モモンガ様自重せず   作:布施鉱平
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 自らの国を手に入れたアインズ様。
 王となったアインズ様は、今日も朝早くから仕事を始めるが────


モモンガ様、魔導国で自重せず(前)

◇アインズ・ウール・ゴウン魔導国の朝────

 

 

「────アインズ様、本日のお召し物はどのようにいたしましょうか?」[フィー]

 

「うむ、フィースに任せる」

 

「畏まりました、アインズ様! 全身全霊を尽くして選ばせていただきます!」[フィー]

 

「頼んだわよ、フィース。モモ…………アインズ様の威厳を損なわないコーディネートを期待するわ」[アル]

 

「お任せ下さい、アルベド様! そうですね…………昨日はアインズ様のお力を象徴するような黒のお召し物でしたし、本日はアインズ様の愛を象徴する赤のお召し物などいかがでしょう?」[フィー]

 

「情熱の赤…………いいわね。だとすると、ネックレスの宝石はガーネット…………いえ、それだと赤がかぶってしまうわね」[アル]

 

「あっ、ペリドットなどいかがでしょう!? これならお召し物にも合うと思いますが!」[フィー]

 

「宝石言葉は『夫婦の幸福』に『輝かしい未来』だったかしら。いいわね、ナイスなチョイスよ、フィース」[アル]

 

「ありがとうございます! ベルトはやはり黒、バングルにはダイヤモンドをあしらったものを…………」[フィー]

 

「カフスはバラの花を模したものなんか素敵よね。それとストールは…………」[アル]

 

「…………(うん、完全に着せ替え人形だな)」

 

 

 

◇アインズ・ウール・ゴウン魔導国の仕事(午前の部)────

 

 

「────それで、法律の方はどうなっている?」

 

「はい、デミウルゴスやパンドラズアクターと話を詰めております。

 モモンガ様が絶対的な権力と決定権を持つというのを国法の第一章に置いてありますが、それ以外の基本的な部分はもともと王国で施行されていたものと大差ありません。

 今後様々な種族を迎え入れ、共同生活を送る中で随時変更して行けばよろしいかと」[アル]

 

「うむ、それでいいだろう。…………では次に、いつものやつをやるとするか。今日の分はこれだけだな」

 

「毎回かなりの数が入っておりますね」[アル]

 

「うむ。どのような意見や要望でも構わないから、思いついたものがあれば書いて投書するように通達してあるからな」

 

「毎回読み上げていただいて申し訳ありません」[アル]

 

「なに、構わないさ。皆が私に上げてくれた意見だ。私が読むのが当然のことだろう(俺の書いたやつも時々混ぜてるし、アルベドに読ませるわけにはいかないからな)」

 

「うふふ、それを皆に伝えたら、投書の数がさらに増えると思いますわ」[アル]

 

「そういう理由で入れては欲しくないのだがな…………まあ、それも皆とのコミュニケーションだと思えばいいか…………では、読み上げていくぞ」

 

「はい、お願いします」[アル]

 

「一つ目はこれだ。『食堂のメニューに、生きた人間を追加して欲しいです』」

 

「…………」[アル]

 

「…………エントマか、ソリュシャンだろうな」

 

「はい、おそらくは」[アル]

 

「うむ、却下だ。別に生きた人間を食べるのは構わないが、食堂のメニューに『人間』と書いてあるのもどうかと思うし、そもそもこれは料理じゃないしな」

 

「では、これは没の箱に入れておきます」[アル]

 

「うむ。では次だ『週に一度…………いえ、月に一度でいいので、アインズ様とお散歩したいっす!』」

 

「…………ルプスレギナですわね」[アル]

 

「文章として書くときもあの口調なのか? 匿名にならないだろ、これじゃ」

 

「まあ、内容が内容ですし、普通の文体だったとしても誰が書いたのかは分かったと思いますが…………」[アル]

 

「そうだな。で、散歩か…………犬や狼系の特徴を持つ者は、やはりこういう欲求があるものなのか?」

 

「その辺りの話を詳しく聞いたことはありませんが…………」[アル]

 

「今度聞いてみるか…………じゃあ、これは一応保留だな」

 

「はい、保留の箱に入れておきます」[アル]

 

「次、『…………パフェのレパートリーを増やしてほしい』」

 

「シズですわね」[アル]

 

