モモンガ様自重せず   作:布施鉱平
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 魔軍元帥の地位に就き、王国と交渉することになったパンドラズアクター。
 敬愛する父上に喜んでもらうため、新たな姿を得た彼は王国へ向かう────


パンドラ様、王国で自重せず

◇魔軍元帥パンドラズアクター────

 

 

「────馬上より失礼! 我らはアインズ・ウール・ゴウン魔導国が使節団である!」[死の騎兵(デス・キャバリエ)]

 

「リ・エスティーゼ王国第二王子、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフである! 貴殿らを王宮まで案内するよう陛下から命じられている! 我らの後についてきていただきたい!」[ザナ]

 

(うけたまわ)った! 我が名は────我が名はランツェ! 恐れ多くも団長殿より名を戴いた死の騎兵(デス・キャバリエ)、ランツェである!」[ラン]

 

「確かに承った、ランツェ殿。それでは最初に、この場で使節団の団長殿に挨拶をさせてもらえないだろうか。私は第二王子であり、団長殿の王宮内での行動の責任を持つ身。できれば今のうちに私のことを覚えていただきたいのだ」

 

「承った。団長殿にお聞きしてこよう」[ラン]

 

「感謝する。…………(さて、いったいどんな化物が出てくることやら)」[ザナ]

 

「────────お待たせした。団長殿────アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下の片腕であらせられる、パンドラズアクター様がお会いしても構わないとのことです」[ラン]

 

「ありがとう、ランツェ殿。皆、気を引き締めよ! 決して失礼の無いよう振舞え!」[ザナ]

 

「「はっ!!」」[モブ兵たち]

 

「では、ザナック殿、こちらに」[ラン]

 

「ああ」[ザナ]

 

「────────パンドラズアクター様! リ・エスティーゼ王国第二王子、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ殿をお連れしました!」[ラン]

 

「────ああ、ありがとう、ランツェ」[パン]

 

「…………っ(こ、これが使節団団長パンドラズアクター…………! なんて美丈夫だ!)」[ザナ]

 

「アインズ・ウール・ゴウン魔導国の使者として参りました、パンドラズアクターと申します。数日という短い間ですが、よろしくお願いします」[パン]

 

「え、ええ、こちらこそよろしくお願いいたします…………失礼ですが、パンドラズアクター様はなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」[ザナ]

 

「おお、こちらこそ失礼した。この身は不遜ながらアインズ・ウール・ゴウン魔導国における魔軍元帥という地位をいただいております」[パン]

 

「なるほど…………(元帥、ということは軍部のトップか?)」[ザナ]

 

「もう少し分かり易く言うのであれば、アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下、正妃アルベド様に続く、第三位の地位に就かせていただいていると言うべきですかな」[パン]

 

「おお! そうでしたか! (第三位…………ということは、王国で言うなら侯爵位に相当する相手と考えるべきか…………予想はしていたが、かなりの大物が来たな)」[ザナ]

 

「では、こちらからも質問をしてよろしいかな? ザナック殿」[パン]

 

「はっ! 答えられることであればなんでも答えさせていただきます」[ザナ]

 

「王宮に到着してからの予定をお聞かせ願いたい」[パン]

 

「はっ! まず今晩は私ども王族との宮廷晩餐会を予定しております。そして明日は舞台の観覧会、明晩には王国内の貴族たちを集めた立食パーティーとなっております。

 明後日は宮廷楽団音楽会────その後外交交渉のお時間を作らせていただいております」[ザナ]

 

「ふむ…………では申し訳ないが、舞台の観覧会と音楽会はキャンセルしていただいても構わないかな? なにぶん根っからの軍人なものでね、芸術には縁がないのですよ」[パン]

 

「なるほど、畏まりました。空いたお時間にはなにかご予定はございますか?」[ザナ]

 

「特に予定はありませんが…………そうですね、王都を見物させてもらっても構わないでしょうか?」[パン]

 

「もちろんです。御身をお守りする選りすぐりの騎士たちを準備しておりますので、その者たちに案内もさせましょう」[ザナ]

 

「それは助かります。よろしくお願いいたします、ザナック殿。────では、そろそろ王宮に案内していただきましょうか」[パン]

 

「はっ! お時間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした。私どもの後にお続き下さい!」[ザナ]

 

「ええ、お願いします」[パン]

 

「────────────ふっ、パンドラズアクター様に芝居を見せようなど、身の程を知らぬ奴らですな」[ラン]

 

「全くだ、ランツェ。交渉の席には、少しはマシな役者がいるといいんだがね…………」[パン]

 

 

 

◇パンドラ様、立食パーティーで自重せず────

 

 

「────皆様! これより魔導国使節団団長であらせられる、パンドラズアクター様をご紹介いたします! 

