「アイドルの教科書のような作品」「アイドルの哲学が詰まったドキュメンタリー」……ファンからのそういった感想も多く見られるアニメ「少年ハリウッド」。そんな同作の最終話となる第26話を完全版にした「少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR YOU-完全版」が、12月に東京・池袋HUMAXシネマズにて1週間限定で上映される。
これを記念し、コミックナタリーでは「少年ハリウッド」の魅力に迫る特集を展開。かねてよりインタビューやラジオなど、さまざまな場所で「少ハリ」ファンを公言している広瀬ゆうきに、「少年ハリウッド」の魅力とは何か、改めてその思いをじっくりと聞いた。A応Pとしてユニット活動にも励む彼女が「少年ハリウッド」から学んだこととは? 作中のエピソードや名セリフとともに紹介していく。「少ハリ」ファンはもちろん、「少ハリ」をまだ知らない人、“アイドル”について思うところがある人は一読してほしい。
取材・文 / 熊瀬哲子 撮影 / 石橋雅人
2014年7月より第1期、2015年1月より第2期が放送され、全26話にて展開されたアニメ。かつて人気を博したアイドルグループ・少年ハリウッドの名を引き継いだ、カケル、マッキー、キラ、トミー、シュンからなる新生少年ハリウッドを中心に、“アイドル”とはどんな存在か、深く掘り下げられていく作品だ。
作中には初代少年ハリウッドのメンバーや、少年ハリウッドが所属するノエルジャパンエージェンシーのシャチョウ、マネージャーのテッシーこと勅使河原恭一が登場し、少ハリのメンバーたちに時に試練を、時に助言を与えていく。1話まるまる使って少年ハリウッドが舞台を上演する第5話「エアボーイズ」、同じく1話を通して音楽番組に出演する姿を映した第10話「ときめきミュージックルーム」など、彼らが実際にアイドルとして活動している姿を描く回も話題となった。
2011年には橋口いくよの小説「原宿ガール」を原案に、「原宿ガール」では女性アイドルだった設定を男性に置き換えた舞台「少年ハリウッド」が上演された。同じく2011年、小説「少年ハリウッド」が出版され、アニメ「少年ハリウッド」では、同小説の15年後を舞台としたオリジナルストーリーが繰り広げられている。
「少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR YOU-完全版」は、2016年に行われた「TVアニメ『少年ハリウッド』第26話を完全版にさせたい!応援プロジェクト」と題したクラウドファンディングにて集められた支援金額により完成した映像。クラウドファンディングでは最終目標金額の5000万円を大きく上回る、約6000万円もの支援が集まった。
「HOLLY STAGE FOR YOU」では、全編にわたり少年ハリウッドのライブシーンが繰り広げられ、CGが用いられる昨今では珍しく、そのパフォーマンスのすべてが手描きにて制作されている。完全版では、TVシリーズでは観ることのできなかったソロメドレーを含む全楽曲が映像化されており、エンドロールを合わせると約1時間の映像に仕上がった(参照:「少年ハリウッドはもっと夢を見られる」約60分の手描きライブ上映会で新展開)。劇場では、12月22日から28日まで東京・池袋HUMAXシネマズにて1週間限定上映が予定されている。
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- マッキー(甘木生馬)
- 高校中退後、ひょんなことからスカウトされ、新生少年ハリウッドのリーダーとなる。不器用ながらいつだって一生懸命なメンバー思いの最年長。ハンパなことは嫌いな少ハリの仏恥義理魂(ぶっちぎりだましい)担当。
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- キラ(佐伯希星)
- 子供の頃、ドラマの子役として活躍し小さな人気を博した。その後、世間からは忘れられていたが、新生少年ハリウッドの一員となりアイドルとして再スタートを切る。最年少ながらプロ意識の高さはピカイチ。少ハリの希望の星担当。
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- カケル(風見颯)
- バイト先でシャチョウにスカウトされたことをきっかけに、部活の延長的感覚で、少年ハリウッドが拠点とする劇場・ハリウッド東京に通い始める。穏やかな性格がゆえに、アイドルがこの世においてどういう存在なのか、肌で学び取っていく柔軟さがある。少ハリの未来BOX担当。