「…………なんか、誰が書いたのか当てるクイズみたいになってきてるな」

 

「『…………』の部分で分かりました」[アル]

 

「そこを書く意味が分からん。喋ってない部分をあえて書く必要はないだろう?」

 

「シズのアイデンティティーですから」[アル]

 

「そうか、うむ、深い…………のか? まあいい、これは採用でもかまわないだろう」

 

「では採用の箱に」[アル]

 

「次は…………なんだかみっちり書いてあるな。『ご機嫌麗しゅう、アインズ様。さて、この度筆を取らせていただきましたのは、不敬ながら嘆願の儀あってのこと。実は、我が朋友たるコキュートス殿が爺という大役を仰せつかり、意気軒昂たる様子。そこで、ささやかながら贈り物をしたいと考えているのでありますが、残念なことに我輩も我輩の眷属も、贈るべきものも持ち合わせておりません。そこで、我輩が考案したマジックアイテムの作成をパンドラズアクター殿に依頼したく、その許可を頂ければこの上なき幸せにございます。

 では、略儀ながら書中にて嘆願せし無礼をお詫び申し上げます。 恐怖公』」

 

「…………名前、書いてあるのですね」[アル]

 

「ああ、書いてある。そしてもの凄く字が綺麗だ」

 

「あの手で、どうやって書いているのでしょうか…………」[アル]

 

「手というか、前足だがな。…………まあいい、これは私が後で直接話をしよう」

 

「お願いいたします」[アル]

 

「さて次は…………『好き好きアインズ様♡ 夜のご奉仕技術向上講座に、特別講師として参加していただけないでしょうか♡』?」

 

「…………♡」[アル]

 

「アルベド…………お前だな?」

 

「まあ、モモンガ様。それをお尋ねになるのはルール違反ですわ♡」[アル]

 

「…………ほ、保留とする」

 

「はい♡ モモンガ様♡」[アル]

 

「…………コホン。では次を…………」

 

「コン、コン────」[ノックする音]

 

「ん? 誰だ?」

 

「────────モモル様がいらっしゃいました」[フィー]

 

「モモルが? 今の時間は保育園にいるはずだが…………」

 

「ニグレド様もご一緒です」[フィー]

 

「ニグレドも? …………まあいい、通してくれ」

 

「はっ、畏まりました」[フィー]

 

「────────とうさまー」[モモ]

 

「おっと、ははは、どうしたモモル」

 

「おひざにのせてー」[モモ]

 

「ああ、もちろんいいとも。さ、おいで」

 

「えへへー」[モモ]

 

「お仕事中に失礼いたします、アインズ様」[ニグ]

 

「いや、構わないのだが…………今日はどうしたのだ、ニグレド」

 

「あら、アインズ様にご説明してないの? アルベド」[ニグ]

 

「うふふ、サプライズのほうがいいかと思って」[ニグ]

 

「全くあなたは…………」[ニグ]

 

「? なんなのだ?」

 

「あのねー、きょうはねー、とうさまのおしごとをみるひなのー」[モモ]

 

「仕事を見る? …………職場見学みたいなものか?」

 

「はい。モモル様にもアインズ様の働かれるお姿を見ていただこうと、アルベドと話し合いまして…………」[ニグ]

 

「…………なるほどな。だが、このように抜き打ちみたいなやり方でなくてもよかったのではないか?」

 

「うふふ、申し訳ありませんアインズ様。ですが、いついかなる時でもアインズ様は素敵ですので、問題ありませんわ」[アル]

 

「とうさま、すてきー」[モモ]

 

「…………ふぅ、まあいい。で、どうするのだ? このまま続ければいいのか?」

 

「はい、お願いいたします。せっかくだから姉さんも一緒にどう?」[アル]

 

「よろしいでしょうか、アインズ様?」[ニグ]

 

「…………ああ、構わないとも。こほん、では、次の投書を読むぞ。『モモル様はこの世の何よりもお可愛らしいですが、私もアインズ様とのお子がほしいです』」

 

「…………」[ニグ]

 

「まあ、これ姉さんでしょ。もう、私に言ってくれればいいのに♡」[アル]

 

「えへへ、ほめられちゃった」[モモ]

 

「あー…………んんっ! そうだな、うむ、努力しよう」

 

「良かったわね、姉さん♡」[アル]

 

「…………///」[ニグ]