 パンドラズアクター様は魔導国において魔導王陛下の片腕と呼ばれるお方であり、魔軍元帥という重職にお就きでございます」[モブ司会]

 

あの魔導王の片腕だなんて、恐ろしいわ…………」[モブ女A]

 

いったいどんな化物が来たのかしら…………」[モブ女B]

 

やめないか。あの戦から帰ってきた者たちのようになりたいのか?」[モブ貴族]

 

「「……………………」」[モブ女たち]

 

「(元帥…………それほどの地位を持つ者が来たのか! 魔導国はこの国によほどの興味を抱いているのか?)」[フィリ]

 

「それでは、使節団団長パンドラズアクター様のご入場です!」[モブ司会]

 

まぁ! なんて素敵な方なのかしら!」[モブ女A]

 

お召し物も見たことがないくらい上等なものだわ!」[モブ女B]

 

「(おいおいおい…………魔導王ってのはアンデッドなんだろ? その片腕は人間なのか? いや、あそこまで整った外見の人間なんて…………やはり、化物か?)」[フィリ]

 

「…………ようこそ、パンドラズアクター殿」[王]

 

「陛下、お招きいただきありがとうございます。お体のご調子も良いようでなによりです」[パン]

 

「…………っ」[王]

 

「お集まりいただいた皆様にも感謝を。本日は皆様と新たな友誼(ゆうぎ)を結ぶことができればと思っております」[パン]

 

あぁ…………笑顔も素敵だわ…………」[モブ女A]

 

なんとかお近づきになれないかしら…………」[モブ女B]

 

ふん…………なにが友誼だ。やつめ、一度も頭を下げなかったぞ」[モブ貴族]

 

「(一国の王相手に堂々たる態度だな…………これが王国と魔導国の力関係か。今後俺の領土を守っていく為には、なんとかしてあの男と縁を繋いでおかないと…………)」[フィリ]

 

「…………では、パンドラズアクター殿。私はもう老いているので椅子を使わせてもらうが、貴公は存分に楽しんでくだされ」[王]

 

「ええ、きっと楽しい夜になることでしょう」[パン]

 

「(…………一番だ…………二番目でも三番目でも意味がない。一番に声をかけるからこそ意味がある…………!)」[フィリ]

 

「あの、パン…………」[モブ女B]

 

「パンドラズアクター様! 少しよろしいでしょうか────────」[フィリ]

 

 

 

◇フィリップ(バカ息子)未来を語る────

 

 

「────────というわけで、魔導国の使者殿をお招きすることになったのです」[フィリ]

 

「…………お前の兄を、多くの王国の民をあのような姿にした魔王の使者だぞ?」[父]

 

「戦争なのですよ、父上。生かして返してくれただけ慈悲があるではありませんか。感謝しませんと」[フィリ]

 

「感謝だと!? お前の兄は、苦しみぬいた末に自ら命を絶ったのだぞ! お前の兄だけではない! 多くの者たちが、恐怖のあまり自ら命を絶ったのだ!」[父]

 

「…………(だから感謝しているんじゃないか)」[フィリ]

 

「しかも…………しかもだ! お前は自分が何と言ったか覚えているか!?」[父]

 

「? ですから、使者殿をお招きすると…………」[フィリ]

 

「違う! その前だ!」[父]

 

「ああ、イザベルを使者殿に引き合わせると言ったことですか?」[フィリ]

 

「お前は…………お前は兄の命だけではなく、妹まで奴らに捧げるつもりか!?」[父]

 

