※感想とても嬉しいのですが、ご指摘はどうかソース付きでお願い致します……!
直す前にソース確認しないと修正も出来ないので。
(作者様のTwitterとかArcadiaは追えてないので、指摘だけだとソースが見つけられず修正が出来ない事があります)
階層巡り一日目を終え、ぐっすりと眠った悟は体の微妙な感覚に目が覚めてしまった。時刻は、予定していた起床時間よりも一時間も早い。
(……おかしいな?俺、こんなに早起きとか出来なかった筈なんだけど……)
彼がアインズ・ウール・ゴウンではなく、鈴木悟という人間だった頃。彼はいつも目覚ましのアラームで叩き起こされるという生活で、一度もアラームが鳴る前に起きたことが無かったのだ。安眠&爆睡というに相応しい寝付きで、タイムリミットの限界まで睡眠を取る体になっていた彼が、予定時刻よりも一時間も早く目覚める。……それは、かなりの異常事態と言えた。だが、悟本人はその事には気付いていない。
(何か、体がソワソワしてる、というか……落ち着かない?うーん、アンデッドだったときは沈静化されてたし、何だろう、コレ?)
首を傾げながらも悟はベッドから起き出し、いつものように朝の準備を始める。もう、メイドが控えていても気にせず準備出来るようになっていて、悟は自分の順応性にほんの少しだけ驚きを感じていた。
「おはようございます、アインズ様」
悟が着替えを済ませ寝室から私室へ移動すると、デミウルゴスが恭しく一礼して悟を出迎える。その刹那、悟は何か甘い香りを嗅いだような気がした。
「おはよう、デミウルゴス。今日は六階層に行きたいと思っているのだが……」
デミウルゴスが引いた椅子に腰掛けてそう言うと、デミウルゴスはインベントリから何か書類を取り出した。
「かしこまりました。では、お供致しますが……先にこれを。昨晩アルベドが持参して、アインズ様にお見せするように、と……」
苦々しげな表情でそう言ったデミウルゴスから書類を受け取ると、悟はその書類に目を通してゆく。
「……ナザリックの、収支報告書、だよな?」
「はい、左様でございます。私も昨夜、アルベドにこの書類はアインズ様では無くパンドラズ・アクターに渡すように言ったのですが……アインズ様にお渡しすれば分かる、との一点張りでしたので。念の為私も確認致しましたが、不審な点はどうにも見つけられず……」
デミウルゴスの言葉を聞きながら、モモンガは収支報告書に目を通してゆく。微かに香る甘い香りの出所は、どうやらこの書類らしい、と気付いたからだった。
「……あ、れ……?」
くらり。
一瞬、目眩がして。悟は、自分の頭を押さえると、書類をテーブルに投げ出す。
「アインズ様っ!?」
デミウルゴスが咄嗟に駆け寄るが、悟は小さく手を振ってそれを制する。
「……デミウルゴス、アルベドを呼んでくれないか?この書類の件で、訊きたいことがある」
そう言われては、断ることなど出来なくて。デミウルゴスは悟に一礼するとその場から辞した。
そして、数分の後にアルベドが悟の部屋にやって来た。
「お呼びでしょうか、アインズ様」
その瞳は、やけにギラギラと輝いていて。デミウルゴスも八肢刀の暗殺蟲も、警戒心を露わにしている。
「あぁ、呼んだ。……アルベド。この書類は何だ?昨夜お前がデミウルゴスに渡したものだが」
悟はそう言うと、テーブルの上に散らばっている書類を指さす。すると、アルベドは欲の滲んだ瞳で悟を見つめながら口を開く。……その唇は、濡れて光っていた。
「はい、ナザリックの支配者たるアインズ様に目を通して頂きたい書類だったのですが……昨夜は既にお休みでしたので、デミウルゴスに預けました」
微笑みながらのその言葉に、デミウルゴスは苛立たしげにアルベドを睨み付ける。だが、アルベドはそんなデミウルゴスを無視してただひたすらに悟を見つめ続ける。その熱の篭もった視線は、アルベドがサキュバスであると見た者全てが納得するくらいに淫らな空気を孕んでいて。それを見守るデミウルゴスも八肢刀の暗殺蟲も、即座に飛びかかれるよう激しく警戒している。そんな空気の中、悟は微笑みながら口を開く。
「……アルベド。私はお前が同じミスは繰り返さないと信じているのだが……違うか?」
「はい、アインズ様。アインズ様にナザリックの防衛を任されておりますし……守護者統括として、同じ愚を繰り返すような真似は致しません」
自らの胸元へ手をやり、胸を張りながらそう答えるアルベドを見て、悟は笑みを浮かべながら命じる。
「では、アルベド。私を傷付けたり殺めたりしたくないのであれば……その場から動くな」
「……えっ?」
「アインズ様!?一体何を……!!」
悟の言葉に、大きく目を見開くアルベドと、今にもアルベドから悟を引き離そうとするデミウルゴス。その両者を片手をあげる事で制し、悟は一歩アルベドへ近付く。
「アルベド。私は、お前の忠心を信じている。……だが、お前がサキュバスとしての本能を優先させるようであれば……私の見る目が無かった、という事になるんだろうな」
苦笑しながらのその言葉に、アルベドは即座に口を開く。
「そんなっ、アインズ様!私は、アインズ様の信を失うような事など……!」