 

「つ、次だ、次! えーと、『現在魔導国でアインズ様がご使用になっておられる館の増改築をご提案させていただきます。アインズ様のご威光を示すためには、現在の景観、内装では不十分。さらに、将来的にいくつもの種族、国家を従えていくことを考えますと、広さにおいても十分とは言えません。なぜなら────』」

 

「デミウルゴスですわね」[アル]

 

「デミウルゴスさんですね」[ニグ]

 

「でみでみだ」[モモ]

 

「ああ、デミウルゴスだろうな…………でみでみ?」

 

「でみでみー」[モモ]

 

「…………アルベド、モモルはデミウルゴスのことをでみでみと呼んでいるのか?」

 

「はい、どうも『ウルゴス』の部分が言いづらいみたいです。発音に苦しんでいるモモルに、デミウルゴス自身がでみでみとお呼びくださいと申しておりましたわ」[アル]

 

「…………そ、そうか、デミウルゴス自身がな…………」

 

「ちなみにアウラは『あうら』、マーレは『まーれ』、シャルティアは『しゃる』、コキュートスは『じい』、セバスは『じいじ』、ビクティムは『ぴんく』、姉さんは『えんちょ』、ペストーニャは『わんこ』、パンドラズアクターは『たまご』と呼ばれております」[アル]

 

「……………………(パンドラズアクター…………お前、妹からたまごって呼ばれてるのか…………)」

 

「アインズ様?」[アル]

 

「とうさまー?」[モモ]

 

「あ、いや、何でもない。とりあえず、デミウルゴスの投書は保留の箱に入れておけ。後でアルベドも交えた上で話し合うことにしよう」

 

「畏まりました」[アル]

 

「では次、『保育園で使用する玩具や遊具があれば良いと思います。危険性のないマジックアイテムなどがあれば、それをいくつかいただけないでしょうか。あ、わん』」

 

「さいよーします!」[モモ]

 

「こら、モモル。お父様のお仕事を邪魔しないの」[アル]

 

「ははは、よい、アルベド。私もこの意見には賛成だ、採用の箱に入れておいてくれ」

 

「畏まりました。良かったわね、モモル」[アル]

 

「とうさま、ありがとう!」[モモ]

 

「うむ、ペストーニャにも後でお礼を言っておくのだぞ?」

 

「はい! わんこ、あたまなでてあげると、よろこぶ!」[モモ]

 

「…………やっぱり、犬系はそうなのか。じゃあ、散歩の件も本気で考えてやらないとな…………」

 

「アインズ様、首輪とリードでしたら、私が質の良いものを持っていますわ」[アル]

 

「…………なぜそれを持っているのかは聞かないでおこう。次だ…………今日はこれで最後だな、『モモル様はいつも可愛らしい洋服を着ておられますが、たまには和服なども着てみたらいかがでしょう。とてもお似合いになると思うのですが』」

 

「あら、私はよい意見だと思いますが…………誰が書いたのかしら?」[アル]

 

「和服といえばエントマかしら…………でもそれにしては文体が硬いですね。アインズ様、どのような文字なのでしょうか」[ニグ]

 

「いや、別に誰が書いたかを当てる必要はないのだが…………そうだな、角ばった字というか、全体的にきっちりとした字体だな」

 

「ユリ? ナーベラル? でもあの二人が和服を勧めるようなイメージはないのよね…………」[アウ]

 

「じい!」[モモ]

 

「ん?」

 

「じい、かたい! かくばってる!」[モモ]

 

「まあ、確かにコキュートスは外骨格だから硬いしゴツゴツしてるが…………いや、そうか。文字だから分かりづらいが、コキュートスが書いたのだとしたら納得だな」

 

「ああ、言われてみればそうですわね。コキュートスは武人気質ですし、創造主であらせられる武人建御雷様もサムライ。和服を勧めるのも納得ですわ」[アル]

 

「そういえば、コキュートスさんの親衛隊である雪女郎(フロストヴァージン)たちが言ってたわ。最近、コキュートスさんが着付けの仕方とか脱がせ方を聞いてくるって。私、てっきり雪女郎の誰かに手を出すつもりなのかと思ってたんだけど…………」[ニグ]

 

「コキュートス…………(なぜよりにもよって雪女郎にそんなこと聞いた…………)」

 

「…………なんか、変態っぽいですわね」[アル]

