なんかここ数日「一部アニソンが大手ストリーミングにない問題」が話題になってるみたいで、「アニソンの配信事情をまとめてくれ」ってツイートもあったけど、今年の頭に既にいいまとめ記事があるのを意外とみんな知らないのか? と思った。自分でdigって調べるのもいいけどまずは先行研究をあたりましょう。
で、アニソンは大手ストリーミングに配信すべきか? という話なんだけど、今後アニソンを音楽産業のなかでどのように位置づけるか、がはっきりしないとどうしようもない。あくまでアニソンはコンテンツに付随するノベルティであって、チャートに乗るとか音楽単体での評価は目指さないと割り切るならばストリーミングなしでもいいかもしれない。一方で、アニソンもやはりポップミュージックであって、広くアニメやソシャゲにあまり触れない層にも聴いて欲しいと思うならば、ゆくゆくは大手ストリーミングに配信せざるをえないはず。かつ、音楽からコンテンツに入る人も少なからずいるだろうことも期待できる。
フィジカルの売り上げだけで見るとアニソンやゲームのサントラなんかは健闘しているように見えるかもしれないけれど、いまやフィジカルの音源を買うのはよほどの音楽好きか、それ以外に購入に至るなんらかのモチベーション――コンテンツそのもののファンである、とか――があるか、どちらかに限られる。で、ここが重要なのだが、音楽好きであったり相応のモチベーションありきでフィジカルのCDに金を落とすような人は、おそらくストリーミングで聴けようが買うのだ。そうなってくると、「アニソンはあくまでノベルティ」派の根拠も揺らいでくるだろう。
その最良の例がヒプノシスマイクだろう。ヒプマイは大手ストリーミングサービスで全音源聴けるし、なんなら主要なアンセム曲やメインのドラマパートはYouTubeにアップロードされてもいる。「Amazonプライムミュージックでぜんぶ聴ける」というのが、数々のおたくをヒプマイの沼に叩き落とした一因であり、悪魔の口説き文句でもあった。結果として、信じられないほどのスピードで急成長した2018年の覇権コンテンツとなった。音源先行、しかもストリーミングも最初から解禁、にもかかわらずCDは売れる(フィジカルで買わないとバトルに「参加」できないのでね)し、ライブは即完売、コラボカフェやグッズも人気で、コミカライズやゲーム化が次々と発表されるに至った。
理由はどうあれ、アーティストの信念として、ストリーミングには解禁しないという判断はありうる。けれども、あくまでアニメやソシャゲといった総合的なコンテンツのマーケティングを考えると、むしろストリーミングは新しいユーザーにリーチする手段でもあるのだから、もっと柔軟に判断できるようにしたほうがいいだろう。ANiUTaのようにジャンル特化型ストリーミングを業界が寄り集まってつくる、というのはあまりいい傾向でないのは確かだ。
アニソンのように確かなファンがつきやすいジャンルであれば、もっと「お金を落としてくれるファン」を信頼する立場をとってもいいんじゃないかと思う。ストリーミングでは「お金を落としてくれるファン」が逃げてしまう、という不安もあるのかもしれないが、かといってそうしたファンの囲い込みばかりをしていると、ゆるやかに、しかし確かに変化している音楽の楽しみ方の変化に乗り遅れてしまわないか。かつ、こうした変化は、音楽に限らないコンテンツ産業一般の変化の一例であって、「アニメ/ゲームだから関係ない」とたかをくくって良いものでもない。むしろ、ヒプマイの例のように、新しいメディアミックスのかたちをつくりだすための場として積極的に活用する方向に舵を切るべきなのかも。
なにより、アニソンが誇る豊かな音楽性や、コンテンツと紐付いていることの強みは、音楽産業全体から見ても魅力的だと思う。変化はいちユーザーが思うほどには容易ではないだろうけれど、ジリ貧の苦し紛れの変化などではなくあくまで前向きに、ストリーミングの可能性を信じた変化がもっと進むといいなぁ。
追記:っつーか、これを言うのを忘れてた。Spotifyは迅速にジャンル別のリコメンドに「アニメ」を加えるように。Apple Musicはちゃんとそのへんフォローしてんぞ!