「父上…………政略結婚など当たり前のことではないですか。

 それに、使者のパンドラズアクター殿は類い稀なる美貌の持ち主であるだけでなく、非常に気さくで、しかも紳士でした。

 もしあの方に嫁ぐことが叶えば、イザベルも心から私に感謝することになるでしょう」[フィリ]

 

「はぁ、はぁ…………フィリップ、お前は使者として来るような者が、そう簡単に本性を現すと思っているのか?」[父]

 

「もちろんそうは思いません。ですが、私はこれでも人を見る目はあるつもりです」[フィリ]

 

「…………そうか、お前は自分のことをそう思うのか…………」[父]

 

「もしそうでなかったとしても、必要な犠牲だと割り切るしかないでしょう。

 我が家の領土は、王国と魔導国の間にあるのですよ? 

 魔導国は強い。圧倒的です。

 もしまた戦になれば、王国には滅びる道しか残されていない。

 ですが、私が繋がりを持っておけば、それを防げるかもしれません」[フィリ]

 

「…………お前…………お前は…………」[父]

 

「すでに会場は押さえてありますし、招待状も手配済みです。あとはイザベルにドレスでも買ってやれば完璧ですよ」[フィリ]

 

「…………もう、よい。お前にこれ以上言うことはない」[父]

 

「ご理解いただき感謝しますよ、父上」[フィリ]

 

「…………(我が家は、もうダメかもしれんな…………)」[父]

 

 

 

◇パンドラ様とフィリップ(バカ)────

 

 

「パンドラズアクター様、本日はようこそお越しくださいました!」[フィリ]

 

「これはフィリップ殿。お招きいただきありがとうございます」[パン]

 

「いえ、これからの王国と貴国の関係を考えれば、国賓である貴方をおもてなしするのは当然のこと。ぜひ楽しんでいってくださいませ、パンドラズアクター様」[フィリ]

 

「私のことはパンドラと気軽に呼んでいただいて構いませんよ、フィリップ殿」[パン]

 

「おお、それは望外な栄誉です。ではぜひ私のこともフィリップと呼んでください、パンドラ殿」[フィリ]

 

「ええ、分かりました、フィリップ」[パン]

 

「使者として来られたのがパンドラ殿のような気さくな方で良かった。…………おっと、忘れるところでした。これは私の妹でイザベルと申します。────イザベル、挨拶を」[フィリ]

 

「イザベルと申しますわ。パンドラズアクター様」[イザ]

 

「これは可愛らしいお嬢さんだ。私はパンドラズアクター。貴女もぜひ、私のことはパンドラと」[パン]

 

「はい…………パンドラ様///」[イザ]

 

「ははは、貴方があまりにも容姿端麗なので照れているようです」[フィリ]

 

「もう、お兄様ったら///」[イザ]

 

「お褒めに預かり光栄です。では今日はぜひ、お二人には私の中身も知っていただきたいものですね」[パン]

 

「もちろん、そのつもりですよ。では行きましょうか、パンドラ殿」[フィリ]

 

「ええ、フィリップ。ではイザベル、貴女をエスコートする栄誉を私にいただけるかな?」[パン]

 

「もちろんですわ、パンドラ様」[イザ]

 

「では、参りましょうか────────」[パン]

 

 

 

◇フィリップ(バカ)とイザベル(バカ)────

 

 

「あぁ、素敵だわ、パンドラ様…………」[イザ]

 

「────おぉ、イザベル、ここにいたか」[フィリ]

 

「あらお兄様」[イザ]

 

「ん? パンドラ殿はどこだ?」[フィリ]

 

「今ご休憩で別室に行かれたわ…………あぁ、それにしても素敵な方…………」[イザ]

 

「そうか、休憩か…………で、どんな感じだ? 落とせそうか?」[フィリ]

 

「うふふ…………私のほうが落とされちゃいそう」[イザ]

 

「おいおい…………それはせめて向こうを落としてからにしてくれよ。我が家の行く末が掛かっているんだからな」[フィリ]

 

「大丈夫よ、お兄様。好感触だわ」[イザ]

 

「いけそうってことか?」[フィリ]

 

「私に興味を持っているのは間違いないわ。それに、彼ってあまり女性経験がないみたい。

 ダンスの時、転びそうになったフリをして胸を押し付けてみたら慌ててたもの」[イザ]

