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【社説】

医学部入試不正 受験生を泣かせるな

 医学部の入試不正疑惑が広がる。文部科学省の調査で、複数の大学で女性や浪人生が差別された疑いのある事例が確認された。受験生の不安をぬぐえるよう、早急にすべてを明らかにするべきだ。

 同省は二十三日、浪人生や女性が面接で不利に扱われた事例や、逆に同窓生の子どもは合格圏外でも合格したとみられる事例を中間報告として公表した。全校の調査が終わっていないことなどを理由に大学名を明らかにしていない。

 調査は、東京医大で入試不正が発覚したため行われた。過去六年間の入試で男子の合格率の方が女子より高かった大学は八十一校中六十三校と78%に上った。最初は各校とも不正を認めなかったが、同省の担当者が大学を訪れて資料を調べるなどして、複数校で得点操作などの疑いが浮かんだ。

 同省は、疑惑について大学が自ら事実を明らかにし、受験生の救済に当たるよう求めている。合格率の男女差が一・六七倍で最大だった順天堂大は第三者委員会を設置し、十一月中に見解を公表するとしている。

 出願シーズンは目前だ。本来なら今春の入試で受かっていたはずなのに、大学側の不公正な取り扱いで不合格となり勉強している浪人生もいるだろう。大学は一刻も早く事実を隠さずに示し、救済に入る責任がある。受験生の人生を考えれば、文科省も一定期間のうちに対処しない大学については、具体名の公表に踏み切るべきではないか。

 合格率の男女差については不明な部分も多い。男女差が二番目に大きかった昭和大は浪人への不利な取り扱いは認めたが、女性差別は否定した。中間報告では、公正さを確保するため面接に女性教員を入れて男女バランスに配慮している大学の取り組みなどを紹介している。ただ大学の女性教員の比率は全学部を通じてまだ二割程度だ。大学自体の多様性を高めることも、ゆがんだ入試を許容しない風土を育むことにつながるのではないか。

 今回、不正が明らかになったのは合格率という数字の力が大きい。来年以降も継続して、各大学は男女別の合格率を公表してはどうか。他の学部についても受験生は知りたいだろう。二〇二〇年度からは大学入学共通テストの導入など入試改革も始まる。入試への信頼が揺らげば、新制度への滑らかな移行は望めない。公正の土台を整えることが急務だ。

 

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