第一印象は「よくわからないアニメ」でした
──広瀬さんは各所で「少年ハリウッド」のファンであることを公言していますが、「少ハリ」とはどのように出会ったのでしょうか。
もともと私はアニメが好きで、アニメが好きな女の子たちが集まるA応Pというユニットでも活動しているので、「少年ハリウッド」も新作アニメの1つとして観始めたんです。アイドルアニメって、「私たちはスーパーアイドルになるんだ!」っていう、夢や希望、ワクワクやキラキラが詰まった始まり方をするものだと思っていたんですけど、「少ハリ」は第1話を観て、「なんだろう、このモヤッとする感じ」と思ったんですよね。
──第1話は少ハリのメンバーがアイドルらしい自己紹介を恥ずかしそうに練習していて、見ているこっちまで恥ずかしい気持ちになってきますよね。
そうそう(笑)。カケルくんのモノローグも独特で、今までのアイドルアニメで語られてきたような言葉ではないし、「よくわからないアニメだな」っていうのが第一印象でした。でも、観続けていくうちに「私はとんでもない作品を観ている」って気付いたんです。最初の頃はみんなキラキラしていないし、やっていることもカッコよくないし、正直推せないんですよ。だけど観ていくうちに、彼らのやっていること、発している言葉、一挙手一投足に全部意味があって、彼らがアイドルになるために必要なことをやり尽くしているんだなと。キラキラと輝くアイドルになるまでの駆け出しの期間をちゃんと見させてもらえているんだと感じました。
──それをどんなところで感じていったのか、印象に残っているエピソードをお伺いしていきたいです(※ここからは作中のネタバレが含まれるため、新鮮な気持ちで「少年ハリウッド」を楽しみたい人は、全26話を観てから読むことをオススメする)。
伝説的だなと思ったのは、「本物の握手」の回ですね。
第16話「本物の握手」
「俺、ライブよりずっと握手だけしていたいくらい」って言い出すメンバーが出てくるほど、みんな握手会に慣れちゃうんですよね。それを見ながら「ああ、この子たち悪い方向に行ってるな」と。あくまでメインディッシュはライブであって、握手会はデザートみたいなものだと思うんですよね。私もA応Pの活動の中で握手会はやりますし、ファンの人と触れ合う時間がなくなったら死ぬっていうくらい握手会は大好きなんです。だけど、ファンの人と友達みたいになったり、恋人のようにベタベタしたりするのも違うんじゃないかって、そう感じるのはなぜなんだろうって考えていたんです。そんなときに観た「本物の握手」の中で、カケルくんと握手をしたファンの子がこう言ったんですよね。
それを聞いて、カケルくんは「今日したのが本物の握手かどうかは、今はまだ誰にもわからない。俺たちが本物じゃないから」「俺たちは、今日した握手を宝物にしてもらうために、本物にするために、1回の握手をずっとずっと大切にしてもらうために、本物にならなきゃいけない……のかもしれない」と気付くんです。
──それを受けて、劇場での握手会の再開を決めたシャチョウが「今は宝物の欠片をたくさんまきましょう。いつかその欠片が宝となって、広い客席で一斉に何百万という輝きに変わる瞬間を、私は見たい」と言うのも素敵ですね。
私もこのエピソードを観てから、「ファンの方と仲良くなろう」とか「もっと好きになってもらおう」と思うだけでなく、今日のこの握手をファンの人が10年後に思い出したとき、その思い出が宝物になっているような、そんな存在になろうと思いながら握手をするようになったんです。そうすると自分自身、仲良くなって人気を得ればいいんじゃないと気付いたし、もっとパフォーマンスを磨いていこうとか、具体的なビジョンが広がっていく。そうすると、ファンの方も「もっとこの子に伸びてほしい」と思ってくれるんじゃないかなって。そう思ってもらえたらいいなと感じながら握手するようになりました。
──触れ合いがメインになってしまうとその瞬間を楽しむだけで終わってしまいますけど、なぜアイドルが握手をするのかを考えたとき、その理由がこのエピソードにはある気がします。
そうなんです! なので「少年ハリウッド」は全アイドル好きもそうですし、全アイドルの方にも観てほしい。だから仲のいいアイドルの子には勧めているんです。「少年ハリウッド」はホントに私の教科書みたいな存在で。活動していて迷ったり困ったり、スランプになったりすると、「少年ハリウッド」を観るようにしてるんです。そうすると答えがそこにあるんです。