 

「ふん、百戦錬磨のお前には朝飯前の相手か?」[フィリ]

 

「嫌味な言い方をしないで下さる、お兄様。私が彼に嫁ぐことになったら、お兄様の運命は私の言葉で決まるかも知れないのよ?」[イザ]

 

「はいはい、わかってるよ。未来の元帥夫人殿」[フィリ]

 

「うふふ、よろしい。あぁ、でも、ほんとに彼って素敵ね。美しさの中に野性味溢れる凛々しさが漂っていて、体も見た目以上にすっごく逞しいの。

 …………きっと夜の方もすごいわよ」[イザ]

 

「お前が遊び慣れているのをバレないようにしろよ?」[フィリ]

 

「ほんと、男って清純な女が好きよね。大丈夫よ、初めてのフリくらいできるわ」[イザ]

 

「そうか、それならいい。今後は俺と話すときも地を出すなよ? いいか、くれぐれも注意しろ」[フィリ]

 

「…………分かりましたわ、お兄様。では、私もお化粧を直してまいりますので、パンドラ様が戻られたら、私が戻るまでお相手をお願いします」[イザ]

 

「ああ、任せておけ」[フィリ]

 

「では────────」[イザ]

 

「…………ふぅ、妹の男狂いがこんなところで役に立つとはな。やはり、俺は天に愛されているようだ」[フィリ]

 

 

 

◇パンドラ様とヒルマ(調教済み)────

 

 

「お疲れ様でした、パンドラズアクター様」[ヒル]

 

「ああ、君もお疲れ様、ヒルマ」[パン]

 

「…………どうでございました?」[ヒル]

 

「彼かい? 予想以上のバカだな。国同士の力関係すら上辺の部分しか理解していない。

 おそらくは、自分自身のことすら上辺しか知らないんだろう。

 今まで見た中で、もっとも中身のない薄っぺらな人間だよ」[パン]

 

「…………」[ヒル]

 

「おっと、中身を恐怖公の眷属に食べられたことがある君には、酷な例えだったかな?」[パン]

 

「い、いいえ! そのようなことは決して…………!」[ヒル]

 

「ふふふ、そう恐れることはない、ヒルマ。君は今のところしっかりと仕事をこなしている。その調子で頑張ってくれればいい」[パン]

 

「は、はっ! ありがたいお言葉です!」[ヒル]

 

「さて…………せっかく愚か者たちから離れられたのだから、もう少し有意義な話をしようか。

 食料の件はどうなっている?」[パン]

 

「はっ、ご指示通り、麻薬を売って得た金銭により、広い方面から少量ずつ備蓄可能な食料を買い集めています」[ヒル]

 

「よろしい、そのまま続けてくれ。マジックアイテムの情報は?」[パン]

 

「魔術師組合に手の者を潜入させ、詳しく調べさせております。また、古文書や神話、酒場の噂話にいたるまで情報収集をしておりますが、今のところお探しのアイテムの情報は入ってきておりません」[ヒル]

 

「そうか。引き続き、どのような細かい情報も上げてくるよう徹底してくれ」[パン]

 

「はっ!」[ヒル]

 

「私から聞くことは以上だが、そちらからなにか質問や要望は?」[パン]

 

「恐れながら、鉱山のスケルトンが素晴らしい成果を上げておりますので、もう少しお貸しいただければ作業効率を上げることが可能かと」[ヒル]

 

「具体的な数は?」[パン]

 

「百体もあれば十分でございます」[ヒル]

 

「では、予備も含めて百五十体送ろう。崩落などつまらない理由で無駄にしないよう、担当者に伝えておくように」[パン]

 

「はっ! 必ず伝えます!」[ヒル]

 

「さて、こんなところか。…………ああ、そうそう、あのフィリップの妹はどこか頭がおかしいのか? 急にくねくねと体をよじらせたり、何もないところで何度も転びそうになっていたが」[パン]

 

「パンドラズアクター様の気を引くための演技かと」[ヒル]

 

「演技? あれがか?」[パン]

 

「田舎貴族の娘など、所詮相手にしてきたのは同程度の下級貴族ばかりですから。それでも何人かは手玉に取っていたようですが…………」[ヒル]

