今はセントレア空港の中にいる。
大連(中国)いきの飛行機のチケットは手に入れた。
でも、出発にはまだ時間がある。
ということで、日本で最後のご飯を食べに行こうと思う。
日本での最後の晩餐(ばんさん)なら、やっぱり日本食でしょ。
それもなるべく日本的で、できるだけ安いものがいい。
ということでおにぎりに決定。
さっそくセントレア空港にあるコンビニへとむかった。
前回、日本の食文化である「おにぎり」についてかいた。
日本の食と歴史にくわしい樋口清之氏によると、日本人がおにぎり(にぎり飯)をつくりだした理由は「米の保存」にあるという。
それを防ぐために生まれたいちばん素朴な方法が、‘握り飯’である。握り飯をつくると、外側は空気に接触するから、かびが生えたりするが、中は腐らない。
そこで、握り飯の表面に発酵作用を止める塩をまぶしたり、ミソで包んだり、あるいは焼いて表面を炭化させておく方法を考えついた。
「梅干と日本刀 樋口清之」
この握り飯の考え方の延長に「お餅(もち)」がある。
つまり、にぎり飯(おにぎり)と餅は同じ考え方から生まれているという。
中国や韓国(朝鮮半島)でも、人々は昔からお米を食べていた。
でも、おにぎりをつくって食べるという食文化は生まれなかった。
この前は、おにぎりについての中国人の見方を紹介した。
ということで今回は、「韓国人からみたおにぎり」ということについて書いていきたい。
トッポギは韓国人にとって安くて身近な食べ物。
日本人にとってのおにぎりのようなもの。
今の韓国のコンビニでは、「三角キムパプ(三角おにぎり)」を売っている。
でもこのように、コンビニの商品におにぎりが定着したのは2000年のころからだという。
だから新しい食べ物ではある。
でも韓国には、その前から「チュモクパプ」や「キンパプ(キンパッ)」という食べ物はあった。
チュモクパプ
チュモクパプとは「チュモク(にぎりこぶし)+パプ(ご飯)」のこと。
上の写真がそれ。
キンパプはご飯をノリで巻いて食べるという食べ物で、日本でいうのり巻きのこと。
キンパプは、もともと日本から朝鮮半島につたわった食べ物だ。
日本の海苔巻きに由来し、日本との行き来が盛んになり始めた19世紀末から韓国でも日本の海苔巻きが食べられ始め、韓国併合以降の韓国半島で、ごま油を使うなどのアレンジが加えられ派生したものである。
(ウィキペディア)
だから韓国でも、むかしはキムパプとは言わずに「ノリマキ」と日本語で言っていた。
でも、韓国が日本の統治から解放された後に事情がかわる。
「ノリマキ」ではなくて「キムパプ」と呼ばれるようになって、今ではキムパプとして韓国人のあいだに定着している。
韓国人のなかでも、キンパプが日本のノリマキだったことを知らない人は多いと思う。
のり巻きだけど韓国では酢をいれないで、その代わりにノリにゴマ油をぬっている。
韓国人はゴマ油が大好きだからこうするらしい。
日本ののり巻きに独自の変化をくわえることによって、韓国のキンパプという食べ物になった。
ソウルの広蔵市場(カンジャンシジャン)。
韓国の庶民っぽさが感じられる場所。
でもボクが行ったときは、人が多くて座ることができなかった。
韓国人に言わせるとここの食べ物はちょっと高めらしい。
ソウルの広蔵市場には、「麻薬キムパプ」という有名なキムパプキがある。
「麻薬のように、一度食べたらやめられなくなるほどおいしいキムパプ」ということらしい。
でも友人の韓国人に言わせると、今ではそれほど有名でもないらしい。
「最近では、おいしいキムパプがたくさんありますからね。麻薬キムパプも悪くはないですけど、大したことないです」
とそっけなく言う。
それにしても、食べ物の名称で「麻薬」という言葉を使うところが日本人の感覚とはちがうと思う。
韓国の情報サイト「ソウルナビ」から。
ということで、韓国には日本のような三角のおにぎりはなかったけれど、チュモクパプやキムパプという食べ物はあった。
でも、韓国ではおにぎりは嫌われていた。
中国人とおなじように「冷たいご飯は食べたくない」という考えがあったことにくわえて、韓国ではおにぎりに対して悪いイメージがあったから。
ウィキペディアにはこうかいていある。
中国や朝鮮半島では「炊いた飯は温かい状態で食べるもの」という意識が強く、おにぎりなどの冷や飯というものに対し「施しを受けた下賤な者が仕方なく食べる物」「やむを得ない場合の携行食」といった悪いイメージが強く根付いており
「下賤な者が仕方なく食べる物」
これはずい分ひどい表現だ。
日本中のおにぎりは激怒していい。
でも、韓国に精通したジャーナリストの黒田勝弘氏もコラムでこう書いている。
オニギリを意味する「チュモクパプ(つまり、げんこつ飯)」では絶対に売れない。「チュモクパプ」は下品(?)で貧しさと非常食のイメージを抜け出せないからだ。
韓国では、おにぎりについて「下品で貧しい」というイメージがあったらしい。
今でもチュモクパプなら、このイメージがあるのではないかと思う。
韓国人のあいだでは、チュモクパプに対して「下品で貧しい」という悪いイメージが定着していた。
それでもコンビニでおにぎりを売ろうと考えた人(日本人かも)が、「チュモクパプ(げんこつにぎり飯)」という名称を「三角キンパプ(のり巻き)」にして売り出した。
するとこれが韓国人に大うけする。
これが今に続く韓国でのおにぎり人気につながる。
続きは次回に。
こちらの記事もいかがですか?
イギリスという国とは?階級社会・日本の平等・アメリカ人との違い
満州の旅②東南アジアのルーズな時間感覚!ゴムのようにのびる。