東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 10月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

なぜ改憲?いま必要なの? 「国民の生活を優先して考えて」

自民党の改憲案国会提出に反対の声を上げる参加者ら=24日午後、東京・永田町で

写真

 二十四日に召集された臨時国会の所信表明演説で、安倍晋三首相は憲法審査会を開き、改憲に向けた議論を進めたい意向を示した。各社の世論調査をみても、改憲議論を優先すべきと考える国民は多くはない。平成の終わりに「新しい国づくり」を強調する演説を首都圏の人々はどう聞いたのか。 (大平樹、神野光伸、山口登史、萩原誠)

 「また首相がやりたい放題やるのではないか」

 安倍首相の所信表明演説をテレビ中継で見ていた川崎市宮前区の自営業林佐登子さん(44)は、こんな不安を口にした。反対意見の多い重要法案も次々に成立させてきた国会運営には不信感がいっぱいだ。

 日比谷公園(東京都千代田区)を散歩していた豊島区の会社員寺島伸一さん(36)は「日本の平和を守ってきたのは憲法だと思う。改憲は拙速ではないか」。出版社勤務の女性(24)=杉並区=は「なぜ急いで進めようとしているのか理解に苦しむ」と首をかしげる。

 宇都宮市の元小学校教員、福田孝志さん(65)も「改憲議論は急務ではない。国民の生活について優先的に議論してほしい」と望む。年金生活者として「来年の消費税増税で生活は厳しくなる。退職金を取り崩す人も出てくるだろう」と暮らしの先行きを心配した。

 千葉市花見川区の会社役員の永田孝一さん(67)は、改憲には賛成というが「自衛隊のあり方を深く論議しないまま、自衛隊の明記で存在を認めさせるだけの改憲なんて不要だ。目先のごまかしにすぎず、安倍首相の実績作りにしか見えない。数の力で強引に進める国会運営は言語道断。もっと議論を深める努力をしてほしい」と注文した。

 第九次横田基地公害訴訟原告団長の福本道夫さん(69)=東京都昭島市=も「民主主義国家なら、いかに少数意見を大事にするかを考えるべきだが、安倍政権はこれまでも最終的に人数で押し切ってきた」と警戒する。横田には米軍に加え、航空自衛隊の基地もあり、「現状でも、入間基地の自衛隊機や大型ヘリが(飛来して)住宅地の上を旋回したり低空飛行したりする。憲法に自衛隊を明記したら、さらに何でもやっていい状態にならないか」と懸念を示した。

◆「九条守れ」声一つ 国会前1200人が抗議集会

 国会前の路上では開会に先立ち正午から、憲法改正に反対する野党四党と無所属の国会議員や一般市民ら約千二百人(主催者発表)が集会を開き、「改憲案の提出反対」「九条守れ」などと声を上げた。

 「今の政治はひどすぎる。いてもたってもいられなくて来た」と集会に参加したのは東京都足立区の主婦鎌田由利子さん(67)だ。

 亡き父は十九歳のとき、茨城県内の学校で戦争に反対する新聞を作ったとして治安維持法で逮捕されたという。しばらくして釈放されたと聞いたが「戦争に突き進んでいく中で国賊とみられたんだと思う。戦争をしやすくする、憲法九条を壊す改憲は絶対に止めないと」と語気を強めた。

 東京都武蔵村山市の看護師早川恵子さん(74)は「衰退が止まらない地方を何とかするとか、改憲より優先して取り組むべき課題はあるのではないか」と改憲にこだわる首相の姿勢に首をかしげた。 (井上靖史)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】