
これでもかとアルベドに、そして何気なくマーレに自慢されていた指輪をうやうやしく受け取る。
「ああっ! どうしましょう!!」
「な、なんだ! どうした!?」
「左手の薬指には、既にアインズ様から頂いた探知阻害の指輪を装備しておりました! どこに装備すれば!!」
「…その指輪も、あくまでも貸し出しているだけだからな」
「と、とりあえず、こっちの指輪を外して…」
「…おげぇぇぇぇ!」
妾が指輪を外すと、いきなりアルシェが吐いた。きったねー。何気にこっちのアルシェは妾からの好感度が駄々落ちだ。
「…そっちの指輪も、念のためにつけたままにしておけ」
アインズ様のお言葉を受け、左手の人差し指に付け直す。
「…しゃ…シャルティア様は、魔力系の魔法詠唱者?」
「…ん? 信仰系でありんすが?」
「魔力系でないのに、あの魔力量…とんでもない…」
ああ、そういえば使える魔法の位階がわかるとか言ってたっけ? …吐くとは聞いてなかったけどね。
「では、帝都の上空に繋げるぞ」
慌てて左手の薬指に”リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン”を付けると、アルシェへと手を差し出す。
「さ、行くわよ、アルシェ」
シャルティア様の好感度
ヘッケラン ↑(ティロリン)
イミーナ ↓(デロロン)
ロバーデイク →
アルシェ ↓(デロロン)