ムハンマド皇太子「犯人は処罰する」 サウジ記者殺害で初コメント

Crown Prince Mohammed bin Salman Image copyright AFP
Image caption サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(33)は24日、同国政府を批判していたジャマル・カショジ記者(59)がトルコで殺害された事件について、全ての「犯人」を処罰すると約束した。

リヤドで開催されている投資会議に出席した皇太子は、「この犯罪は全てのサウジ国民にとってつらい出来事だった」と述べた一方、トルコとの関係悪化は許さないと話した。

サウジ政府は先に、国の実質的な支配者にあたるムハンマド皇太子がカショジ記者の殺害計画に関わったことを否定している。

カショジ氏は今月2日、在イスタンブールのサウジ総領事館を訪れた際に死亡した。サウジ政府は、この殺人が「ならず者の政府関係者」によるものだと非難している。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、カショジ氏はサウジの情報員など政府関係者による綿密に計画された「政治的殺人」の被害者だと述べた。

ムハンマド皇太子の主張は?

ムハンマド皇太子は今回、カショジ記者が総領事館内で殺害されたとサウジ政府が認めてから初めて、公の場で発言した。

皇太子は、カショジ氏殺害は「正当化できない凶悪な犯罪」だと述べ、「この犯罪に関わった人物を追及し(中略)最後には正義が勝つだろう」と約束した。

また、トルコとは良好な協力関係にあると説明。「この痛々しい状況からサウジとトルコの間に不和をもたらそうとする人たちがたくさんいる。その人たちに言いたい、そんなことは絶対にできないと」と話した。

「絶対に不和は起こらない」

23日から3日間行われた投資会議「フューチャー・インベストメント・イニチアチブ」は、スイスで毎年行われる経済会議になぞらえて「砂漠のダボス」とも呼ばれている。サウジアラビアにとっては重要な会議だが、今回の事件を受け、多くの西側諸国の政財界要人が欠席している。

The Saudi crown prince (R) meets Khashoggi's son, Salah, in Riyadh Image copyright EPA
Image caption カショジ氏の息子のサラフ・ビン・ジャマルさん(左)と対面するムハンマド皇太子

サウジ側は投資会議の中で、ビジネスはいつも通り進んでいることを示したかったようだが、ハリド・アル・ファリハ・エネルギー相は23日、カショジ氏殺害事件によって「危機」が訪れていると語った。

この日には、皇太子とサルマン国王がカショジ氏の家族と面会した。

ムハンマド皇太子は、主要産油国サウジの実質的な指導者。内政改革で称賛を浴びる一方、イエメンやカタールとの外交問題では大きな批判を浴びており、今回の事件でもその関連性が疑われる中、皇太子の地位から降りるべきとの声もあがっている。

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捜査の進行状況は?

鍵となるのはカショジ氏の遺体だが、まだ発見されていない。

捜査当局は、総領事館の敷地内にある井戸に注目しているもよう。

捜査についての報道は錯綜している。トルコのアナトリア通信は当初、サウジ側が総領事館の捜査を拒否していたと伝えていたが、テレビ局のNTVはその後、許可が下りたと報じた。

23日には、サウジの外交官専用車からカショジ氏の所持品が見つかったというニュースをめぐって、情報が錯綜した。

エルドアン大統領は、トルコはカショジ氏が「残酷な」殺人計画によって命を落とした強力な証拠を得ており、容疑者は事件のあったイスタンブールで裁判にかけるべきだと主張している。

トランプ米大統領の批判

ドナルド・トランプ米大統領は24日、米紙ウォールストリート・ジャーナルの取材に対し、これまででもっとも強い姿勢でサウジ政府を非難した。

責任は誰にあるかという質問に対しトランプ氏は、「今の時点で、(ムハンマド)皇太子は国内の色々なことをますます動かすようになっている。国を動かしているのが彼なのだから、誰に責任があるかと言ったらきっと彼だろう」と答えた。

大統領は23日、ホワイトハウスでの記者会見で、「最初の発想が非常にまずくて、それをお粗末に実行して、その隠ぺいの仕方は史上最悪だった」と語っている。

米国は、カショジ氏殺害に関わった人物のビザ(査証)をはく奪するとしているが、マイク・ポンペオ国務長官は、処罰はこれだけで終わらないと話した。

サウジ政府は、これまでにサウジ国籍の18人を逮捕したとしている。

24日にはテリーザ・メイ英首相も批判に加わり、殺害計画に関わった疑いのある人物は全て、英国への入国を禁止されるだろうと述べた。

サウジ政府の説明の変化

サウジアラビアはカショジ氏の消息について矛盾した説明を繰り返してきた。

当初はカショジ氏は総領事館を生きて退出したと主張していたが、その後は総領事館内で起きた「殴り合いのけんか」で死亡したと説明した。

21日になり、サウジのアデル・アル・ジュベイル外相がカショジ氏が殺害されたと認めたものの、この「勝手な計画」を政府幹部は知らなかったと話した。

ロイター通信は21日、サウジ当局関係者の話として、サウジアラビアへの強制送還に抵抗した記者が、もみ合いとなった拍子に首を絞められて死亡したと報じた。遺体はじゅうたんに巻かれ、地元の「協力者」の手で処理されたと伝えている。

(英語記事 Prince vows to punish Khashoggi 'culprits'

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