週刊大阪日日新聞

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2018/10/27

大阪の教育最前線 南港に世界基準の中高一貫校

国際バカロレアを導入 「水都国際」が来春開校


▲来年春に開校する「水都国際中・高」の完成予想図

 2019年4月、大阪市住之江区の南港ポートタウンの小学校跡地に市立では2番目となる中高一貫校「水都国際中・高」が開校する。中高一貫校としては全国初の公設民営で、アクティブ・ラーニングのプログラム「国際バカロレアプログラム」の教育課程を導入する点が特徴。開校を契機に、公私学の中高一貫校の独自の教育方針に保護者らの関心が高まり、学習塾もそれぞれの学校に合わせた受験対策を進めている。

じっくり学べる6年間

全国初の公設民営

 経済の地盤沈下と人材流出に悩む大阪市は、国際社会で活躍する人材を市の責任で育成し、大阪の産業の国際競争力強化などを目指すため、2014年、国家戦略特区プロジェクト提案として「国際バカロレアの認定を受ける公設民営学校の設置」を提案した。

 翌15年に公設民営学校の制度設計案を文部科学省に提出。16年に国家戦略特別区域法と関連政省令が改正、施行され、公設民営学校の設置が可能となった。

 「水都国際」は大阪市が設置、管理、運営は国際教育の経験豊富な大阪YMCA(西区土佐堀1丁目)が担う。定員は中高各1学年80人。英語運用能力を育成する「グローバルコミュニケーション」、自然科学分野で国際的に活躍する人材を育成する「グローバルサイエンス」、23年度開設予定の「国際バカロレア」の3コースを高1の2学期に選ぶ。

アクティブラーニング

 「国際バカロレア」とはどのような教育プログラムなのか。市教育委員会事務局の大西忠典首席指導主事は「アクティブ・ラーニングの究極型」と表現する。

 一般的な学校教育と違い、「答えを教えない指導法」といい、円座や班別でディスカッション、ディベートなどで問題解決を図る。それによって、必要な知識を自ら収集、分析する能力▽グループワークで養われる協調性、企画力▽自ら課題設定、解決する能力―などが身に付くという。

 最大の利点は、世界140カ国で実施されるプログラムであり、「世界標準の通知書」である点だ。大西首席指導主事は「海外の大学は高校のときに何をしてきたのかを判断材料に、ニーズに合う生徒を受け入れる」として、その際には国際バカロレア機構の評価が重視されると話す。

 利点は評価されつつも、同課程を設置する私学の学費の高さが受験のハードルを上げていた。大阪YMCAの手掛けるインターナショナルスクールは国際バカロレア認定校で既にノウハウを蓄積。世界的なネットワークを駆使することで、公立の学費でプログラムの導入を実現した。

独自教育で私立も人気

 中高一貫校は「中等教育学校」「併設型」「連携型」に種別され、府立の「富田林」(富田林市)、市立の「咲くやこの花」(大阪市此花区)や「水都国際」の3校はいずれも併設型だ。高校入試がない点や中学、高校の指導範囲を入れ替えることが可能な点などがメリット。

 このうち、17年開校で唯一府立の富田林は初年度入試が定員120人に対し志望者603人で倍率5・02倍、18年度は4・14倍と高い人気がうかがえる。

 国際的科学技術人材の育成を目指す文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定校として、京都大iPS細胞研究所(京都市)での研修など実践的な教育内容で注目されている。

 府教育庁高校再編整備課の担当者は「6年間じっくりと学べることは子どもたちにとってメリット。生徒たちの学力面は順調に伸びている」としている。

 一方、私立の中高一貫校も独自の存在感を放つ。常翔学園中・高(大阪市旭区)は、思考力や判断力など現代人に求められる能力を学ぶプログラムを他校に先駆けて導入。カリキュラムのみならず、2週間に1回は直接保護者に電話し、生徒の様子を伝えるなどの対応が高い評価を得ている。

 大西首席指導主事は、「水都国際」など中高一貫校の受験を考える生徒たちに対して「英語はできなくても、日常で何かに興味を持って追究してみようとする生徒に受験してほしい。21世紀型の課題探求型の学びの能力を身に付けて卒業してもらえたらうれしい」と話している。


水都国際開校で、学習塾も受験対策に躍起

個別指導で対応


▲「中高一貫校対策のノウハウを生かしたい」と語る原部長
第一ゼミナール 中学受験支援部 原晃部長

 関西を中心に「第一ゼミナール」を展開するウィザス(大阪市中央区)は、2017年に開校した大阪府立富田林中・高の合格者を2年連続で60人近く輩出。その実績を基に、水都国際中・高の受験対策を考えている。

 「水都国際」について同社中学受験支援部の原晃部長は、定員を大幅に上回って参加が抽選となった学校説明会の様子を振り返り「先進的な授業内容で人気は高い」と実感。学校の立地が大阪の中心部から外れ、交通の便はよくないが「補って余りある授業内容の濃さがある」とみている。

 一方、新設のため入試問題が予測できないことなどから、志望者には集団指導ではなく、個別指導で対応する方針だ。

 原部長は「中高一貫校対策のノウハウはある。中学、高校両方の受験対策をしてきたメリットを生かしたい」と話す。


作文指導で自己表現力磨く


▲独自の作文カリキュラムの強みを語る秋田エリア長
開成教育セミナー クラス指導部 秋田純一エリア長

 中学受験で屈指の合格実績を誇る「開成教育セミナー」は、いち早く「水都国際中・高」の受験対策に乗り出している。同じ大阪市立の「咲くやこの花中・高」の昨年度入試では合格者の6割超が同塾生。本年度も「水都国際」と「咲くやこの花」で計80人の合格者目標を掲げている。

 同塾が新設した「水都国際」受験コースは市内17教室で小学5、6年の約150人が受講。20人未満の少人数クラスで徹底した作文指導や日々の80字記述トレーニングを行い、毎週、教員が個別添削する。書くことに慣れさせ、自己表現力を磨く狙いだ。

 入塾説明会のたびに「水都国際」の資料を求める保護者が殺到。クラス指導部エリア長の秋田純一さんは「7、8倍の高い競争倍率が予想されるが、市教委が6月に発表した出題傾向の予想は的中し、既に対策はできている」と話す。


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