すず散歩。その1の夜の話です。
……アルベド、ノーパン説を推したいけど王の使者で一応パンツ持ってる描写あるんですよねー。
黒山羊さんの日常の入稿で多忙のため、次更新は多分10月かと……。
詳しくは活動報告にて。
「あら、デミウルゴス。どうしたの?妙にピリピリしてるじゃない?」
優雅な笑みを浮かべながら、廊下を滑るように歩いてやって来たアルベドを目に留めると、デミウルゴスは目を細める。現在、悟は就寝準備中だ。デミウルゴスはメイドたちに悟の着替えを任せ、室外に出たばかりだった。
「……当然だろう。ナザリック内には凶暴な肉食獣が少なくとも二体は棲息しているんだからねぇ。アインズ様をお守りするために、警戒は幾らしてもし足りないくらいだ」
眼鏡のブリッジを押し上げながらデミウルゴスはそう言うと、さりげなく視線を天井に向ける。天井に張り付いている八肢刀の暗殺蟲たちも、警戒を露わにしている。先日、彼らの目の前でアインズがアルベドに押し倒された件は、八肢刀の暗殺蟲たちの心に深い傷として残っていた。もう二度とあのような失態はしない!と心に決めて、八肢刀の暗殺蟲たちは眼下のアルベドを見張る。
「……で。こんな夜分に一体何の用かな?アインズ様はもうお休みになっているんだがねぇ?」
笑みを浮かべながらの言葉であるが、その声音は尖っている。尻尾も、硬直したかのように静止したままだ。
「あぁ、アインズ様にお目通りをお願いしたい訳じゃ無いのよ?ただ、書類を渡して欲しいだけなの。デミウルゴス、明日の朝にでもアインズ様にこれを渡して頂戴」
アイテムボックスから取り出されたのは、何の変哲もない書類の束のように見える。デミウルゴスは警戒しつつも、差し出されたその書類をアルベドから受け取る。
「……ナザリックの収支計算表?こんな物を何故今?」
怪訝そうにそう言いながら、デミウルゴスはアルベドを睨め付ける。だが、アルベドはそんなデミウルゴスを全く意に介さず優しげな笑みを浮かべたままだ。その様子にデミウルゴスの苛つきは頂点に達しそうになるが、何とか冷静さを保つ。
「貴方には分からないかもしれないけど……アインズ様なら、きっと一目見ただけで理解して下さるわ。だから、貴方はソレを明日の朝アインズ様に渡すだけで良いのよ、デミウルゴス」
「そうですか。……因みに、この書類は急ぎの案件なのかい?私には取るに足らない書類にしか見えないのだがね。そもそも、この内容ならアインズ様より会計担当のパンドラズ・アクターに渡すべきだと思うのだが?」
隠しきれない苛立ちを滲ませながらデミウルゴスがそう言うと、アルベドはこれ見よがしに大きく溜息を吐く。
「……あら。アインズ様にナザリック随一の知者なんて言われているのに……随分と目の曇った守護者だこと。まぁ、此所で騒ぐとアインズ様にご迷惑にだし……貴方とこれ以上話すつもりは無いの。ちゃんと渡して頂戴ね?」
デミウルゴスをジッと見つめながら妖艶な笑みを浮かべると、アルベドはデミウルゴスに無防備に背を向けてリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで転移した。悟と同じフロアにある自室へと。
アルベドの姿が視界から消えると、途端に場の空気が弛緩した。
「……一体、何だったんだ今のは」
ゆっくりと肺から息を吐き、デミウルゴスは八肢刀の暗殺蟲を見上げる。
「今夜は特に警戒してくれ。私も増援を呼ぶ。分かったな?」
「勿論です、デミウルゴス様!」
デミウルゴスの言葉に、天井の八肢刀の暗殺蟲たちは一斉にそう答える。その四肢を蠢かせ、気合いを入れながら。その様子を尻目に、デミウルゴスは<伝言>を起動させ魔将たちを呼び寄せる。……その数、5名。高レベルのシモベたちが犇めいて、廊下が狭く感じるくらいの過剰戦力だ。
「デミウルゴス様、アインズ様のお召し替えは終わりました。どうぞ中に」
廊下にシモベたちが集まった頃、扉が開く。
「あぁ、ご苦労様。では、君たちはもう下がりたまえ。後は私が受け持とう」
メイドにそう答え、デミウルゴスはメイドと入れ違いに室内に入る。そして、室内の影の悪魔を呼ぶと先程の出来事を伝える。
「……そう言う訳だから、重々警戒を怠らないように。万が一の際は少なくとも、私とアインズ様が転移して逃げられるよう時間を稼ぐくらいはしてくれたまえ」
「畏まりました、デミウルゴス様」
デミウルゴスは影の悪魔のその答えに満足そうに頷くと、前室のソファに腰掛け、渡された書類に目を通す。……じっくりと内容を吟味しても、デミウルゴスにはソレがわざわざ夜更けに持ってくるような重要書類には思えなかった。
「……全く、アルベドは何を考えているのか。アインズ様にお渡しすれば分かるだと……?」
眉根を寄せて何度も書類を読み直すが、結局デミウルゴスにはおかしな点は見つけられなかった。
sideアルベド
「あぁ……愛しのアインズ様……明日、私は貴方様と結ばれるのですね……」
アルベドは自室に戻り、ベッドの上で自作のアインズ様抱き枕を抱き締めながら恍惚とした表情でそう呟く。……下半身を抱き枕に擦りつけるようにしながら。大きな金の瞳は、欲情に濡れている。立ち上る香気は、サキュバスという種族特有の物だ。
「アインズ様……ずっと、貴方様だけを愛しています……お姿が変わったとしても、私の愛は変わりません。どうか、アインズ様のお情けを私に……」
そう言いながらアルベドは白魚のような指を長いスカートのサイドにあるスリットにするり、滑り込ませる。その指は躊躇う様子を一切見せずに滑らかな太股の最奥に伸ばされる。ほんの僅かに湿り気を帯びたそこに指先が触れた瞬間、アルベドの息はより荒くなった。
「アインズ様……アインズさまぁっ……!!」
寝室に、アルベドの甘い声が響いた。