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愛知猛獣画廊壁画を初展示 名古屋市美術館
猛獣がいなかった戦後の東山動物園(名古屋市千種区)で、数年間だけ飾られた三枚組の油彩画「猛獣画廊壁画」が、名古屋市美術館(同市中区栄)の企画展「ザ・ベスト・セレクション」で展示されている。一九九七年の収蔵以来、初となる一般公開。未修復で画面はくすんでいるが、往年の迫力そのままに、所狭しと描かれた動物たちが楽しめる。 東山動物園は、戦時中に危険と判断された猛獣が殺され、終戦からしばらくの間は、飼育する動物が少なかった。生きた姿が見られない代わりに、来場者に絵で楽しんでもらおうと、一九四八年に中京新聞(現在は廃刊)が壁画の制作を提唱した。 壁画はいずれも縦一・四メートル、横五・四メートル。作者は愛知県文化会館美術館(現県美術館)の初代館長を務めた太田三郎(一八八四~一九六九年)、水谷清(一九〇二~七七年)、宮本三郎(一九〇五~七四年)の画家三人。それぞれが一枚ずつ手掛けた。 シロクマやペンギンなど、北極と南極の動物をほのぼのと描いたのは太田の作。水谷が手掛けた密林には、ヒョウ、オウム、カメレオンらが潜む。宮本は的確なデッサンでアフリカゾウやシマウマの群を写実的に表現した。
三作は、四八年十一月から園内で公開。来場客を楽しませたが、飼育頭数が戻る中、数年で撤去されたとみられる。その後は、名古屋市内にあった名古屋観光会館を経て、九七年に市美術館に寄贈された。 同館によると、当時から絵には穴があり、汚れや変色、絵の具のはがれも著しい。修復には約七百万円かかる見込みで、予算のめどは立っていない。名古屋の歴史を物語る作品として、開館三十周年記念の本展に出品した。修復が必要な作品の存在を伝える狙いもあるという。 観賞した名古屋市の会社員高嶺彰さん(65)は「見る人を元気づけようという心意気が伝わるようだ」と絵に見入っていた。 保崎裕徳学芸係長は「未修復で心苦しいが貴重な絵。動物園での展示状況や期間など不明な点が多く、当時を知る人がいれば教えてほしい」と呼び掛けた。 展示は十一月二十五日まで。月曜休館。 (谷口大河) 今、あなたにオススメ Recommended by
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