 

「じい、へんたい?」[モモ]

 

「モモル、コキュートスにはその言葉を言っちゃダメだぞ? 意外と傷つきやすいからな?」

 

「はい! いいません!」[モモ]

 

「よし、いい子だ」

 

「えへへー」[モモ]

 

「アルベド、その投書は採用するが、コキュートスには私から言っておこう。絶対に雪女郎で練習するなと」

 

「かしこまりました。よろしくお願いいたします、アインズ様」[アル]

 

「よし、では午前中の仕事はこれで終わりだな。アルベド、他に何かあるか?」

 

「はい、ひとつアインズ様にご許可を頂きたいことがあるのですが…………」[アル]

 

「ん? なんだ、言ってみるがいい」

 

「人間の王と交渉する人員の選定なのですが、敗戦国である王国に正妃の私が行くわけにもまいりませんし、かと言ってメイドや執事を送るわけにもまいりません。

 ですので、適当な役職を作ってパンドラズアクターを就任させ、なにかに変身させたうえで交渉に送り出そうと思うのですが、よろしいでしょうか?」[アル]

 

「うむ、それは構わないが…………何に変身させる?」

 

「それなのですが、ナーベラルのように人間を模したオリジナルの姿がよろしいかと」[アル]

 

「ふむ…………一応聞こうか。なぜだ?」

 

「すでに恐怖と絶望はアインズ様が与えておりますので、次はある程度安心させる必要があるかと。であれば、やはり人間の姿をしているのが最も効果的ではないかと思いましたので」[アル]

 

「…………なるほどな。いや、私の予想通りだ。では姿については、午後にパンドラズアクターと会う予定もあるので、私が話を詰めておこう。役職はもう決まっているのか?」

 

「相応の地位が必要ですので、元帥(げんすい)号がよろしいかと」[アル]

 

「元帥か…………守護者統括がその上の大元帥にあたると考えると、単純に元帥と名乗らせるわけにもいかないな。だがナザリックには陸海空軍があるわけでもないし、なに元帥と呼称すべきか…………」

 

「たまごげんすい!」[モモ]

 

「…………なんかそれだと卵雑炊みたいだな」

 

「魔軍元帥、などどうでしょう?」[ニグ]

 

「…………魔軍元帥か…………魔軍元帥パンドラズアクター…………ふむ、なかなかいいじゃないか、それにしよう」

 

「畏まりました。では、パンドラズアクターは本日を持ってナザリック魔軍元帥に就任。全ての者にその旨通達しておきます」[アル]

 

「うむ、まかせた。ではそろそろ休憩とするか。食事を取る者は取ってくるとよい。私は一旦自室に戻るとしよう」

 

「とうさまー、ごほんよんでー」[モモ]

 

「ん? ああ、もちろんいいぞ、モモル。なにを読んで欲しいんだ?」

 

「どぐら・まぐらがいいー」[モモ]

 

「……………………あー、別のにしないか? ほら、その本だと長いから、休憩中に読みきれないだろ? もっとこう、絵の多いやつとかどうだ?」

 

「えー…………じゃあどうしようかなー…………」[モモ]

 

「モモル様、後で私が『ヴォイニッチ手稿』を読んでさしあげますから、アインズ様には絵本でも読んでいただいたらどうです? 『ギャシュリークラムのちびっ子たち』なんて面白いと思いますが」[ニグ]

 

「あ、ああ、そうだな。それがいいだろう(どんな絵本が知らないけど)」

 

「わーい、ありがとう、とうさまー」[モモ]

 

「ははは、よし、では図書室に本を借りに行くか」

 

 

 

◇アインズ・ウール・ゴウン魔導国の仕事(アインズ様と息子)────

 

 

「……………………(なんだ、あの夢に出てきそうな絵本は…………いや、俺は眠らないんだけどさ…………)」

 

「どうかされましたか? 父上」[パン]

 

「…………いや、なんでもない。さて、お前にいくつか確認しておくことがあるのだが…………まずは最近のモモンとしての活動を聞こうか。なにか問題はあるか?」

 

「いえ、特にはございません。父上に対して不敬な発言をする者を思わず切り殺しそうになりますが、なんとか堪えております」[パン]

 

「うむ、よく堪えた。一応我が国の国民だからな、そう簡単に殺してはいかん」

 