「そうか。なら、その場で決して動くな。……私が、何をしても、だ」
悟のその言葉に、アルベドは硬直したかのようにその場で棒立ちになってしまう。それを見て、悟は更にアルベドに近付くと、その頭に掌を乗せる。
「あっ……アインズ、様……?」
「アルベド。知恵者のお前らしい手だとは思ったが……。私の意志を無視するようなやり方は感心しないな。デミウルゴスでも気付けぬよう、微調整をしたのも素晴らしいとは思うが……詰めが甘かったな。確かに今の私は非力なレベル1の人間種だが……状態異常に無抵抗、という訳では無いぞ?」
笑いながらそう言うと、悟はアルベドの頭を撫でる。情欲に潤んだ金色の瞳を真っ直ぐに見つめながら。……撫でているのとは逆の手には、燃え尽きた巻物。
「アインズ様……アインズ様……ぁっ……」
その手の微かな動きですら、アルベドは頬を紅潮させ息を荒げている。その様子に、もう限界だったのか護衛の八肢刀の暗殺蟲とデミウルゴスが一斉に動いた。
「アインズ様っ!!これ以上は危険です、どうかお下がり下さいっ!!」
「あぁ、流石に限界か。仕方ない。……アルベド。今日はこれで満足してくれ。お前が本気になったら、私は本当に死亡してしまいそうだからな……」
八肢刀の暗殺蟲数匹と、デミウルゴスが作った壁の後ろ側から悟がそう声を掛けると、アルベドは潤んだ瞳のままこくり、と頷く。腰の羽根をバッサバッサと派手に動かしながら。
「……はい、アインズ様……。お慈悲を賜り、ありがとうございます……」
そう言うと、アルベドはフラフラと歩いてアインズの部屋から出て行った。そして、その気配が完全に消えた頃……悟は、大きく溜息を吐いた。
「……何とか、成功したようだな……」
「アインズ様!一体、何が……!?」
そう訊いてくるデミウルゴスに、悟は椅子に腰掛けるとテーブルの上に用意してあった冷えた水を一息に飲み干し、一息つくと説明を始める。
「デミウルゴス。お前は昨晩、あの書類を確認した、と言っていたな?」
「はい。隅から隅まで、きちんと目を通しました」
「それで異常が無い、って事は、書類の内容では無い訳だ、アルベドが私に見せたかったのは。ナザリックでも知恵者で知られるお前が気付かないのだから、暗号や呪文では無い。……今の私にだけ効果がある物だとしたら、高レベルのお前や僕たちは気付かない。アルベドも、よく考えた物だ」
小さく溜息を吐きながらそう言われて。デミウルゴスは蒼白になる。そして、即座にその場に跪いた。
「申し訳ありません、アインズ様……!私の警戒が及ばず、アインズ様を危険に晒してしまうなど……!今後はこのような事が起こらぬよう、低レベルの僕も警備に加えます!」
デミウルゴスが跪くやいなや、八肢刀の暗殺蟲たちも一斉に跪く。……悟の視界に、どうにも微妙な光景が広がる。それを見て、悟は更に溜息を吐くと彼らに声を掛ける。
「もう過ぎた事だ、気にするな。顔を上げろ。まぁ、暫くはアルベドも大人しくしているだろうが……一応、警戒は怠るな。さて、そろそろ朝食にしたいのだが……準備は出来ているのか?」
悟のその言葉に、デミウルゴスは慌てて立ち上がると、メイドたちに指示を出す。その行動に、八肢刀の暗殺蟲たちも天井に上がり、再び警護を開始した。
(……パンドラズ・アクターに装備を持って来て貰ってて助かったよ……。じゃなかったら、確実に俺アルベドの誘惑に堕ちてたっ……!!<魅了>の巻物も効いたかどうかは謎だけど、使って良かったと思うし……!)
悟が内心そんな事を思っているなんて……その場の誰もが思いもしなかった。
sideアルベド
頭に、まだアインズ様の手の温もりが残っている。あぁ、この温もりが消える前に、部屋に戻らなくては……!アインズ様のお部屋と私の部屋はすぐ近くだけど、一刻も早く部屋に戻らなければ……。
転がり込むようにして自室に戻り、鍵を掛ける。そして、ベッドルームへと駆け込んでアインズ様抱き枕に抱きつく。
「……あぁ……アインズ様……。やはり、お姿が変わってもその叡智は変わらないのですね……私の、愛しい人……」
私の浅知恵など、全て見抜いてらしたアインズ様。それなのに、アインズ様は私の頭を撫でて……優しい言葉を掛けて下さった。……私の瞳を見つめながら。慈愛に満ちた、黒曜石を思わせる美しい漆黒の瞳。その瞳には、私だけが映っていて……。いつも以上に甘く響くその美声で、満足してくれ、なんて言われたら、もう……。
「アインズ様……次は、次こそは……もっと、私にお慈悲を……」
アインズ様の柔らかな手が、私に触れて。熱く蕩けたここに、指を……。
「ぁっ……アインズ様、もっと奥へ……」
抱き枕のアインズ様に脚を絡め、より深く繋がっているようなイメージを脳裏に描き……先程のアインズ様の体温とお声を思い出しながら、私は快楽の海へと沈んでいった。
鈴木さんがアルベドの頭をなでなでする話が書きたかったのです。
魔王ロールでアルベドを手玉に取る鈴木さん。
そして、その手の温もりをオカズにするアルベド。(趣味)
アルベド、ちゃんと抜いたらお仕事してます。
有能ですよ、ちゃんと……!と、主張しときます。(笑)