ペロロンチーノの災難 original end~モモンガによろしく~ 作:善太夫
<< 前の話 次の話 >>
ペロロンチーノの目の前にいたのはまさしくギルド、アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスター、モモンガその人だった。
アインズは驚いたようにペロロンチーノをじっと見つめる。
しばらく無言で二人は見つめあった。
やがて、ペロロンチーノは本能的な違和感にとらわれていた。
本能が告げる、何かが違う、と。
『…モモンガさん!…??』
アインズはしばし無言だった。
数分間の沈黙の後、意を決したように口を開いた。
『………至高の方、ペロロンチーノ様…確かに至高の方のオーラを感じる……』
『???』
アインズの反応がおかしい。
これではまるで…
これではまるで………
『……………』
パンドラズ・アクターは動揺していた。
アインズはドワーフ国に向かう前にいくつか細かく指示を出していた。
その中でも“アインズの偽物であるとバレないように”というものがあった。
しかしながらどうもいきなりボロを出してしまったような気がする。
とりあえずバレていないという事にしておこう、と現実逃避してみたが、ダメだった。
せめてこれ以上ボロを出さないようにしなくては。
急に口をつぐんでしまったアインズの次の言葉を待ち続けたが、二人の間にただただ静寂が続くばかりだった。
ペロロンチーノは目を閉じた。
『………ひとつ……答えてくれ……』
アインズは不思議そうに人差し指を眉間につけてペロロンチーノの次の言葉を待った。
『………モモンガさんは………モモンガさんは………もういない……のか?…』
ペロロンチーノの言葉は微かに震えていた。
その問いを受けてアインズ―パンドラズ・アクターは困った。
かつてモモンガと名乗った存在は、現在アインズ・ウール・ゴウンと名前を変えた。
すると現在、モモンガという存在はどうなる?
存在しない。
存在するのだが存在しない。
パンドラズ・アクターの思考は混乱した。
『モモンガという存在は………もはや存在しない……』
ペロロンチーノはがっくりと肩を落とし、アインズに踵を返すと出ていった。
アインズはどう言葉をかけてよいのかわからず、呆然と立ち尽くしていた。
悩むアインズ―パンドラズ・アクターの脳裏に天啓のごとく閃いた言葉があった。
“父を超えてみせよ”
かつてパンドラズ・アクターにアインズが贈った言葉だ。
とっさにパンドラズ・アクターは本来の姿に戻り、叫んだ。
『待って下さい!ペロロンチーノ様ぁ!!』
時すでに遅し、ペロロンチーノは既に立ち去った後だった。
※ ※ ※
部屋を出たペロロンチーノは歩きながら考え込んでいた。
……モモンガさんはいない
あの魔導王アインズはモモンガの姿をした偽物。
おそらくはモモンガが作ったパンドラズ・アクターだろう。
モモンガは最初からこの世界に来ていないか、もしくは存在しなくなったという事なのだろう。
※ ※ ※
ペロロンチーノが去った後のパンドラズ・アクターの動揺は一層激しくなっていた。
主人のアインズはドワーフ国に出かけている。
アルベドは王国、デミウルゴスは聖王国にそれぞれ出かけて不在だ。
よりにもよって…こんな時に…
日頃、アインズから至高の方々の探索は重大事と聞き及んでいただけに、彼の混乱は尋常ではなかった。
パンドラズ・アクターはアインズにメッセージを飛ばした。
『…ん?パンドラズ・アクターか。何があった?』
『これは我が創造主たるアインズ様。私の忠誠は全て捧げ…』
『挨拶はよい。さっさと用件を話せ。』
『それが…ぺ、ぺ…いや、何でも無いのです。申し訳御座いません。』
パンドラズ・アクターはアインズにペロロンチーノの事を伝えられなかった。
……そういえば…至高の方々の情報はアインズ様より先に教えるようにと言われていたな…
パンドラズ・アクターは王国にいる人物にメッセージを発動させた。
※ ※ ※
魔導王の館を出たペロロンチーノは近くの館の様子を窺う怪しい人物をみつけた。
小柄でフード付きのロープを着ていて魔法の杖を持っているあたりはふつうのマジックキャスターだが、異様なのは顔を隠している仮面だ。
素知らぬふりで通り過ぎたペロロンチーノを仮面の少女が呼び止めた。
『ペロペロじゃないか?』
少女が仮面を外すと、そこには見知った顔があった。