「はっ! ですが、顔、名前、住居など全て記憶しておりますので、父上のお許しがあればいつなりと始末することができます!」[パン]

 

「…………そ、そうか。ではまあ、機会があればな…………で、次だが、お前が魔軍元帥に就任したことはもう知っているな?」

 

「はい! 栄誉ある職に任官いただき、感謝の言葉もございません!」[パン]

 

「うむ。それで、お前の魔軍元帥としての姿を作る必要があるのだが、できるだけ魅力的かつ威厳ある姿にして欲しいのだ」

 

「それですと、父上と同じ姿になってしまいますが?」[パン]

 

「そう言ってくれるのは嬉しいが、人間の姿でだ」

 

「人間…………でございますか。ですが、どのような姿の人間に魅力や威厳があるのか、私には分からないのですが…………」[パン]

 

「まあそうだろうと思ってな、私の方でいくつかの候補を用意してきた。その中からパーツを組み合わせていって、理想的な外見を作ろうと思うのだが、よいか?」

 

「もちろん、私に異論などございません!」[パン]

 

「では、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)に映していくぞ────まずは、これだ」

 

「これは…………帝国の皇帝ですか」[パン]

 

「そうだ、人間の指導者の中でもとりわけ高いカリスマを持つ存在として知られている。私たちから見れば線の細い優男にすぎないが、人間から見れば非常に整った外見の男だと言えるだろう」

 

「なるほど…………この目の下の隈や眉間のシワも、人間から見れば魅力的なのでしょうか?」[パン]

 

「…………いや、これはただ単純に疲れているんだろうな。一国の元首なのだ、仕事も悩みも多いだろう。では、次を映そう」

 

「ふむ、これはつい最近父上がスカウトされた、人間の武技教官でしたな」[パン]

 

「ガゼフ・ストロノーフ────王国の戦士長をやっていた男だ。先ほどのジルクニフとは打って変わり、無骨な外見をしている。だが、この男も部下や市民からは絶大な信頼を得ていた」

 

「太い眉に頑丈そうな顎。確かに先ほどの皇帝とは真逆ですな」[パン]

 

「そして最後はこれだ」

 

「おや? これは執事のセバス殿ではありませんか」[パン]

 

「そうだ。私が知っている人間の姿をした者の中で、最も威厳と魅力を兼ね備えた存在だ」

 

「セバス殿であれば納得ですな」[パン]

 

「ああ。実際、人間の街に潜入しているときはかなりモテていたとソリュシャンから報告を受けている」

 

「…………で、父上。誰のどのパーツを使えばよいでしょうか?」[パン]

 

「体はセバスのものをそのまま使おう。逞しく、均整も取れているし、セバスの能力の八割ならこの世界の者に不覚を取ることもないだろうからな」

 

「なるほど。セバス殿に変身し、顔だけを別のものに変えるということですな?」[パン]

 

「そういうことだ。で、肝心の顔の部分だが…………そうだな、顔の形はジルクニフを基準にしようか。眉や鼻筋などもジルクニフに合わせ、貴公子然とした雰囲気にしよう」

 

「畏まりました。目はどういたします?」[パン]

 

「目はガゼフだな。力のある目だ」

 

「では口元はセバス殿ですな」[パン]

 

「ヒゲはいらんぞ? 貴公子だからな」

 

「畏まりました。声や立ち振る舞いはどういたしましょうか?」[パン]

 

「それはお前だ、パンドラズアクター」

 

「は?」[パン]

 

「お前には今まで、いくつもの演技をさせてきた。だが、魔軍元帥として働くのは他の誰でもない、お前自身なのだ、パンドラズアクター」

 

「ち、父上…………」[パン]

 

「姿形こそ目的に合わせて作り変えはするが、今回は私が唯一創造した存在として────我が息子として、その力を振るってくれ」

 

「あ、あぁぁ…………ち、父上ぇっ!!」

 

「ははは、そんな泣き虫では妹に笑われてしまうぞ? さ、調整も必要だろうから、早速変身後の姿を作っていくとしよう」

 

「は、はい! お任せ下さい、父上!」[パン]

 

 

 

◇アインズ・ウール・ゴウン魔導国の仕事(冒険者組合)────

 

 

「────というわけだ、アインザック。私は冒険者たちが、真の冒険者として働ける環境をつくろうと思っている」

 