 

「あれに騙されるのか…………やはり、舞台は観なくて正解だったな。役者のレベルが低すぎる」[パン]

 

「お邪魔でしたら、こちらで排除いたしますか?」[ヒル]

 

「いや、いい。一応私も合わせて演技をしておいたからな。使い道は色々とある」[パン]

 

「畏まりました」[ヒル]

 

「では、愚か者たちの元に戻るとするか────────」[パン]

 

 

 

◇パンドラ様とラナー王女(化け物)────

 

 

「ひ、姫様!」[モブメイド]

 

「どうかしましたか?」[ラナ]

 

「あ、あ、あの、パ、パパ…………」[モブ]

 

「パパ?」[ラナ]

 

「ち、違います。魔導国の使者、パンドラズアクター様がラナー様にお会いしたいと!」[モブ]

 

「どのような方ですか?」[ラナ]

 

「とても素敵な男性です!」[モブ]

 

「む…………」[クラ]

 

くすっ…………パンドラズアクター様が、私になんの御用なのでしょう?」[ラナ]

 

「私には分かりかねます。ただ、お会いしたいと」[モブ]

 

「そうなんですか…………ですが、パンドラズアクター様は男性の方ですし、二人きりでお会いするわけにもいきませんね。貴女も一緒にいて下さる?」[ラナ]

 

「ぜひ!」[モブ]

 

「ラナー様、それでしたら私が…………」[クラ]

 

「ごめんなさい、クライム。本当はあなたにいてほしいのだけど、傍に騎士を控えたまま国賓の方にお会いするのは失礼に当たるわ。私は大丈夫だから、少しの間外していて?」[ラナ]

 

「…………畏まりました」[クラ]

 

「ありがとう。じゃあ、パンドラズアクター様をこちらにお通ししていただけるかしら?」[ラナ]

 

「はい! すぐお連れいたします!」[モブ]

 

「────────やあ、ラナー殿」[パン]

 

「お待ちしておりました、パンドラズアクター様」[ラナ]

 

「ラ、ラナー様? なぜ跪いて…………」[モブ]

 

「君は少し静かにしていてもらおうか。〈睡眠(スリープ)〉」[パン]

 

「zzz…………」[モブ]

 

「彼女は後で記憶をいじっておこう。アインズ様ほど上手くは扱えないので、若干障害が残るかもしれないが構わないね?」[パン]

 

「もちろんでございます。お手数をおかけして申し訳ございません」[ラナ]

 

「これも君との契約だよ。男と二人きりになって、彼にあらぬ疑いを掛けられたくないのだろう?」[パン]

 

「ご配慮感謝致します」[ラナ]

 

「いいさ。君の働きは見事だった」[パン]

 

「ありがとうございます。パンドラズアクター様」[ラナ]

 

「そしてその功績を湛え、君に褒美を渡そう。さあ、受け取るといい」[パン]

 

「これが…………」[ラナ]

 

血の宝珠(ブラッドスペル)だ。その小さな宝珠を飲み込めば、君は吸血鬼(ヴァンパイア)になることができる。

 もちろん、人間に倒されるような低位のものではない。

 高位純血種(ハイ・トゥルーブラッド)という、レベル60の吸血鬼だ。

 難度で表すなら180に相当する。

 そして────」[パン]

 

「血を吸うことで、眷属を生み出すことができるのですね」[ラナ]

 

「その通り。今後、首尾よく王国をアインズ様に差し出すことができたなら、君はナザリックに領域守護者格として迎え入れられることになる。

 その際には眷属を一体、供として連れてくることを許そう」[パン]

 

「必ず、お渡しいたしますわ。王国の全てを」[ラナ]

 

「それでいい。永遠の楽園で、永遠に君の眷属と生きるためだ。全力を尽くしたまえ」[パン]

 

「はい、偉大なる御方────────」[ラナ]




 今回はパンドラさんが働くお話でした。

 ナザリックにいる時と口調が違うのは、各下の存在しか相手にしていないからです。

 次回はまたアインズ様がなんやかんやする予定。

 もしくは閑話とか挟むかもしれません。

 そのへんは気分次第です。







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