ペロロンチーノの災難 original end~モモンガによろしく~ 作:善太夫
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アインズはシャルティア、アウラと共にフロストドラゴンのヘジンマールの背に乗って魔導王国に帰還した。
ゲートを使えば直ぐに戻れたのだが、敢えてドラゴンで戻ったのにはいくつかの理由があった。
ヘジンマールらフロストドラゴン達には今後魔導王国の宣伝を兼ねて空輸など運輸関係の業務に従事してもらう為、今後の事についての説明と、あからさまに怯え続けている母親ドラゴン達に魔導王国の方針を理解させるなど様々な必要事があったのだ。
決してエ・ランテルに戻るのを遅らせて、帝国の属国化についての法案作成に参加せずに済むように、などとは全く考えていない。
ヘジンマールはアインズの指示で魔導王の館の近くの広場に降り立つ。
すでにアルベドの手回しだろうか、王の帰還を出迎える為に多くの人間が出迎えていた。
彼らはみな、初めて見る伝説のドラゴンに驚嘆し、かつ、魔導王の威光におののくのだった。
アインズはダミーのスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを片手に持ち、群集の前に降り立った。
やがて群集の熱狂はピークに達した。
※ ※ ※
ペロロンチーノは一人、魔導王の隙を見つけるべく館を張り込み続けていた。
キーノは薄情にもあれから直ぐに王都に帰っていった。
鬼リーダーがうるさい、などと言っていたが、モモンが当分戻らないという話に落胆した様子を見れば、モモンがエ・ランテルまで来た目的にまず、間違いない。
まあ、いい。
これはアインズ・ウール・ゴウンの最後のギルドメンバーである俺が一人で果たすべき仕事なのだから。
―ギルド武器を破壊し、拠点NPC達を解放する―
簡単にいうが不可能かも知れない。
ユグドラシル時代にギルド武器は厳重に保管されていた為、破壊するにはナザリック地下大墳墓のダンジョンそのものを攻略しなくてはならなかった。
故に不可能。
万が一魔導王が持ち歩いてくれるなどという有り得ない幸運が無い限り、現在の非力なペロロンチーノにはまず不可能だろう。
―が、しかし―
今まで数々の災難を乗り越えてきた自身の強運には根拠の無い自信がある。
きっとチャンスがまわってくる。
きっと…
いつものように館を観察していると、広場に大勢の人間が集まっていた。
何でも魔導王がドラゴンのデモンストレーションをするのだという。
まさに好機、これを逃したら後がない。
ペロロンチーノは慎重に、チャンスを窺うのだった。
※ ※ ※
シャルティアは油断なく、アインズの周囲を見渡していた。
ドワーフ国へ行く前にアインズの身を守る事がシャルティアに任務として与えられていた。
と、何か懐かしい、恋しいような感覚がいきなり生じた。
シャルティアが戸惑っていたわずかな間に事件は起きた。
『スクロール!砕け散れ!
『な!?』
アインズが手にしたスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが破壊される。
『ちっ!!よくもアインズ様にっ!!』
とっさに武装したシャルティアのスポイトランスが襲撃者を壁に叩きつけた。
『………え?何故?』
シャルティアは次の瞬間、襲撃者の正体を認識した。
姿形が違っていてもシャルティアにはわかった。
…少し遅すぎてしまったが…
『何故?…どういう事?……ペロロンチーノ様ぁああ!』
シャルティアがペロロンチーノを抱き上げると既に虫の息だった。
『
シャルティアはペロロンチーノを助けようとしたつもりだったのだと思う。
決してそのつもりではなかっただろうが、ペロロンチーノは死んだ。
シャルティアの腕の中で。
……シャルティア…お前は貧乳であるべきだった……
真っ暗な闇に染まりながら、ペロロンチーノは思った。
そして、満足そうに小さく笑った。
FIN
DMMO‐RPG YGDORASIL
リトライしますか YES NO
ペロロンチーノは知った。
そうか…まだ、ユグドラシルの世界だったのか…
※ ※ ※
ペロロンチーノは目を覚ました。
時計を見ると時刻は00:15。
ユグドラシルのサービス終了からたった15分しか経っていなかった。
もし、あのままリトライしていたらまだあの世界を続けていたのだろうか。
様々な想いが一気に押し寄せてきて、ペロロンチーノは一人、むせび泣いた。