オーダーロード~理想の道路をあなたに~他 短編集 作:善太夫
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エ・ランテルに魔導王国が誕生してしばらく経ち、魔導王国に二つの建設会社が出来た。
一つは国営ナザリック道路開発事業団。
もう一つはエモット・アンド・バレアレ・ゴブリン共同開発事業団だ。
国営ナザリック道路開発事業団ではアンデッドとゴーレムによる大規模事業を中心に、エモット・アンド・バレアレ・ゴブリン共同開発事業団ではゴブリン達による低価格帯の工事を中心にそれぞれ事業を拡大していた。
エモット・アンド・バレアレ・ゴブリン共同開発事業団、略称EBGの社長エンリ・エモットの朝は早い。
三千もの社員をそれぞれの現場へ向かう馬車に振り分ける。
なぜ、社長自ら率先して仕事をするのか?
率直な疑問を彼女にぶつけてみた。
「ゴブリンさん達が頑張ってくれているのだから、これくらいは当たり前」
「社長はこういう人なんですよ」
屈託のない笑顔で返す社長を眩しそうに見ながら話すジュゲム営業部長の言葉が印象的だった。
せっかくなのでジュゲム営業部長に何故道路を作るのか聞いてみた。
「道路って心と心を繋ぐもんだって俺たち思っているんですよ。それに出来上がった道路を歩くのにゴブリンも人間もない。それが魅力ですね」
営業部長はそう言ってにこやかに笑った。かつてゴブリンと人間とがこのように共存する社会があったであろうか?
種の違いを超えた心と心の橋渡し。
そんな道路をあなたの街にも作りませんか?
※ ※ ※
「んひひひ。どうっすかね?ナザリックの粋を集めて作った“こまーしゃる”っすよ?」
「何だか私、顔色悪く見えないかしら?」
「そんな事ないっすけどね?ンフィーちゃん、なんか言ってやればっす」
「そ、そうだよ。エンリはいつも綺麗だよ」
「…ンフィーってば…」
「ハイハイ。お二人さん、いちゃつくのは余所でして欲しいっすね」
「ごめんなさい…」
※ ※ ※
かつて“口だけ賢者”が発明した“てれびじょん”なる魔法道具が魔導王国にて初めて実用化され、そこに流されたCM第一号は大きな反響を呼び、国家の壁を越えた一大道路開発ブームとなった。
その結果、インフラの整備や輸送力の強化がなされ、後の大産業時代の到来の基礎となったのだった。
※ ※ ※
「てな感じの夢を見たっすよ」
いつものようにフラリとやって来たルプスレギナは言った。
エンリはふと、ンフィーレアとの将来を垣間見たような気がして、つい、紅くなった。
戦乱の中で両親を亡くした自分達でも幸せになる未来が来るかもしれない、それがとても嬉しかった。