連続郵便爆弾、米フロリダ州で56歳男性を訴追 オバマ氏などに送付の疑い
米捜査当局は26日、ドナルド・トランプ米大統領を批判してきた民主党要人や著名支持者に爆発物のようなものが入った小包を相次ぎ郵送した疑いで、フロリダ州在住の56歳男を逮捕・訴追した。
捜査当局によると、訴追されたのはシーザー・セヨク容疑者。爆発物の郵送や大統領経験者への脅迫など、5件の容疑がかけられている。
米報道によると、セヨク容疑者はフロリダ州プランテーションの自動車部品店で逮捕された。
連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は、届けられた小包に付いていた指紋などから、容疑者を特定したと明らかにした。
パイプ爆弾と見られるものなどが入った小包はこれまでに、14個発見されている。
22日から25日朝にかけて、民主党に高額献金をしている世界的投資家のジョージ・ソロス氏、ヒラリー・クリントン元国務長官、バラク・オバマ前大統領、CNN気付でジョン・ブレナン元中央情報局(CIA)長官、エリック・ホルダー元司法長官、民主党のマクシーン・ウォーターズ下院議員(カリフォルニア州選出)に2つ、ジョー・バイデン前副大統領に2つ、俳優ロバート・デ・ニーロ氏にそれぞれ関連する場所に送りつけられた。
さらに26日には、CNN気付でジェイムズ・クラッパー前国家情報長官、民主党のコーリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州選出)とカマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州選出)、カリフォルニア在住の億万長者で民主党支持者、トム・スタイヤー氏に、同じような包みが届けられ、回収された。スタイヤー氏に届いた小包は、逮捕容疑に含まれていない。
小包はどれも爆発しなかった。
ジェフ・セッションズ司法長官は記者会見し、容疑者が有罪となれば禁錮48年の実刑判決を受ける可能性があると述べた。
「このような無法行為、特に政治的な暴力はいっさい容認しない」とセッションズ長官は強調した。「政治信条がなんであれ、これを教訓としてもらいたい。このようなことをする者は、法のあらゆる力を使って全力で裁く」。
トランプ大統領は、郵便爆弾は「唾棄(だき)すべき行為で、この国であってはならない」ことだと批判したが、自分のこれまでの発言は事件と無関係だと強調した。
過去にも爆弾で脅迫
捜査当局によると、セヨク容疑者はフロリダ州アベンチューラ在住。共和党員として登録しているという。
2002年には、同州マイアミデード郡で爆弾による脅迫事件を起こし、執行猶予1年で有罪となった。
1991年には同州ブロワード郡では、窃盗容疑で逮捕されたほか、詐欺や暴行で訴追された。
裁判所資料によると、容疑者は母親と同居していた2012年に自己破産を宣告した。破産申請書には手書きで、「母親と同居。家具なし」と書かれている。
1980年にはノースカロライナ州のブレバード・カレッジで一時期学んだが、卒業はしなかったと大学広報がBBCに明らかにした。
容疑者逮捕の後、複数の米テレビ局は、セヨク容疑者所有とされる白いバンが運ばれる様子を中継した。バンの窓にはトランプ氏を支持する多数のポスターや写真などが貼られ、トランプ大統領が戦車の上に立つ姿のものもあった。同時に、クリントン氏や映画監督マイケル・ムーア氏など、トランプ氏に批判的な人たちに銃の照準線があてられた画像もあった。「CNN最低」と書かれ、照準線があてられた画像も貼られていた。
ツイッターとフェイスブックは、容疑者のものとされる「シーザー・アルティリ」と「シーザー・アルティエリ・ランダッゾ」という名前のアカウントを削除した。
トランプ大統領は
ホワイトハウスでのイベントに出席していたトランプ大統領は、容疑者逮捕を受けて、捜査当局の速やかな捜査と逮捕を称賛し、「恐怖を与えるこのような行為は唾棄すべきもので、この国にあってはならない」と述べた。
対照的にトランプ氏は同日朝にはツイッターで、「期日前投票と世論調査で共和党は絶好調なのに、この『爆弾』騒ぎが起きて、勢いがすごく失速した。ニュースは政治の話をやめたし。すごく残念だ。共和党員、さあ投票して!」と、11月6日の中間選挙での支持を呼びかけていた。ツイートでは「”Bomb"」と「爆弾」に引用符を付けることで、本物かどうかに疑問を示したと受け止められている。
トランプ氏は同日夜にノースカロライナ州で開いた支援者集会でも、自分のこれまでの発言と郵便爆弾は無関係だと強調した。
ただし、容疑者は自分の支持者だと聞いたと認めた。
郵便爆弾が送りつけられた全員が、トランプ大統領を声高に非難してきた。
その1人のクラッパー前情報長官は容疑者逮捕後、CNNに対して、「これは間違いなく国内テロだ。私には疑いようもない」と述べ、トランプ氏を批判してきた人は誰もが警戒を高め、特別に注意する必要があると促した。
事件については、トランプ氏がこれまで政敵に対する暴力を扇動してきた結果だと非難する声がある。一方で、トランプ氏の支持者の間では、爆発物の送付は11月6日の中間選挙を前にした民主党の工作だという憶測も飛び交った。
<関連記事>
- 「起きろよグロッキー!」トランプ氏、俳優デ・ニーロ氏の批判に応酬
- 記者を「国民の敵」と呼ぶべきでない NYタイムズ社主、トランプ氏に
- 「代わりの事実」から歴史の書き換えまで トランプ政権は一線を超えた
- トランプ氏、CNNをプロレスでたたきのめすビデオ投稿
- 【米大統領選2016】トランプ氏の銃権利擁護めぐる発言に怒りの声
CNN気付で小包を送られたブレナン元CIA長官は25日、トランプ氏にあててツイートし、「他人のせいにするのをやめなさい。鏡の中を見なさい。あなたの扇動的な発言、侮辱、うそ、身体的な暴力の奨励は、あまりにみっともない」と書いた。
小包の中身は
FBIニューヨーク支局のウィリアム・スウィーニー支局長は、ワシントン郊外にあるバージニア州クアンティコのFBI研究所で、届いた小包を詳しく調べていると話した。
パイプ爆弾が入っていたものもあると、FBIは見ている。
CNNは捜査筋の話として、送られたパイプ爆弾は爆発可能だが不安定で、持ち運ぶだけで爆発する可能性があったと伝えた。小売店で簡単に手に入るタイマーが使われていたという。
ただし、爆弾のレントゲン写真を見た複数の専門家は米メディアに対して、本当に爆発したか疑わしいと話している。
ニューヨーク市警のジェイムズ・オニール本部長は、すべての装置が爆発を目的に作られたものかは不明だが、「爆発物と疑われるもの」という前提で扱っていると話した。
レイFBI長官は、性能については鑑定中だが、決して「やらせ装置ではない」と強調し、ほかにもまだ発見されていない小包があるかもしれないと、警戒を促した。
(英語記事 US mail bombs: Cesar Sayoc charged after campaign against Trump critics)