唐澤貴洋(弁護士)

 10月15日、内閣府の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」の第9回会合が開催された。

 だが、ブロッキング賛成派と反対派の意見が平行線をたどり、両論併記の中間とりまとめすらできなかっただけでなく、次回開催予定が決まっていないなど、法制化の先行きについて見通しが立たない状態になっている。本稿では、ブロッキングの法制化の行方について私見を述べさせていただく。

 そもそも、なぜブロッキングが必要とされるのか。これは、権利侵害サイト「漫画村」「Anitube」「MioMio」における著作権侵害について、現在取り得る手段では有効に対応できないからだ。

 その際、インターネットサービスプロバイダ(ISP)がブロッキングを行うことにより、一般利用者の「通信の秘密」を侵害する危険性は存在するが、緊急避難(刑法第37条)という観点から、ブロッキングが通信事業者による電気通信事業法違反にならないとされている。

 また、権利侵害サイトが著作権侵害をしていることについては、疑いはなく、誰でもアクセスし得る状態においては、「現在」の危難は存在している。そして、他に取り得るべき侵害性の少ない手段があるかどうかが検討される。
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
 この点については最近、権利侵害サイトが利用していたコンテンツ配信ネットワーク(CDN)である「クラウドフレア」について法的手段を取れることから、ブロッキングに正当性がないとされている。

 これは、①クラウドフレアに対する米国における裁判手続きの利用により、漫画村についての利用契約者情報の開示に成功したこと、②クラウドフレアに対して、データを所蔵しているサーバー管理会社の情報開示及び同社に残る権利侵害記事のキャッシュデータの削除請求を命ずる仮処分決定が出たこと、を理由としている。これらの法的対応については、敬意を表したい。しかし、以下のような問題がいまだ残っている。

 ①については、米国の裁判手続きにはそれなりの費用がかかる。この費用を被害者に負担させること、そして他国の司法制度の利用まで求めることを含めているのか、議論されなくてはならない。