具体的には次の2点をもって立法事実がないと主張しました。
① ブロッキング以外の有効な海賊版対策がたくさんあるのに、まだ実行されていない。すべてのブロッキング以外の方法を試して効果がないと分かった時点で、ブロッキングを検討すべきである。
② そもそも「漫画村」による被害額3千億円という根拠がデタラメである。しかも、そのデタラメな数字が出たことによって、国民や政府が誤解し、ブロッキングという誤った議論が始まったので、白紙に戻すべきだ。
そして立法事実がない以上、そのまま法制化を進めることは憲法違反の可能性がある。だから、法制化の可能性を残したかのような「中間まとめ」を作成することは絶対に許さない、と繰り返したのです。
これが反対派委員の皆さんが、両論併記ではなく、自分たちの意見だけを「中間まとめ」に記載するべきだと主張した表向きの理屈です。さらに追加要素として、①のブロッキング以外の代替手段があって実行されていないことの証拠に、今年の夏、米国の裁判で海賊版サイトの運営者の個人情報が特定されたという情報が、第9回会議の直前に公表されました。
ここでようやく、第9回会議で何が焦点となって議論されたかを説明する準備ができました。焦点は「立法事実がないという反対派の主張は正当なのかどうか」ということです。
まず、ウェブサイトへのアクセスを効率化するサービス「CDN(コンテンツ配信ネットワーク)」大手、米クラウドフレア社に対する米国での訴訟手続きを通じて、「漫画村」運営者の個人情報が特定できたというニュースに関する報告がありました。一方、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の後藤健郎委員からは、同じクラウドフレア社を使った「Anitube」というブラジルのサイトでは個人も特定し、現地の警察に告訴状を提出して容疑者の家宅捜索まで行ったにもかかわらず、結局サイトを停止することができなかったということ、また中国の海賊版サイト「MioMio」はCDNを使っていないことが指摘されました。
今年4月に日本政府がブロッキングも有り得ると名指しした海賊版サイトは3つあります。漫画村とAnitubeとMioMioです。そのうち漫画村については、たまたま個人情報の特定ができたということですが、残りのうちの1つは運営者の個人情報が特定できてもサイトを閉鎖できませんでした。また、もう1つはCDNを使っていないので、同様の方法で運営者を特定することはできません。つまり、「ブロッキングが不要」であるとまでは、まったく言い切れないのです。