「…………正直に申し上げて、非常に魅力的なご提案です」[アイン]

 

「それともう一つある。私はこのアインズ・ウール・ゴウン魔導国では、医療に関して金を取らないつもりだ」

 

「そ、それは一体どういうことなのでしょう?」[アイン]

 

「言ったままの意味だよ。私は無料の治療院を作る。そして、我が国に籍を置く者は、その種族や身分に関わらず、等しくその治療院を利用する権利を有するのだ」

 

「そ、そんなことをすれば、神殿が黙っていません! 最悪の場合、背後にあるローブル聖王国やスレイン法国との戦争になることも考えられます!」[アイン]

 

「その程度のことを、私が予想していないとでも思うのかね?」

 

「い、いえ失礼いたしました、魔導王陛下…………ですが」[アイン]

 

「私はただ、自国の民が平穏に暮らすことのできる施策を打とうとしているだけだ。もし、それに対して『金が稼げないから』などという愚劣な理由で戦争を仕掛けてこようと言うのなら────いいじゃないか、私はいくらでも受けて立つとも」

 

「陛下…………あなたは…………」[アイン]

 

「もちろん、神殿の者たちに飢えて死ねと言っているわけではない。彼らにもちゃんと仕事を用意するさ、治療院の下働きとかな」

 

「…………ふっ、まあ確かに、彼らが要求する金額は高すぎますし、態度も傲慢だ。下働きで性根を叩き直してもらうのもいいかもしれませんね」[アイン]

 

「だろう? まあ、それも彼らが望めばだがね────────ああ、そうだ、同じく建設予定の学園で働いてもらうのもいいかもしれないな」

 

「学園、といいますのは、帝国の魔法学院のようなものですか?」[アイン]

 

「あれは魔法詠唱者を育成する専門機関だ。アインズ・ウール・ゴウン魔導学園で教えることは、もっと多岐に渡る。読み書き、計算、法律、剣術、武技、魔法…………様々なものを広く学んでもらい、適性のある分野についてはさらに深く学んでもらうつもりだ」

 

「なぜ、そのような恩恵を私たちに…………?」[アイン]

 

「自惚れないで欲しい。治療院にしろ学園にしろ、その恩恵を受けるのは君たち人間だけではない。ゴブリン、オーガ、エルフ、リザードマン、ドリアード…………今後魔導国で暮らすことになるであろう全種族だ」

 

「な…………何を言っておられるのです! 魔導王陛下!」[アイン]

 

「人間以外の種族とは、共に暮らせないかね? アインザック。なら、目の前にいる私はなんだ?」

 

「そ、それは…………」[アイン]

 

「私はアンデッドだ、アインザック。私から見れば、人間も、ゴブリンも、リザードマンも、同じ『生者』というカテゴリーでしかないのだよ。

 人間だからといって優遇することはないし、ゴブリンだからといって奴隷のように扱うこともない。我が支配下においては、全ての生命は平等に扱うつもりだ。

 もちろん、その上には私が絶対的な支配者として君臨し、直属の配下たちがそれに次ぐ地位を持つがな」

 

「…………陛下のお話は、理解いたしました」[アイン]

 

「安心しろ、アインザック。我が国の法を遵守する限り、君たち人間も他の種族と同様に恩恵を受けることができるのだからな」

 

「確かに、その通りですな…………しかし陛下、もし学園で学んだ者が他の国に移ろうとしたらどうされますか?」[アイン]

 

「ふふふ…………そんなことを許す訳無いだろう? それは我が国に対する反逆だ。入学する条件として、学園で学んだ知識や技術を他国に持ち出さないと誓ってもらう」

 

「…………陛下であれば、その誓いを絶対に守らせる手段をお持ちなのでしょうな」[アイン]

 

「もちろんだとも。さて、アインザック、私はそろそろ戻る事にする。冒険者への説明は任せたぞ」

 

「畏まりました。魔動王陛下」[アイン]

 

 

 

 




 なんかDJアインズ様のお便りコーナーみたいな話になってしまった。
 
 そして、敗戦国に正妃が出向くってどうなの? と思った結果、パンドラズアクターが王国に乗り込むことに…………

 頑張れパンドラズアクター! 

 先の話は全く考えてないぞ!

 というわけで、次回の話はパンドラさんが使節団の代表として王国に向かいます。
 







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